集団
とある車の中で青白いスマホの光を浴びる。窓から見える景色は真っ暗でただその光だけが目に入ってくる。
「何を見ているのですか?」
俺の横からは聞きなれた声が聞こえる。
「ただ友人と話していただけだ…スズリ」
寝起きであろう彼女に俺はそうつぶやく。
「そうですか…もしかして彼女さんですか?」
「違う…」
俺が今話しているこのスズリは俺の素を知っているであろう数少ない存在。だから何も着飾ることも無く話すことができる。
「そんなお前は彼氏にかまってもらわなくていいのか?」
この発言をしたのちに俺は後悔することになる。
「本当なら今すぐ会いたいですよ?なんならこんな時間に集会を開かなければ私は今頃彼と一緒に寝てましたからね?それにあなたが私と彼の時間を取り上げたのと同じですからね?こんな時間の招集は…明日金曜日ですよ?それに………」
その後俺は車の中で数十分にも及ぶそいつの話を無表情で聞き続ける羽目になった。
(こいつらは共依存関係だったな…)
そんなことを思いながらも着々とその車は目的地へ迫る。やがてブレーキがかけられわずかな振動のあと停車した。それを確認し、青白い光の向こうにメッセージを送る。
『付き合ってくれてありがと いってくるー』
そのメッセージを打ち込んだのち、俺は車を降りる。
木曜日 深夜10時30分 集められた5人のメンバーが集う。
「何で俺はこんなことしてるんだろうな」
その建物の前に立ち、黒一色の空を見上げながらつぶやく。過去を振り返っても別に何か間違った覚えもない。なのに何でおれはこんな時間に県外へ車で大移動をするようになったのだろうか…
「まぁ…今は関係ない」
俺はゆっくり内部へと足を踏み入れる。
「ただいま…みんな」
×××は内部にいる自らの理解者たちに向けてそう声を上げるのだった。