協調
「………」
いつも通りの制服…いつも通りの学校…いつも通りの音
綺麗に並べられた椅子の1つに座りながら周りの雑音を無視して本を読む俺は意識を本の実に集中させるふりをする。
「ねぇ…なに読んでるの?」
ふと顔を上げると名前の知らないクラスメイトが首をかしげ本を見ている。
「あ~これ?ラブコメなんだけどさ…」
そう言いまた俺は自分の好きな本の良さを相手に伝えるふりをする。
「へ~…××君そういうの好きなの?」
「まぁ結構読むし好きな方だと思うよ」
俺ではない誰かの名前を呼ばれた気がしたが気にせず会話を合わせる。それからしばらくして予備鈴が鳴り、話しかけてきていたクラスメイトは席へ戻っていく。教員が入ると授業が始まる。いつも通り、黒板の文字をそのままノートに写しこむ作業が始まる。
(次の授業は道徳か)
時間割を確認し授業の準備を終えて席に着くと丁度良く教員が入ってくる。
「では授業を始めます」
その言葉に日直が号令をかけ、授業内容が告げられる。
「今日の授業は感情についてです」
(………)
「次の物語を読んで思ったことを描いてください」
そう言われて読み上げられる物語は主人公が大切なヒロインを守る王道的な物語だった。
(分からない)
その話を聞きながら脳内でそうつぶやく俺 ふとあたりを見渡すとうっすらと目じりに涙を浮かべている生徒もいる。
(またあいつに聞いてみるか…)
そう思いつつ俺は模範解答をプリントに書き込む。何も感じないが周りに合わせる。それだけで自分の身は保証される。そこに自分の意見など必要ない。そんな自論を押し殺し、また白い仮面をかぶる。
そんないつも通りのの日常はすぐに時間が過ぎていくのだ。