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売雨戦線  作者: 留龍隆
Chapter4:

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Waiting window (登場人物・用語紹介)

登場人物:



《南古野安全組合》なごのセーフティ

 商業連合が利害関係から繋がり、いつしか自警組織として成立したもの。南古野のなかでの様々な商売に関わっており、加入することで《七ツ道具》をはじめとしたメンバーの庇護を得られるため商売をはじめたばかりの者は参入しやすい。

 反面、条件が合わなくなってきたものは一度かぎりの『島抜け』を活用して他へ移ることもある。



円藤理逸:エンドウリイチ

 メイン人物のひとり。身長170、体重60キロ。やせ型。

 短めの黒髪に薄墨色の目で、無愛想な表情が基本の19歳。笑わず、常に気だるげに事物を眺めているが水泥棒戦など任務として授けられた戦いに挑む際には目のひかりが異なると周囲は言う。仕事着はハイネックの七分丈トップス、ハーフフィンガーグローブ、カーゴパンツ、地下足袋。ポケットに各種道具を収納して戦闘にあたる。首に提げており戦闘中にかける古めかしい双つレンズのゴーグルは兄の形見。

 南古野安全組合・七ツ道具の三番で通り名は《蜻蛉トンボ》。

 序列通りに戦闘能力は高く、とくにプライアによる機動力と師・深々から学んだ『行路ゆきみち流』による高威力の打撃技に長ける。

 戦闘時でも『一切の殺害をしない』と己に課しており、いまのところ敵対者でも誰一人殺していない。ただしそれは自分のスタンス上のことでしかないため、周囲の人間が生きるため殺すのを咎めるなどはしない。

 子ども嫌いであり、あまり近づこうとしない。それなのに明らかに子どもであるスミレと暮らすことになり、もともと笑いもしない顔がさらに硬直しはじめている。


能力:『引き寄せ』:救助用

 条件は「視界内で」「手をかざした先の対象物に」「手を握り込むモーションと同時に」、効果は「60キロまでの重さの物体を高速で引き寄せる力を発生させる」。対象物が60キロより重たいor地面に固定されている場合は自分が対象物に引き寄せられる。



スミレ:

 本名不明。身長138、体重36キロ。華奢。

 肩までの銀髪と紫紺の眼、目尻になんらかの部族のものらしき赤いアイメイクを施した、小麦色の肌と顔立ちに異国の雰囲気を漂わせる13歳。年齢に似合わない諦観を抱えた表情と大人をこばかにした目つきが特徴。ホルターネックの、白いタイトなベアトップワンピースのみを身に纏っており足下はサンダル。理逸と暮らすようになってからは似た意匠のものをいくつか手に入れている。

 首につけていた黒いチョーカーが統率型拡張機構(ハイ=エンデバイス)であり、他者の機構の操作や停止すら可能な切り札であった。しかしChapter4にて過剰稼働オーバーヒートを起こし、破損。現在は町のヨッパライから奪取した通常レベルの末端子拡張機構エンデバイスをつけている。

 体格に恵まれておらず戦闘訓練も積んでいないため白兵戦は一切できない。しかし年齢に見合わない異様な知識量と観察眼および聡明な頭脳により常に作戦立案・実行への指示と現場で動き回る能力を持っている。

 大人嫌いであり、誰相手でも測るような態度で接するか関わらず逃げるかしようとする。理逸も例外ではないが……例外ではないとはいえ、例外に近く、「他の大人よりまだだいぶマシ」という評価を得ている。反面子どもには甘く自分より年下の橋の下の仲間たちには普段見せない笑顔で接する。



鱶見深々:フカミミミ

 右目と右腕を失っており、水道警備兵からのあだ名は《隻鬼セッキ》。身長170、体重58キロ。しなやか。

 安全組合の現リーダー。

 濡れたような黒髪を肩を過ぎる程度に伸ばしており、長い前髪が右目の傷を塞いでいる。三白眼で非常に表情がけわしく、いつも千変艸ヴァリアブルウィード製ではない本物の煙草をくわえている。男物のXLサイズのカッターシャツを着用して左袖はまくり右袖は長く膝まで垂らしている。腰から下は派手なパレオで、どこにいくにも底の低いミュール。

 南古野安全組合リーダーであり、先代の十鱒から引き継いでこの立場を護っている。沈着冷静で事物の裏を見通すのも得意なタイプだが、専守防衛タイプのため攻めに出ようとすると判断ミスが出ることが多い。

