表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/39

第28話 文化祭編1 ミスコン開催!頂きを目指す者達へ……

【去年の文化祭(第14話)】

鴻巣第一高校の文化祭は2部制になっている。


1部は各クラスの出し物で、各々が考えたゲームや展示などを行う。


2部は体育館に全校生徒が集まり、部活の発表やミスコン・ミスターコン・女装コンを開催。


去年のミスコンは生徒会メンバーである鷲尾 透の彼女・木下 瑞希が優勝、ミスターコンはイケメンながらも月島 桜子にフラれたポイ捨て男・鳳が、女装コンは圧倒的得票数を獲得した生徒会3年の小鳥遊 悠斗が優勝した。



そして今年の文化祭はミスターコンが盛り上がらなかったため中止となり、ミスコンと女装コンの2つだけの開催となる。


そして今年は去年出禁だった月島 桜子がミスコンに出場する事に。

そして女装コンには……



全3話、文化祭編 お楽しみください。

 文化祭───それは青春であり、卒業する者達にとっては最後に輝ける場所……その文化祭で行われるミスコンに生徒会の"3人の女神"が降臨する。



 勝者は"独り"だけ─────



 ◇


 文化祭を控えたある日のこと。


 生徒会室でいつものように鷲尾君と業務を行っているが、女性陣の姿がない。


「みんなどこ行ったのかな?」


「あれ先輩聞いてないんスか?今日ミスコンの参加する人達が体育館に集められてるんスよ」


 ミスコン……去年は鷲尾君の彼女が優勝したんだっけ。

 今年は誰になるのか……その時は誰になってもいいなんて呑気な考えをしていた。



 しばらくして生徒会室の扉が開かれると、女性陣が戻ってきたのだが、3人とも眉間に皺を寄せ、どいつもこいつも"ミスコン"に相応しくない表情だ。


「みんな何かあったの?」


 入室した後、しばらく立ち尽くしていたので話しかけると一斉に彼女達に睨まれる……一体何があったのだろうか……



 ─────────────────────


 ──────────────


 ───────


「えー、それではミスコンに参加表明された方はここにいらっしゃる10名ですが、ここで5人にまで絞ろうかと思います」


 ミスコンの審査員の1人である保険の先生から予選を行う事を告げられると、体育館にいた彼女らはザワザワと騒ぎ始めたが私は違う。



 ───なぜなら予選など楽々突破できるから。



 ここに集まった者達は顔こそいいものの輝くものがない。強いて言うならサイドメニューみたいな奴ら……内心(フッ、勝ったな……)と見下していた。



 去年はこの私、月島 桜子は優勝してしまうため"出禁"だったが、何を血迷ったのか今年はそれを解除してミスコンを行うらしい。


 そんな事をすれば私が勝つ!……あいつが遅れてくるまではそう確信していた。



「すいません、クラスの用事で遅れました」


「ちーっす!優勝はこの火音様だー!」


 体育館の入口をガラガラッと音を立て入場してきた彼女達。それを見た瞬間、何か嫌な予感がした……


 水谷と火音……奴らは参加しないとばかり思っていたが直前になり気でも変わったのか、ミスコンに出るらしい。



 水谷はあの胸が武器、あれには私は勝てない……そして火音、クソ生意気だが無邪気な"可愛さ"という長所があり、私達とはジャンルが違う。



 彼女達は私の側に来るとジッと見つめて動かない、それに表情はどこか自信満々なようで、見ていて喧嘩を売られているようで腹が立ってきた……


「お二人共遅刻してきて偉そうですね。ここで予選が行われるようですけど生き残れますかね?」


「ふっ、会長……今年は私も参加します。理由は前と同じ"あなたの敗北する顔が久々生で見たくなったから"です。負けませんから……!」


「ふーんだ!火音ちゃんは可愛さ勝負だからアンタにも水谷先輩にも勝っちゃうんだから!今日から全員ライバル……"まな板"と"メガネ"に負けないもんねー!」



 ◇


 ……と、水谷さんは厳しい表情で語ってくれた。


 3人とも予選は突破したようで良かったのだが、皆お互いをライバル視しすぎて険悪なムードになってしまったようだ。



「……火音ちゃん、喉乾いたので何か買ってきて?」


「はぁ!?人パシリみたいに使わないでよ!いくら水谷先輩でも許しませんよ!行くならこの"貧乏バイト女"に行かせればいいでしょ!?」


「ふっ、三下共が黙って聞いてりゃ好き勝手ほざきやがって……てめぇらはこの会長様の奴隷だ!下僕だ!早く何か献上しろ!」


「あら怖いです会長……今のミスコンの審査員に報告しなきゃ……こんな横暴な人、ミスコンには向いてません!って」


「おうおうやってみろ水谷!テメーの盗撮もチクってやっからな!あとそこのガキ!テメーが家に仕込んでるヤツ……私知ってるからな?」


「なっ!?卑怯だ卑劣だ!お前なんて会長向いてない!推薦落ちろ"ツンデレ"!」



 ……醜い、彼女達は本当にミスコンに出るのだろうか……言い争っているところを無言で見ていた鷲尾君が一言「俺の彼女はまともで良かったっス……」と呟いたのは印象的であった。



