闇
「で…また招集?」
現在時刻は午後7時前、長引いた部活が終わり帰路につこうとしたところスズリからの電話に耳を傾けていた。
「えぇ…それと今回は長丁場になりそうですのでコンディションは整えておいてください」
「俺にコンディションというものが存在すると思ってるのか?」
「ああ…そうでしたね」
少々とげのある声色なのは以前二人だけの空間に入ったところにあるのだろう。
「集合場所は?」
俺の言葉にスズリはその場所の詳細を伝えてくる。
「近いな」
普段はもう少し遠い場所を基本的に指定されるが今回は移動距離がいつもより短い。だが長丁場になるということは…
「なるほどな…」
俺は必然的に出てくる答えに納得しつつ帰路から静かに外れ、闇に紛れる黒塗りの車に乗り込むのであった。
「来たぞ」
移動が終わり俺はその場所に来ていた。以前のような建物ではなくここはとあるビルの地下。そこには複数の人影がある。
「ちゃんと時間同りに来たんだね~×××」
「俺が頼んだことだしな レン」
俺が答えるとその少年は顔を少ししかめる。
「今はユキでいいの」
その言葉の意味を理解しおれは「そうですか」と小さく答える。だがそれよりもほかの人影に目を落とす。俺もユキも160センチに届くか届かないかという15歳の男子にしては低い身長をしているがその影はもっと低い位置にある。
「USBの中のデータを解析した結果、彼らの犯行であることが判明したから」
俺が縛られているそいつらを見ているとユキがそんなことをつぶやく。そもそもなぜこんなことを俺たちがしているかを知るのはごく少数人しかいない。
『共有の場』
それは俺が作った意見共有の場 それは俺が有一興味を持った『イラスト』を専門職にしている者やそれを目指す若者がそれぞれの意見を交換するために作った場である。その場所は今や多くの人物が使用しており発展している。だが著名な者も多く来る中その存在を公にすれば問題が出るのが今のネット社会である。なので信頼できる者にしかその存在は明確には伝えられていない。さらにはそこに自由に出入りするためにはそれ相応の条件がいる。
そんな場所に土足で踏み込み好き放題してくれたのが目の前の3人。以前の会議で議題に上がっていたが警備システムの強化の必要性を教えてくれたのはありがたいがそれとこれとは別だ。
「で…お前らの目的は?」
俺の言葉にそいつらは答えない。口はふさいでいないのだがその口を開こうとはしない。そこで俺はとある物を取り出す。
「正直早く終わらせないと俺が帰れないから早めに始めようか…」
俺がユキにそう言うとユキも了解とうなずき一つしかない小さな扉を閉める。それを確認し俺は取り出したそのボンベの栓を緩める。そのボンベにはCO²と書いてある。
「低酸素状態でどれだけ耐えれるかなぁ」
俺はおびえているらしい3人にそう問いかけるのであった。
~数時間後~
「ふぁ…」
俺が扉を開け外に出る。やっとあの息苦しい空間から抜け出して思いっきり酸素を吸い込む。
「あとはユキに交代~そもそもこれは俺の専門外だしね」
大きく伸びをしながら「あとはよろしく」とユキの横を通る。それにユキは何も言わず部屋に入っていく。
俺が聞き出せたのは、彼らの目的はサーバーの管理者である我々5名の情報を盗み出すことで、このサーバーの存在は過去の追放者から聞いたということだけ。俺はそれを聞き出せた時点で彼らに対して興味はないがユキは違う。管理者の情報を盗み出すこととはつまり管理者に近い者の情報も必然的に手に入る。
ユキは基本温厚で何事にも動じず冷静な人物だ。だがたった一つ彼にとっての地雷がある。それを踏んでしまった3人がどうなるかは俺には関係ないが地獄を見るのは確かだろう。
「恋愛というのは大変だな」
俺は薄く光が照らされる中そこにある車に乗り込み帰路につく。何事もなかったかのようにいつも通りに。