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外伝2.秀才と貧民の買物

1000PV目前記念です。

 夏休みも終わりに近付いていたある土曜日、彼女からの"お呼び出し"があり駅前のショッピングモールに呼び出された。




 集合場所である1F入口前で携帯型扇風機を片手に黒いバッグを背負い待っていると突然横から歩いてきた人に扇風機をヒョイっと奪われる。


 まあこんな事する人は1人しかいないのだが確認のためその奪った人を見ると、他人の扇風機を我が物顔で使用する"暴君"がそこにはいた。



「うぃーっす、あぢーなー」


 暑さのせいなのか”裏の顔”であってもいつもはどこか品を感じる所作をしているのだが、今日は扇風機を顔に当てて白いロングのワンピースのスカート部分をパタパタと動かし風を中に入れている。


「暑いね、で、今日はなんの用? あと扇風機返して」


「明日従兄弟の誕生日なんだよ、んでそいつが私達とタメの男だからお前の方が何貰ったら嬉しいかわかりそうだから呼んだんだよ。あと"お前の物は私の物、私の物は私の物"だからこれはデー……買い物が終わるまで返さんからそのつもりで」


 ハンディ扇風機を自慢げに僕へ見せながら語っている。ショッピングモール内はいくらか涼しいからいいかと諦め僕達は中へ入る事にした。



──────────────


───────


 駅前のショッピングモールは3Fまであり、1階がスーパーとフードコート、2階は雑貨類と家電量販店、3階は服や本、それにゲームセンターがあり、近くにこのような複合施設がないため平日でもそこそこ混んでおり、今日も夏休みプラス休日と言う事でフードコートは満席で人も結構いる状態だった。



「なあ、お前なら何貰って嬉しいとか思うんだ?」


 エスカレーターで上に上がっている途中で隣にいる月島さんから質問されたが、僕が貰って嬉しい物と入る前から考えているのだが特にこれと言ってない。


しかしこれをそのまま伝えると横の人が「参考にならん」とか「使えん」とか言い出しそうなので、とりあえず最近発売され話題になっているゲームソフトの名前を出した。


「テレビゲームか、やった事ねーなー……どんなのか見てみるか」僕の意見が通り、2人で家電量販店へ。




 目的の場所へ到達しゲームソフト売り場へ向かう。先程名前をあげたソフトを見せると、凄く珍しそうに空のパッケージの表や裏など見続けていた。


「そんなに珍しい?」


「まあな、私の家ゲームはおろかテレビもHDMI繋げないタイプだし、テレビの上に赤べことか色んなの乗せてるし。それが普通だと思って他の奴の家行った時めっちゃビックリしたの覚えてるよ」


「それいつの時代の話なの……」



 彼女がそんな"家電原始人"だと思ってもみなかったので最新ゲームを体験出来る場所へ連れて行きプレイさせると凄く夢中になっており、周りの子供達からも注目されるくらいで、それを見ている僕も無邪気に遊ぶ彼女を見て吹き出しそうになった。


「いや~意外と楽しいなこれ、とりあえずこれにするか?」


「まだ時間あるし他も見ていかない?……あ、そうそう次雑貨屋さん見に行こうと思うんだけど先行っててくれない?ちょっと買うものあって」


「あぁわかった、早く来ないと1階の理髪店で坊主にしてもらうよう注文するからな」


 イタズラっ子みたいに笑いながら彼女は次の目的地へ向かっていった。




 目的の物を買って雑貨屋の前で待つ彼女へ声を掛けると「遅い!」と軽く腹部を小突かれた。軽く謝罪していると何を買ったのか聞かれたが「特に何も」とはぐらかし店内へ。


 中は華やかでいい香りもするし涼しい。いつの間にかハンディ扇風機の出番は終わっており、それは彼女のトートバッグの中へしまわれていた。



「んー……どっちかって言うと男性よりも女性向けのラインナップだよなここって。お前はここのなら何貰って嬉しいんだ?」


「そうだなー、僕は"誰かさん"に部屋殺風景って言われたから何かオシャレなインテリアかな?」


「言うようになったなテメー! ……って"誰かさん"と違って、従兄弟の家見たことあるけど結構趣味の物とか多かったしなー。しゃーない、お前あれとかいいんじゃね?」



 彼女は遠くの方を指さすので、その方向を見ると小さい観葉植物が置かれていた。そこへ移動し色々見ているとこの花言葉は何とか、これは何と解説してくれて流石だなと感心していた。


