第25話 最終章突入!そして会長の家にも突入!?~目の前に不審者がいます!!~
~ここまでのあらすじ~
鴻巣第一高校の二年生、生徒会長で容姿端麗な月島 桜子は、他人から貰ったラブレターを破くシーンを同じ高二の鼈 良雄に目撃される。
月島は良雄を利用し続けていたが、一緒に過ごしていく内に自らの過去を明かし、友達以上恋人未満の関係になる。
月島達は高三になり、同じ生徒会の上級生で女装が趣味の小鳥遊 悠斗が卒業する。
そして生徒会のメンバーは……
・裏表が激しい生徒会長で腹黒女、月島桜子(三年)
・努力だけは誰にも負けないモブ系男子、鼈 良雄(三年)
・月島の裏の顔を知っても惚れ続ける変態ストーカー、水谷 ミキ(二年)
・熱血漢で瑞希という同級生の彼女がいるリア充、鷲尾 透(二年)
・兄に惚れられていると勘違いするストーカーその2、鼈 火音(一年)
となった。
月島は過去と決別し、良雄は月島と同じ大学を目指す。また、他の者たちもそれぞれの未来へ向け歩み出すのであった……
完璧美少女、月島さん(最終章)
開幕です!
母との決別……明確にもう会わないと言ったわけではないが、あれで昔のトラウマから解放された気がした。
ふと部屋でそんな事を思い周りを見渡すと、部屋に貼ってあったポスターも子供の時貼った時のまま、飾ってあるインテリアもいつ買ったのか思い出せないほど昔の物だろう。
心機一転、ここは模様替えをしよう!と、あまり広くもない部屋の掃除を始める……が、
(あ、これ昔使ってたノート!何書いてたんだろう……うわっ、何この厨二全開の内容……授業はちゃんと書き写して……え!何このイタズラ書き!ちょっと面白いしこのオリキャラ可愛い!)
など、昔の記憶と戯れ全く片付けが進まない。
このままでは終わる頃には日付が変わりそうだ……現在19時だから21時までに片付けを終え、明日インテリアなどを見に行こうと決意し、片付けを再開。
(昔のアルバム!……うわぁ、私目つき悪っ!……あっ、これ綾菜さんだ。めっちゃ美人……いいなぁ、将来あんな素敵な女性に……)
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気が付けば20時、片付けは全くと言っていいほど進んでいない。
昔に決着をつけた記念に模様替えをしようと言うのに、"昔の記憶"を楽しんでどうするのだ……
一旦カバンの中でも片付けてから、大きい所を片付けようと登校用のバッグを整理していたら中から犬笛が出てきた。
懐かしい……これは確か水谷が私に奴隷にしてくれ!と土下座した時に渡された物だったか。
これを吹けばどこからでもすぐ駆けつけますって言われて試しに吹いたら、すぐ来て私も"吹いた"思い出がある……あ、ちょっと今のシャレ面白いかも、今度良雄に聞かせてみよう。
など考えて、何気なく犬笛を咥え思い切り吹いてみるが人間の耳には聞こえず。
これで来たら恐怖以外の何者でもない……
その時だった。
外から誰かの足音が猛烈にこちらへ迫ってくるのがわかる……そして、開けていた部屋の窓から腕をクロスして誰かが思い切り飛び込んできた!