 ◇


 みるみるうちに時間は経過し文化祭当日。


 前半のクラス毎に行っていた出し物は終わり、全校生徒がこの体育館に集合していた。



 僕達は去年と同じ生徒会専用の場所で座り、みんなの演技を見ては笑ったり、時には感心したりと鷲尾君と平和な時を過ごしていた。



 そしてミスコンが開催される番となり、ステージ横に審査員である保険の先生、2年生と1年生の女の子3人がおり、保険の先生がルールを説明してくれた。



 ルールはこれから1人づつ自己紹介と数分のアピールタイムを設け、最後に参加者の名前を呼んでいき、1番良かったと思う人のところで見ている我々が手を挙げる。


 1人1ポイントで審査員は1人10ポイント入るらしく、ここには用事で来れない人もおり、600人ほどの生徒がいるので満点だと630ポイントほどになる計算だ。



 そして華やかな音楽とタイトルコールが行われ、ここに【鴻巣第一高校ミスコン】が開始されるのであった。



 ─────────────────────


 ──────────────


 ───────


 ここは体育館の舞台裏、2人目のアピールタイムを行っている最中の事。


 私が鏡を見てティアラやウェディングドレスを模した衣装の微調整をしていると、鏡に水谷と火音が微かに見える。



 水谷はオフショルの赤いドレスで髪型もいつものおさげではなく、後ろでゆるくまとめた感じの髪型でメガネも外しコンタクトを入れているようだ。


 そして火音はピンクのドレスを着用し、髪型も水谷に寄せてはいるが、少し髪を垂らすような感じ。



 ……要は2人共似合ってて可愛い、という事だ。



 その2人が並んでパイプ椅子に座って俯いており、緊張しているのが一目でわかった。


「2人共、もしかして緊張してる?」


 声を掛けると火音が化粧を施した顔で首を無言で横に振る。水谷は手を太ももの上に置いており、その手は震えていた。



「ぷっ……2人共緊張しすぎ……笑っちゃう……」


 私が笑うと2人はこちらを不安そうな顔で見つめている。


「ここまでお互いライバルだって思ってやってきたでしょ?もうやめよう、私今日の2人を見て思ったの。あ、私負けちゃうかも。って……」


「会長……」


 しゃがんで彼女らに語りかけると2人同時に反応した。


 ─────────────────────


 ……昔からなんでも一番になりたかった。理由は母や他人に褒められたいから。


 でも母はいくら1位をとっても褒めてくれず、周りも1番をとって当たり前と決めつけ、私はその期待に答えなければならなかった。


 でも私の心の中に母はもういない……そして周りは私が高校をもう少しで卒業するのだから、ここで一番を取れなくても落胆はしないだろうし、そろそろ世代交代の時期だ。



 無論勝ちたくないわけではないが、この2人どちらかに負けても悔いはない……私の最高の"仲間"なのだから。


 ─────────────────────


「さぁ、みんなにアンタ達の可愛さ、十分に見せつけてくるのよ!そして私を負かしてみせなさい!」


 目を合わせそう言葉にすると、彼女達は真剣な表情で頷く……そこには覚悟が感じられて緊張はなくなっていた。



 ───さぁ、2人とも行ってらっしゃい!


 出番がラストである私は彼女達をステージ脇から見ていて、その時の心境は、巣立つ雛を見送る親鳥の心境に似ていた……



 ◇


 そして皆の発表が終了。

 水谷は歌を、火音はダンスを、そして私は英語での弁論……2人だけでなく、最初と2人目に登場した彼女達も素晴らしかった。



 ステージで横一列になり結果を待つ……みんな目を閉じ結果がすぐわからないようにしており、1人づつ参加者の名前が呼ばれ、生徒達は挙手し審査員が数えるのだが、挙手なので音もなく多いのか少ないのかわかりにくい……


 そして最後に審査員が名前が書かれたプレートを挙げると「おおー!」と皆どよめいていた。

 後は審査員代表の先生からコールされるだけ。



 誰が優勝したのか……己の心音と呼吸だけが聞こえる、そんな静寂が流れていた……



「えー集計終わりました。優勝は……262ポイント!2年生の水谷 ミキさんです!」


 派手な音楽と生徒達の声、どこから用意してきたのかわからない巨大なクラッカーが左右から鳴り、勝者を祝福する。


 水谷は状況を理解できず、周りをキョロキョロと見渡していた。



「水谷、お前だよお前」


 隣にいる私が小声でそう言うと、未だに信じられないというような表情でいるので、小声で「スマイルスマイル」と指示すると優しく微笑み、目にはうっすらと涙が見える。


 そして先生から賞状を渡され両手で受け取ると、拍手が鳴り、それはしばらくなり続けていた。



 ◇


「えー、未だに私がミスコンで優勝できた、なんて事が信じられません。私は特に取り柄もなく……月島会長に憧れるだけで、まさか会長を越えられるなんて……思ってもみなくて……会長……」


 涙を流し私の方を振り向いてきたので、小さく頷くと彼女も頷く。


「えー、すいません……今年で月島会長は卒業してしまいます。今回ミスコンに参加したのは会長が出るからであって、その理由はこの人を超えたい!と思ったからです……初めてそう思えたんです。今までは追いつく事ばかり考えていましたが、これからは追い抜いて月島会長以上の"会長"になるため!私は頑張ってきました!」



 横で見ていると、いつぞやいじめられていた奴と一緒とは思えない……強く、そして美しくなった彼女を見て涙があふれ、それは火音も一緒で嗚咽するほど号泣している。


「皆様今日は私に投票してくださりありがとうございました!皆様に相応しいような会長になれるよう、日々努力してまいりますのでよろしくお願いします!」



 深く一礼すると、また拍手と歓声が体育館へ鳴り響いた……



 ──────────────


 ───────


 熱い勝負は終わった……否!むしろこれからなのだ!


 私の隠し兵器が出る女装コン、そして優勝商品であるプロ野球観戦チケットをかけて……おめぇの出番だ、"田中"!

(文化祭編2へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