秘書の岸本です
数年前、この世界にゲートというものが現れた。ゲートからは未知の生命体が大量にあふれ出し、人間は絶望した。そんなとき現れたのがプレイヤーと呼ばれる存在だ。プレイヤー固有のスキルと呼ばれる能力を所有している。その固有のスキルを使いどんどんその怪物たちは消えていった。それから数年、ゲートは今も尚いろんな場所で不定期に現れている。だが人間もいろいろ調べていた。そして役職というものを発見した。役職に就くとその役職のスキルを使うことができる。それはプレイヤーかどうかは関係なく誰でもなることが可能なのだ。そしてその役職についた人たちを総じて冒険者という。
・・・
私は岸本奏、冒険者だ。冒険者にはランクが振り分けられており、私はAに属している。Aは結構凄く日本でも30人程度しか確認されていない。プレイヤーでもほとんどがAになるほどだ。だがそれでも最上位というわけではない。Aの上、Sが存在する。Sは世界でも40にも満たないほどの人数しかいない。日本には3人存在している。そしてその3人の中でもトップ、柳雪さん。私は今日から雪さんの秘書として働くことになった。
・・・
雪さんの家について私は驚いた。冒険者は命のかかっている職業であるため結構稼げたりする。Aですら一回のゲート攻略で数百万から数千万行くこともある。しかもゲート内で発見されるアイテムなどを売ればひと月で億稼ぐのも夢ではない。Sともなればもっと稼いでいるだろう。そのため外国のSは結構豪華な家に住んでる人が多い。なのに雪さんの家はかなり平凡だった。
「ここで、合ってるよね?」
表札を見ると柳と書かれている。ほぼ確実に雪さんの家だろう。私は恐る恐るチャイムを鳴らす。すると家からドタバタと音が聞こえてくる。そして玄関から一人の男性が出てくる。髪には寝ぐせ、眼鏡をかけて服はだぼだぼのパジャマのような服。
「えーと、雪さんのお家でお間違えないでしょうか?」
私がそう問いかけると、男性は笑顔で、
「はい、というか僕が柳雪です。」
「え?」
「?」
「えーーーーー!?」
今日最大級の声が出た。
・・・
その後私は雪さんの家に上がっていた。結構綺麗で本当にどこにでもある家のように感じた。
「えーと、本当に雪さんなんですよね?あの冒険者ランクSの…」
「うん。そうだよ。」
雪さんはあの後すぐに寝ぐせを直して着替えてきてくれた。それだけで雰囲気が結構変わり、綺麗な銀色の髪に銀色の瞳、最初は気づかなかったが輪郭も美形で女性と勘違いするほどだ。
「えーと、雪さんの秘書に選ばれました冒険者ランクAの岸本奏です。」
「ご丁寧にどうも。僕は冒険者ランクSの柳雪です。一応プレイヤーです。よろしくね。」
「はい、よろしくお願いします。」
「・・・緊張してるのかな?敬語は外していいよ。」
「えっと…一応秘書ですので敬語で行かせてもらいます。あとギルドからまだ仕事内容を教えてもらっていなくて…教えてもらえませんか?」
冒険者ギルド。冒険者を管理している場所で、ゲートについての報告や、依頼料の支払い、ゲートからモンスターが現れるウェーブと呼ばれる現象が起きた際の市民の避難誘導などもやっている。
「そうなんだ。簡単に言うと僕の今日の日程とかを報告してもらったりだとかでいいよ。そもそも僕が秘書を欲しくて頼んだわけじゃないし、あんまり必要とはしてないんだよね…」
「では、何故私が秘書に選ばれたのでしょうか?」
「僕以外のSの2人は秘書がいるからってのと、ギルドが僕を管理下に置きたいってのがあるんじゃないかな。君が選ばれたのは、僕には分からないかな。別に僕が選んだわけじゃないし…」
「そうなんですか…で、今日の日程は…」
「今日は大丈夫だよ。なんなら今月はゆっくり覚えていって大丈夫だよ。今日は今からギルドに行ってA以上のゲートがあったら、そこの攻略、それが終わったらSの2人とお話をしに行く感じだね。毎週水日はS全員で集まってるんだよー。あと僕の活動時間は主に昼で他の2人は朝と夜を担当してくれてる。」
「わかりました。」
「じゃあ早速行こうか。」
そして私は言われるがまま雪さんの車に乗った。私はまだ免許を持っていないので運転ができないので、助手席に座った。それと車を見て1つ思った。
『車も平凡なんだなー』