前編~大好き?な彼との出会い~
※メタ要素を含みますのでご注意ください。
完璧美少女、月島さん~実は性格最悪!?~
をご覧いただきありがとうございました。
【桜子編】は本編で語られなかったシーンなどを月島 桜子メインで描くストーリーです。
全三話ですので、よろしくお願いいたします。
1.始まり
私は月島 桜子。
自分で言うのもなんだが、才色兼備の完璧美少女だ。
高校二年生で、生徒会長を務めている私は皆の憧れの的であり、いざ学校へ登校すれば、生徒だけでなく先生方も狂喜乱舞のお祭り騒ぎになる。
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話は変わるが、そんな私はモテまくる。
下駄箱には毎日のようにラブレター、自席にもラブレター、廊下にある私のロッカーにもラブレター、生徒会長室の前にもラブレター……正直ちょっと怖い。
最初は中身も確認していたが、初対面なのに『付き合ってください!』だの、対して仲良くないのに『お前の事が~』なんて書かれている事に苛立ちを覚えて以降、中身は見なくなった。
なぜ、彼らは仲良くもない相手に告白し、それが成功するだなんて思えるのか?
告白とは、80~90%相手から自分に向けての好意があるのを感じ取った上で、それを確認するために行われるもので、初対面に近い人から告白されても迷惑以外の何物でもない、と個人的には考えている。
こんな時、断る時は『友達から』なんて言うのがセオリーだが、そこから仲良くなって付き合う人などいるのか?自然消滅して終わりだ。
そしてラブレターに書いてある"お前"呼び、これは腹が立つ。
こう書くやつは大抵ナルシストか勘違い野郎。
絶対、いや、99%ないと思うが、私がもしラブレターを書くなら内容は簡潔に、そして相手の印象に残るようなラブレターにするだろう。
こんな事があり、ラブレターの中身は確認せず、ゴミ箱に捨てるか焼却処分していた。
◇
そんなある日の昼休み。
最近の趣味である読書を屋外で行っていると、時折強風が吹いて、私の自慢である長くて美しく、よく手入れされている髪と本のページが勢いよく捲られる。
なぜこんな環境で本を読むのか?
それは”なんかバカっぽくて好き”だからである。
それに美少女が髪をなびかせ読書──。
この一文でそそられるものがあるだろ?だから仕方なくやっているところもあるのだ。
そんな私の愛読書は【文字だけでわかる!プロレス技大全集!】である。
プロレス自体はあまり見ないが、技は好きなので、いつか誰かに遠慮なくプロレス技を決めてみたい……チキンウィング・アームロックとか。
色々考えながら読書をしていると、後に女装した男に惚れる奇人が私に声をかけてきて、人気のない所でピンクのラブレターを渡してきた。
(またラブレターかよ!しかもこいつ誰だ?見た感じ弱そうだから……アダ名は"ザコ"だな!おいザコ、なんかむしゃくしゃするから、このラブレター読まずにこの場で破り捨ててやる!アヒャヒャヒャヒャ……)
なんて、連載初期にあるキャラ設定が固まっていない時に『このキャラはこんな事しないだろ!』みたいな行動を私は実行させられる。内心ノリノリなのだが……。
ザコがどこかへ消えた後、罵詈雑言を繰り返しながらラブレターを破り捨ててやった。スッキリした。
スッキリしたし教室に戻ろうとした時、建物の影からこちらを覗く男子生徒がいた。私の行動を全て目撃していたのである。
こいつが後に、私が大大大だーい好き!になってしまう彼氏、"鼈 良雄"との出会いである──。
2.好き?
ラブレターを粉微塵にした場面を見られた私。
そして目撃した奴に"スッポン"と読者ウケも良かったアダ名を命名し、学級新聞のアンケートで一位になるよう食事を献上させたり、部活対抗リレーに協力させたり、時には野球を一緒に見に行ってやったり……
その過程で、後に変態……まぁ、この時も結構な変態だったが、一年の同じ生徒会に属する水谷 ミキがいじめを受けていたので、その事件を私が華麗に解決した。
そしてその翌日から、誰かにつけられているような感覚を覚え、生徒会室の水谷の机には、いつ撮影したのかわからない私の写真が並べられるようになる。
ついには本人が生徒会長室に突入、土下座して「私を是非、下僕か奴隷にしてください!」なんて叫ぶから、正直こっちが怖くて叫びたくなった。
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こうして奴隷二人、熱血野郎で後のリア充、そして就職活動で忙しく、あまり顔を出してはいない三年生の小鳥遊先輩が生徒会のメンバーになり、正直変人ばかりで頭を抱えた。
この時は三年生の小鳥遊先輩が一番まともだと考えていたが、ある意味一番まともでなかったような気が……
そんなこんなありながらも、”スッポン"と過ごす高校生活は意外にも楽しかった。
本来の私を隠さず話せるし、何よりコイツはノリも良くて気も利く。
外見はタイプでは無いが、友人として傍に置いてやろう。なんてこの時は思っていたが、ある事件が私の心の"色"を変えた。
それは”スッポン"が転校するかもしれない、と私に相談してきた時のことだ。
あいつはウジウジ、ウジウジと話すものだから、イラっと来て強めの言葉で奴を突き放すと、あいつは特に何も言い返さず帰宅していった。
生徒会長室には沈黙が訪れ、残っていた業務に手を付けている最中、また私の傍から人がいなくなってしまうのか、という孤独感が少しだけあった。
業務を終えて帰路についている最中も、考えるのは”あいつ”の事ばかり。
私の心模様を反映したかのように、その日は雨が降っており、バッグに入れていた折りたたみ傘を溜息交じりに広げたのを思い出す。
そして通勤に利用している駅に到着した時、傘もささず、ずぶ濡れになっている彼がそこにはいた。
(えっ、なんで傘もささないでこんなところにいるの!?なんか怖いし無視しようかな……でも、チラッと目が合ったし……仕方ない、声かけてやるか)
内心こんな事を思いながらも、仏のように優しい心を持つ私は彼に声をかけ、自宅まで連れていってやったのだ。
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私の過去は割愛。
彼は私の過去を知っても、引くどころか歩み寄ってくれたのだ。本当に嬉しくて、内心抱きしめたくなるほどであった。
そしてここら辺からであろう、彼を本格的に”好き”になったのは……
3.好き!
それからもいろいろあったが、私は変わってしまった。
暇さえあれば良雄の事を考えるようになってしまったのだ。
身支度をしている時も、登校中も、授業中も、彼と共に行動している最中も……
何十年か前に”脳内メーカー”なる、自分の名前を入力すると、脳内が何の漢字で満たされているかを表すサイトがあったのだが、おそらく当時の私が自分の名前をそのサイトに入力すれば、まず間違いなく7割くらいは”良雄”の文字で満たされていたと思う。
あと3割は”暴”と”殺”か。
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そして、これを思い出しながら書いている私の脳内は、まず間違いなく”良雄”と”好”で満たされている。
それくらい彼が好きで好きでたまらないのだ。
(中編へ続く)




