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第18話(二期最終回) 学級委員長との再会!私と君の将来の夢~月とすっぽん~

 学校行事と二学期もあともう少しで終わりを迎える12月、自宅のベッドでのんびりしているとスマホの通知に知らない番号から着信が何件かあったので不安だったがかけ直す事にした。


「もしもし、どなたですか?」


「その可愛らしい声……番号あってて良かった。私小学生の時一緒だった海野(かいの) 綾菜(あやな)、覚えてる?」


「海野……委員長!?」


 びっくりして急に体を起こしたので腰に激痛が走り「ゔっ」と声が出てしまう。



「大丈夫? 桜子ちゃん」


「大丈夫です、びっくりしただけで……そういえばなんで番号知ってるんですか?」


「偶然だったんだけどSNSサイトに知り合いかもって出てくる事あるんだけど、それで桜子ちゃんのが表示されて番号も載ってたからそれで……」



 そういえばスマホを契約した時によくわからなかったのでSNSサイトに個人情報をのせてそのまま放置しっぱなしで、水谷から注意受けて消したのを思い出した。その載っている時に番号覚えてかけてきたのかと納得できた。


「それで今度両親と一緒に埼玉行くんだけど桜子ちゃんもそっちいるんだよね?良かったら久しぶりに会えないかと思って」


「是非! 楽しみにしてます! 宜しくお願いします!」


 力強く返事をして来週の休みの日に自宅近くの喫茶店で会う約束をした。




「久しぶり、相変わらず美人ね」


「いえ! 海野さんには負けます!」


 約束の日、グレーのニットにコートを羽織り、チェック柄のロングスカートと白のストレッチブーツで私は武装してきたのだが、彼女は黒のパンツとブラウスを合わせヒールを履いており凄く大人っぽく見えて素敵だった。



 しばらく店の前で話してから店内へ、落ち着いた内装でクラシックが流れており、ここは水谷がいいのではと勧めてくれた場所で、初めて来たのだがいい感じで後でお礼を言わなきゃと彼女に感謝していた。


 窓側の2人席に座りコーヒーと私はホットのココアを注文し乾杯する。


「相変わらず甘いもの好きなのね桜子ちゃん」


「糖分は頭を働かせるために重要って海野さんから教わったので……」


「ふふっ、緊張しちゃって可愛いわね……昔の呼び方でいいのよ?」


「そ、それじゃあ綾菜……呼び捨ては無理……綾菜さん?」


「あんまり変わってないじゃない、本当面白い子」



 ケラケラと笑う彼女を見ているといつもの調子になれない、この人は私の尊敬する人で失礼な事は出来ないし見せたくない。でもそんな思いが空回りして上手く出来ない……彼女は同い年なのに凄く大人っぽい。離れていた期間、少しは私も大人になったと思っていたが彼女と比べると全然だった。


「綾菜さんは今も東京に?」


「うん、今は高校も通って変わらずって感じかな。桜子ちゃんは?」


「私は今祖母の家で生活してて、高校では一応生徒会長してます」


「凄い! あの"荒くれ者"が生徒会長なんて!」


「それは昔の話ですよもう……」


 手を合わせ驚かれたが、小学生の時しか知らない人が見たら信じられないのであろう。自分でもまさかこんなまともになれるとは思ってもみなかったのだから。


───────


 綾菜さんは窓の外の景色を見ながら昔を思い出していた。


「あの時は桜子ちゃん手がつけられないくらい暴れてたよね」


「本当申し訳ないです。綾菜さんに色々助けてもらってたのに余計なお世話だ! とか言って反抗したり……その……なんで私なんかの事をかばったり更生させようと思ったんですか……?」


 そう質問すると綾菜さんは私の目をじっと見つめ「”目”……かな?」と答えてくれた。



「桜子ちゃんと初めて会った時、綺麗な目をしてる子だなって思ったわ。すごく綺麗でそして儚げな……宝石のような瞳。悪さをするのは環境のせい、誰かが付き添って良い道を示していけば必ず良くなるって信じてたから」


