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リバーシ  作者: ゆっくりスー
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狂い

「おはよ~」


そんな言葉を送れば「おはよ~××」と返してくれるクラスメイト達。この高校に入学してから2か月ほどが経過し、クラスメイトの人柄をあらかた分析し終えた俺はそれぞれに味方というほど親密な関係を築くことも無く、逆に敵対関係を持つことも無いように仮面を駆使し立ちまわっていた。

裏表を見せずただその面だけを純粋に見せる。普段からその手法を使っている俺にとっては学校という教育の場において、とても簡単なことだった。


(この分だと気づかれなさそうだな…)


実を言うと左足の薬指を以前の会議での移動で粉砕骨折しており、小さくも強固に固定されているのだがそれに気づくような観察力を持った人間はここにはいない。


(………)


授業は「楽しい」とも「つまらない」とも感じない。ただ周りの雰囲気に合わせ相槌を打ち、黒板の文字をそのまま書き写す作業を繰り返すだけ。もし当てられたらその時に問いの難易度によって答えを出すか分からないと答えるか間違えるかえを決めればいい。たとえ答えが分かっているとしてもその知識をテストでも見せることはない。自分を客観的に見て弱みと言える部分を作り、それを話題に友人関係を作る。弱みを見せることで距離感を縮めることができるというのは広く知られているだろう。


(うまく立ち回っていこう)


高校に入ってから数か月で俺は自分の中でそう答えを出した。中学のころのように自身のテリトリーに入れても問題ないと思える人材はここにはいない。近づけることはできるだろうが、入れることは不可能だろうと判断した。


(楽しいなぁ)


そして俺はまた自分に仮面をかぶせる。自分自身の感情なんて分からないし分かろうともしない。なのに他人の感情を予測することにたけ、人を操ることに特化した化け物。それが自分に対する自分自身の評価だ。そしてその評価も自分をだまし続けてるがゆえにこぼれたものなのか、はたまた事実なのかは自分でもわからない。自分を自分と認識できない××は何重もの仮面の裏に隠れ続ける。それがこの世の中から「狂っている」と判断された5人の中でもっとも狂った状態で安定してしまっている俺である。


(美味しい)


俺は笑顔で教室の端でそうめんをすする。


「お~××はそうめんか!いいな~」


そう言われ俺は


「好物だからね~…それに熱いから丁度いいでしょ?」


なんてことのない会話。だがその会話の中に己の感情と意見を混ぜることはない。裏と表ははっきりと分かれているが、裏を受け止めてくれる人物がいないのは分っているのだ。だから…


「あ~でもわさび欲しいなぁ…」


俺は表の面に仮面をかぶり偽りの自分を見せ続ける。互いの利益のために。

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