表の仮面と裏の仮面
「眠い」
日付が変わったごろ俺は車の中から外を眺めながらつぶやく。
(でもこれからあいつのとこ行かなきゃなんだよなぁ…)
夜食を食べた後みんなと軽い雑談を交わしたのち俺はこの車に乗っている。目的地は有一欠席していた管理者の場所である。 たしかスズリを迎えに来たとかほざいてたな…
(アポ取る必要はないわな…てか絶対電源切ってるし)
スマホを取り出そうとするが電源を切ってポケットにしまう。
「少し仮眠をとるか…」
俺はゆっくりと目をつぶる。ここから大体30分ほど移動にかかるらしいので仮眠をとることにした。
「一睡もしないよりはましだわな…」
そのつぶやきを最後に俺は自分の意識を闇に沈めるのであった。
「…ここか?」
街の片隅にあるホテルを見上げるとスマホの電源をつけ、受け付けに立っている人物に声をかける。
「203号室に通してくれ」
受け付けのやつは何やらパソコンを確認したのちに「どうぞ」と返される。
その言葉をうけ俺は奥に進み目的の一室の部屋の前にたどり着く。俺はそこから特に何もすることはなくただ扉を見続ける。すると中から鍵が開けられ、その男が顔を出した。
「何の用?…×××」
ぼさぼさの髪で出てきたのは一言でいうと美少年というべきなのか…緩い雰囲気のショタという印象を受ける。そんな少年…実際は俺と同じで15歳なわけだが…その容姿と背丈からはより幼く見える。
「お前が欠席したからな…これを渡しに来た」
俺が差し出したのは一つのUSBメモリである。それを見続ける少年はそれをしぶしぶ受け取ると「入って」と一言だけ俺に告げ、部屋の中に入っていった。俺もその背中についていく。
「スズリは寝てるのか…」
中にあったベッドの上にはすやすやと寝ている。それを見て俺はふと思ったことを口にする。
「何で二人とも全裸なんだ?」
「さっきまで襲われてたから」
その返答に納得しつつ少年がパソコンを開きUSBを挿入する。そこに表示されるデータを少年はまじまじとみつめ何やらパソコンをいじり始める。
「嫌なにおいだ…」
「僕は分らないんだけどね」
この少年は別に大きく狂っているわけではない。ただ、全ての人間を平等に見るだけだ。彼女は例外らしいが…
「はい…これ」
差し込んでいたUSBを抜き取ると俺の方に渡してくる。
「さんきゅ…警備統括~」
俺は彼を肩書で呼びながら扉に向く。
「あっそうそう…次の会議も欠席する予定だから…お願い~ 総統括様~」
俺が部屋を出る直前にその言葉を投げかけられた。「はいよ」と小さく返事をして俺は部屋を後にする。
「さてと…これで今日の仕事も終わりかね…」
これが俺のこちら側での仕事。俺が作った居場所の管理者たちの統括役である。その役柄のせいでここに来るときは尾行や登頂を警戒しなければならない。それに彼自身もレンという偽名を名乗っているのもそれが理由だ。
「帰りますかね」
そうつぶやくと先ほどの受け付けに「じゃ」とだけ告げホテルを出る。表に泊まっていた車に乗り込みスマホの電源をつけネットサーフィンを楽しむ。通常の人間なら眠気を感じるのだろうがあいにくと俺にはそんな通常が通用しないのでスマホの青白い光を浴びながら揺れる車の中でまた仮面を重ねてかぶる。
「誰かが俺の仮面をはぎ取ってくれる時が来るのかね~」
そう言いながら俺はアルコールを口の中に流し込むのであった。