「……私……その……綾菜さんに憧れてました。最初はウザイとかしつこいとか思ってましたけど段々憧れてって……あなたみたいになろうと必死になって……」


「嬉しい、結果的に更生出来たんだから大成功ね。今のあなた凄く綺麗で素敵よ」


「……綾菜さんのおかけです……」



──────────────


───────


 それからしばらくして恋の話になり、綾菜さんは高校で知り合った人とお付き合いをしており、高校卒業後には結婚を前提に同居しようとしているそうだ。


「桜子ちゃんは好きな人いるの?」


「いないって言ったら嘘になります」


「そう、どんな人なの?」


「普段はこれといった特徴もなくてヤラシイ部分もあって女性にはすぐデレデレして、勉強だって最近まで全然で、運動もそこそこ良くはなったけどまだまだで……とにかく全然ダメなやつなんです!」


「ふふっ酷い言いようね……それでも気になるの?」


「……はい。一緒にいて楽しいし何より私の過去を聞いても引かず、むしろ歩み寄ってくれて凄い嬉しかったです。ずっと一緒にいたいと思うようになって、恋と言うよりは"親友"みたいなものですかね」


「……それは本心?」


 真剣な表情でこちらを見つめてくる。その顔はとても凛としていて嘘は通じそうにないのがわかって私は首を横に振り本心を語ることにした。



──────────────


───────


「今日は楽しかったわ。埼玉と東京だしそんな離れてないからまた時間できたら会いましょう」


「はい!綾菜さんもお元気で!」


 それからしばらく話して解散する事になり、気が付けば夕方になっていて、寄り道せずに帰ろうと思っていたら偶然にも奴の姿が見えたので声をかけた。


「よう、お前何してんだよ奇遇だな」


「あっ、月島さん。いや水谷さんからいい喫茶店あるから見てきたらって言われて。迷っちゃって着いたらこんな時間だからまた今度来ようって思ってたところ」


「そっか……んじゃ一緒に帰るか」


 なんと言う奇遇、彼と歩いて帰ることに。




 帰り道は河川敷を通れば近道になっていたのでそこを歩きながら今日あったことを話すと奴は「良かったね」と笑顔で返事して、修学旅行の時の話をしてきた。


「そういえばいつか話してたけど将来の夢ってなんだったの?」


「お前目標点取れなかったから内緒!……って言いたいけど頑張ってたからな、特別教えてやるけど笑うなよ?」


「うん、絶対笑わない」


「それじゃ言うけど……私、将来"お嫁さん"になりたい」


「可愛い夢だね」


「バカにしてるだろ絶対!」



 逃げる奴を追いかけ、捕まえた所で手を思いっきり握り制裁をくわえる。そのまま歩き出したが手を握ったまま歩いているのを忘れていた。


「お嫁さんになるにはまずは素敵な相手、それに見合う自分になるためいい所へ就職、そして家事とかも出来るように、子供が出来たらグレないように教育していく……私の夢はこんな感じ。特にこれがしたいとかじゃないんだがな……お前はどうなんだよ?」


「僕は一緒にいてて楽しいと思える人が出来たからその人の事近くで見ていきたい。どんな関係であれその人の相談とか乗れて幸せに出来ればいいと思うようになって……今だってその人と差を感じる事がある。"月とすっぽん"……それぐらいの差をね……」


「……そんな事ないと思うよ、君は凄い努力家で最初はダメだったけど今はその人と同じくらいになってると思う。自信持ってよ良雄君、君は凄い素敵な人だよ」


───────


 しばらく黙って歩いていたが綾菜さんが私の事を下の名前で呼んでいたのを思い出した。


 下の名前で呼ぶのは綾菜さんとおばあちゃんくらい……学校でも苗字や会長と呼ばれる事が多く特には気にしていなかったが、本当の気持ちを綾菜さんに伝えた今、彼には下の名前で呼んで欲しくなった。


「……良雄君、私の事"月島さん"って苗字で呼んでるけど……その……下の名前で呼んでいいよ……」


「えっ!?いいの?……あとで怒ったりしない?」


「しねーよもう!……だから呼んでよ"良雄"」


「……じゃ"桜子"さん……?」


「はい、なんでしょう……」


「前から思ってたんだけど可愛らしい名前だよね」


「ありがとう。私も良雄って名前いいと思ってた」


 気が付けば繋いだ手は指と指を絡める"恋人繋ぎ"をしていた。



 出来ればこのままずっといたい……夕焼けに彩られたこの日の事を私は一生忘れないであろう……


(二学期編[完])

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