そいつはスっと着地すると、こちらを見て一言「どうしました会長?」と言い放つ……この時、私の心の中は困惑と恐怖、そして震えが止まらず咄嗟に部屋の隅へ腰を抜かしながら退避し、頭を抱えうずくまって恐怖と戦っていた。
「怖い怖い怖い怖い……誰か助けて誰か助けて……」
「大丈夫ですか会長!何か怖いことや不審者でも居たんですか!?」
「わ、私の目の前に不審者がいます!!それも特殊な変態の!!」
不法侵入してきたラフな格好をした女性へ目を見開き必死に伝えるが、向こうはキョロキョロと左右を見て「会長を怖がらせる不審者め、どこだ!姿を表せ!!」と叫んでいたので、彼女を指さし一言「お前じゃい!!!」と彼女に負けないような大声で叫ぶ。
「へ……私がですか?会長、冗談はやめてくださいよー私が不審者なはず……」
「不審者だよ!大体普通の人は何かあっても窓から侵入してこないし、普段も盗撮なんてしないの!この変態メガネ!」
「そんな!?……褒めすぎですよ会長……」
「貶してんだよバーカ!!」
◇
そんなこんなで来てしまったものはしょうがない。
彼女と共に部屋の掃除を再開、意外にも水谷はテキパキと動いてくれて片付けはスムーズに進行した。
押し入れの中にある中身がわからないダンボール、ホコリを被った時計、そして隙を見て私の幼少期の写真を盗もうとする水谷……正月の大掃除レベルになってしまったが、部屋にはテーブルと勉強机、そしてベッドしかない程で、その他使用しない物はダンボールに詰めて押し入れにしまった。
「ふーっ、何とか終わったー……時間も21時ちょい過ぎ、まぁ予定通りかな?水谷、手伝ってくれてサンキューな」
額を手で拭いながら彼女へ感謝の言葉をかけると、メガネをクイッと上げ笑顔で「お気になさらずに」と返してくれて、変な所はある奴だが頼りになるなと少しは見直す。
「なぁ、小腹すいたからコンビニとか行ってなんか食わね?手伝ってくれたお礼に私が奢ってやるよ」
「あれ?会長、暗いところ平気なんですか?寝る時も電気つけっぱなしじゃ寝れないし、修学旅行の時もお化け屋敷入れなかったし、夜の浜辺だって……」
不安そうな顔をしている彼女へ胸を張り「ふーんだ、克服したんだよ!」と自慢げに言うと、拍手をして尊敬の眼差しを向けていた。
「……ところで、なんで修学旅行の時の事知ってるんだ?お前学年違うだろ」
「あなたの事なら何でも知っています。例えば会長室にある引き出しの中身やスリーサイズ、上から……」
「わー!わー!もういいからコンビニ行こう!!」
個人情報を暴露される前に慌てて静止し、こっそりと家を抜け出すのであった。
◇
夏休み中の外は肌を露出していても暑い程だ。歩いているだけでも汗が吹き出すほどに。
コンビニへは歩いて数分なのに、到着した頃にはアイス売り場へ直行する程で、ふたつに分けられるアイスを購入し水谷と外で分け合い、コンビニ前でアイスをチューチュー吸っていた。
「これ美味しいよね……んー!暑い夏にはやっぱりアイスですなー……」
「ふふっ会長、キャラ崩壊してますよ」
「お前しかいないんだから別いいだろ?」
こうして夜中にコンビニ前で"たむろ"しているとなんだか友達といるみたいで不思議な感覚がする……思えばこいつはいつでも私の傍にいて、何の文句も言わず居てくれる"かけがえのない"存在なんだな、と思うと急に切なくなる。
「水谷、お前進路はどうするつもりなんだ?」
離れ離れになりたくなくて聞いてしまった。
こいつが私と違う未来を見ているなら高校生活だけの付き合いで、これからは別の道へ……
「もちろん、会長と同じ大学へ行きますよ」
彼女は迷いなく、そしてハッキリとそう発言した。
「私はあなたがいなければ学校を中退していたと思います。私にとってあなた……"月島 桜子"とは全てであり、憧れの存在なんです。あなた以外を目指したり違う道など選択しません……大好きですから、月島会長の事」
その言葉を聞き、自然と涙が溢れ出してくる……最近涙もろくなったせいもあるが、裏の私を知ってもそう言ってくれるのが嬉しくてたまらなかったのだ。
「ぐすっ……水谷、お前って奴は……」
「美人が台無しですよ、泣いた会長も好きですけど笑顔の会長はもっと好きです。だから笑って、ね?」
目を閉じて満面の笑みをこちらに向けてくれると私も自然と笑顔になってしまう……こいつと一緒にいる生活も悪くない、そう思えて仕方なかった。
◇
それからしばらくして水谷が帰ると言うので私も立ち上がって解散しようとした時、水谷が"ある物"を拾ったと言っていた。
「なんだよ、その"ある物"って?」
「内緒です。偶然見つけたんですけどね、中身は開けて見てないんですが……そうですね、良雄さんが会長と同じ大学に行く事が決まったら会長へ渡します」
そう捨て台詞のように吐くと、水谷は闇の中へ消えて行ったので私も帰路に着く事に。
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色々あったが夜中にこっそり抜け出すのも悪くない……そんなどこかいけない事をした気持ちになり、玄関の扉を静かに開けておばあちゃんにバレないよう、こっそりと戻ろうとした……のだが……
「桜子、どこ行ってたの……?」
玄関を開けて目にしたのは、般若のような顔をしたおばあちゃんであった。
「お、おばあちゃん……これには深い訳が……」
「言い訳無用!!」
そうか、母もこの人の血を受け継いでいるわけだし、おばあちゃんも本当は怒ったら怖い人だったんだ……
私は玄関で烈火の如く怒鳴り散らしているおばあちゃんを見てそう思うのであった……