「"ガジュマル"なんてどうだ、まあ色合いはないが育てやすいみたいだしな」


「月島さんが言うなら育ててみようかな? ……あ、これ昔見たことある……"グラプトペタルム"……これの花言葉って何?」


「それは……知らん。てか決まったなら早く買って次行くぞ次!」


 何故か不機嫌と言うより照れている感じで急かされ、勧められた観葉植物を購入し3階へ行こうとしたが、従兄弟さんの服のサイズがわからないとの事で1階で何か食べて帰ろうという計画になった。




 1階へ向かう途中にゲームソフトを購入し下でハンバーガーを購入し食事をしていた。よほどお腹が空いていたのか注文した分の他に最初に頼んだセットをもう一度購入している。


「よく食べるね月島さん」


「ああ、家じゃ食費とかそう言うので遠慮しちまうからな。今日はお前の奢りだろ?」


「いつの間に……」


「冗談だよ、マジになんなって。バイト代入ったからそれでだよ」


「月島さんバイトしてるんだ、モデルとか?」


「……倉庫で仕分けのバイト……」



──────────────


───────


 目的の物も購入し食事も済ませたので集合した入口前で解散することになった。


 その時に渡していたハンディ扇風機を返却されるがまだ外も気温が高く、このまま帰るのとまた品のない彼女になってしまいそう……それに気に入っていたようだったので、先程家電量販店で買った白のハンディ扇風機をバッグから取り出し手渡そうとした。



「これ、暑いから使ってよ」


「お前それ……あ、あの時買ったのか……ちょっ、それいくらだ」


 バッグから財布を取り出しお金を渡そうとしてきたので「いいよ」と静止し"プレゼント"と言う名目で渡すことにしたが、彼女は納得いっていない様子だ。


「月島さんのお陰で夏休みの宿題も早く終わったし、いつも色々お世話になってるから……じゃダメかな?」


「奴隷の分際で偉そうな……しかたない、貰ってやるか」


 言葉の割にその表情は柔らかく両手で丁寧に受け取り聞き間違いかもしれないが小声で「一生大事にする」と聞こえた。




 翌日月島さんからメッセージがあり従兄弟さんとゲームを一緒に楽しむ姿の画像も添付されており、その表情は家電量販店で見たあの顔そのものだった。それを見てニヤニヤしていると妹がノックして部屋へ入ってきたので慌ててスマホを閉じ表情も変えた。


「お兄ちゃん楽しそうだね、何かあった?」


「い、いや別に……それよりなんか用?」


「暇だったから新しく買ったゲーム一緒にしよって誘いに来ただけだよ。これ一緒にやろ……?」



 偶然なのか、妹が手に持っていたゲームソフトは昨日従兄弟さんへのプレゼントとして選んだソフトと一緒だった……

グラプトペタルムの花言葉..."秘められた恋"

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― 新着の感想 ―
完璧美少女、月島さん~実は性格最悪!?~ Xの企画で参りました。 1学期、外伝2.秀才と貧民の買物まで拝読しました。 月島さんと下僕……もとい良雄くんの生徒会学園コメディ。 面白かったです。 読…
ここまで一気に読み終えました。 まず1話の疾走感(特に全く躊躇いの無い「殺す」)に吹きました。 そして性格最悪というタイトルに恥じない暴君っぷりを発揮する月島さんですが、過去編が想像以上に過酷過ぎ…
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