第19話 生徒会みんなで初詣! ~からのラリアッート!~
「あけましておめでとう! からのラリアッート!」
時間の流れは早いもので、もう新年を迎え僕達は生徒会みんなで初詣をしよう!という事で、学校近くにある神社の前で待ち合わせしていたのだ。
そして予定より早く来るよう彼女から言われていたので、その時間に到着すると、紫の花柄が目を引く白の着物を着ており、髪型もいつものストレートではなく結っていて美人の他に形容する言葉が見当たらず、それを伝えようと彼女に不用意に近づいた瞬間、彼女からラリアットをもらい、僕は後ろに吹き飛ばされ尻もちをついた。
「ちょっと”桜子”、いきなりはないよもう……」
「油断してたお前が悪い……って!人前で”桜子”って呼ぶな! 二人きりの時だけ言う約束だったろ、もう……みんな来てその名前で言ったら次”DDT”な」
「ごめんごめん。話は変わるけどその着物、すごく似合ってるね」
「ありがとう”良雄”」
倒れている僕に手を差し伸べてくれたので、その手をつかみ立ち上がると、どこからかカシャカシャとシャッターを切る音が聞こえてきたので辺りを見渡すと、茂みの中からガサッという効果音と共に赤い防寒着を身にまとった水谷さんが姿を現し、桜子はそれに驚き僕にしがみついている。
「水谷お前いつからそこにいたんだ?」
「会長が『この着物姿、良雄褒めてくれるかな……』って言ったらへんからですね」
「!? そんなこと言ってない!捏造だ!」
必死に否定しカメラを奪おうと水谷さんを追い回していると、今度は鷲尾君と木下さんが同じような防寒具を身にまとって、仲良く手を繋ぎ現れると、桜子はピタッと追うことをやめ”偽り”の笑みを浮かべ彼らにあいさつをしていた。
「あけましておめでとうございます、今日は木下さんもご一緒なんですね」
「すいません、透がどうしても一緒にいたいっ言うもんで。迷惑でしたか?」
「いえ、全然。それにしてもお2人は仲良さそうで羨ましいですわ、オホホホ……」
「そうっスよ!俺達はこのまま結婚までする予定なんスから!」
鷲尾君の衝撃発言に皆驚愕し言葉を失い、木下さんの顔の色が神社の外の出店に並べられているリンゴ飴と同じくらい赤くなって黙っている。
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そして約束の時間になったが小鳥遊先輩が来ない。
携帯に連絡しても応答がなく心配していると、こちらに赤い着物に黒い帯をした女性が走ってきた。
よく見ると彼女は前に駄菓子屋であった"悠亜"さんだ。
「皆さんすいません、悠斗が急用で来れなくなってしまって……それで私に代わりに行けって言われたので来ちゃいました。よろしくね♪」
アイドルみたいな笑顔を見せてウインクしている所を見ると"MARS♪"そっくりに見えて一瞬心奪われてしまう……皆笑顔でいるのになぜ桜子だけは口を開けて放心状態になっているのかがわからない。
◇
ともかく皆集まったので神社の中に入ると、駅から少し遠く、規模もそれほど大きくない所なのかはわからないが、比較的空いており一安心できた。
「あれ、どっちから手洗うんだっけ?」
「左ですわ。右に持って左手に持ち替えて右手を、それで左手で口に持ってって左手を洗うのですよ。おわかり?」
桜子が僕にレクチャーしてくれているのはありがたいが、人前で話す喋り方が段々とおかしくなっているような気がする……最初の頃はもっと自然にできていたのに。
そんな事を彼女を見ながら考えていたら「きゃっ!足にかかっちゃったー……」と悠亜さんが水を足にかけてしまったそうだ。
自分で持っていたハンカチを出し着物をめくり足についた水を拭いており、その綺麗で艶めかしい生足に釘付けになっていると、誰かに脇腹をドスッという音と共につつかれ「ぐっ!」とうめき声と共に前かがみになってしまう。
まあこんな事する人は1人しかいないが……
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次はお守りやおみくじを預かる事になり各々好きな物を選んでいたが桜子は破魔矢をじっと見つめているので2人っきりになった時を見計らい声をかけた。
「さ……月島さん、破魔矢見てるけどどうしたの?」
「いや、あれお前に刺せないかと思ってな」
「罰当たりな……」
「それは置いといて、絵馬買って願い事書こうぜ。みんな集めてきてくれよ」
彼女の提案に乗り、皆を集めて絵馬を頂き願い事を書くことに。
鷲尾君と木下さんは【いつまでも幸せで居られますように】
水谷さんは【月島会長が幸せに長生きできますように】
悠亜さんは【隠し事がバレませんように】だった。
皆快く見せてくれたが桜子だけは見せてくれず、強引に見ようとしたら肘を腹にくらってしまい悶絶してその場にうずくまってしまい「どうしたの、大丈夫!?」と白々しく心配してきた桜子はしゃがみ小さな声で「ざまあみろ、バーカ」とにやにやしながら言っている。
◇
その後拝礼をして解散となり、桜子と共に帰路についていた時のことだ、彼女が急にしゃがむと足首らへんをさすっていた。
「桜子、どうしたの?」
「下駄を履いてきたんだが慣れなくて足捻ってしまって痛たんだよ……っ……いたぃ……」
確かに足首を見ると捻って赤くなっており、このままでは歩けなさそうなので、彼女の前にしゃがみ、おぶって家まで送ると提案すると「恥ずかしいからダメ!」と最初は抵抗していたが、無理するともっと痛める事を伝えると渋々僕に体を任せた。
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「ねぇ、重くない?」
「ちょっと重いかも」
「っ! てめぇデリカシーなさすぎ!」
おぶられながら彼女は頭をグーで優しく殴って抗議してきたので笑い混じりに「ごめんごめん」と謝罪すると殴るのをやめて手を前に回す。
「桜子、絵馬になんて書いたの?」
歩きながら質問すると少し沈黙した後に悪そうな笑い声を出し「新入生が入ったら新しい"奴隷"を見つける事」と言い放つが本当は違うだろう。
「てか良雄、お前はなんて書いたんだ?」
「ん? 僕は【健康でいられますように】だよ」
「普通だなー、私みたいに捻ったの書かなきゃ面白くないだろ」
「捻りすぎだよ!……で、本当はなんて書いたの?」
「……言わない」
「そう。それじゃ言うまで降ろさないから」
「うわっ、ずるい! 離せよこの! チッ、こうなったら……皆さーん、この人痴漢でーす! 助けてくださーい!」
お互い笑顔でそんな風にふざけ合いながら歩き、彼女を家に送り降ろす瞬間「ありがとう良雄……」と耳元で囁かれ、体温が高くなり心臓がバクバクなり始めた為、急いで別れの挨拶をし帰路に着いた。
◇
あのままいたら桜子に抱きついたりしそうだった……危なかったと思い返しながら、ふと彼女が何を書いたか気になり神社へ再度向かい、絵馬がぶら下がっている所を確認した。
達筆な彼女の文字らしき絵馬を発見し、内容を見ると【想い人と同じ大学に入れるように】と書いてあり、それを見て僕はこれからも勉強を頑張らねば!と決意し、再度お参りをしたのであった。