 理逸の体術における行路流の師匠ではあるが、彼が戦うことを好ましく思っていない。


能力:『固定』:逃避用

 条件は「触れた物体(空気も含む)を」「任意の個数まで」「触れた回数分だけ」、効果は「空間ごと固定して運動量や熱も保持する」。空間まるごとの固定であるため、どのような攻撃を受けても解除されることはなく不変の盾として機能する。深々はこれらを足場にして空中散歩するのが趣味。



才原織架:サイバラオルカ

 七ツ道具の四番。通称《識者》

 痩せた体つきのわりに身長の高い、妙な男。明るくよく笑い、ムードメイカー。22歳であるがあまりそうは見えない。総髪にして後ろで一束にまとめており、痩身に革製のベストと腰巻にしたツナギを纏っている。両腕には装備型アウトフィットの末端子拡張機構を嵌めている。

 戦闘時は腰帯型コルセット眼鏡型グラスの拡張機構も装備し、動作鍵式定型情報出力モーションキーで周辺の電子機器を支配ハックする戦法や周囲の兵力状況を入力して用兵の指示だしをおこなう。司令塔。


羽籠宮婁子々:バロウクロココ

 七ツ道具の五番。通称《淑女レディ

 190センチを超えるかなりの長身を、古い時代のドレス姿で覆っている女性。栗色の長い髪を一束に結って流しており、表情がころころ変わるところが少し幼げである。24歳。

 投与型インストールの末端子拡張機構を身体に入れており、これを極限までチューニングして肉体強化・感覚鋭敏化に用いて白兵戦をおこなう。膂力はすさまじく、また達人の様々な感覚を取り込んでいるため個人としてはかなり強い部類に入る。反面、薬物に頼ってこれらの強さを引き出しているがためにしょっちゅう過剰摂取オーバードーズを起こしており、寿命を削っていると思われる。

 本名は紀田海苔子だが、気に入っていないため上の名を名乗る。



十鱒:トーマス

 七ツ道具の一番。通称《太刀斬り》

 白髪交じりの髪をセンターパートにした、穏やかで柔和な顔つきのミドルエイジ。先代のリーダーであり、安全組合を率いていた。

 中肉中背でベストとシャツを着込んだ、バーのマスター。とてもそうは見えないがかなりの強打の持ち主であり、警備兵との戦いでは素手による拳闘のみで相手を殴殺する。

 かつて深々と共に他の滅びた統治区、通称《廃治区ルイン》も回って治世と乱世について学んでいた時期がある。深々にとっては育て親のようなもので、直接言葉をかわすことはいまは(立場的にも)少ないが頼りにしている節がある。


能力:『武器破壊』:救助用

 視界内の認識した武器武装の一切を破壊する。だれが相手でも素手での戦闘に持ち込ませる能力で、そして彼自身が体術の達人である以上一方的に自身を有利にする能力と言える。

 本当は彼自身の持つ武器は効果対象にならないが、主義として拳闘にこだわっている。



無天蔵人:ムテンクランド

 七ツ道具の二番。通称《物干し竿》

 三十代。黒髪を短く刈り込んで坊主にしており、わずかに顎に髭を生やす。ミリタリージャケットに袴という異装を基本としており、腰に二本差し。剣術を相当長い期間修行しており、刀に手をかけただけでプレッシャーを発する。

 一番である十鱒に対抗意識を燃やしている。かつての戦いで喉を潰されており、非常に聴こえづらい喋り方をするのでこれをうまく聞き取れる譲二と行動を共にすることが多い。

 男は抱く趣味こそが人生のすべてだ、が信条。得物や戦い方にこだわりを持つ者を好む。


能力:『延長』:反撃用?

 振るった刀が伸びて遠距離にも攻撃できる様子。



阿字野譲二:アジノジョウジ

 七ツ道具の六番。通称《妖狐槍よこやり

 ちりちりとうねる髪を伸ばしっぱなしにした、日に焼けた肌の男。だいたい白シャツにデニムのハーフパンツというラフな恰好だが、むかし不覚をとった経験があるらしく靴だけは鉄板入りの安全靴を履いている。

 先端に返しのついた細長い銛を長短二本、武器としており、元漁師。戦闘時はこれを投擲して戦う。

 蔵人とは一回り年が離れているが仲が良く、互いに武芸を磨き合っている。


能力:??:??

 投げた銛の軌道を途中で変えている。



百々塚朝嶺亜:トドヅカアザレア

 七ツ道具の七番。通称《半落ち》

 野球帽をかぶり、留め具の隙間からポニーテールにした髪を出している小柄な女性。25歳。枝毛が増えたのが悩み。フード付きのずいぶん擦り切れた灰色のパーカを好んで着用しており、斜めから事物を見るような目をしている。

 新市街からやらかしで転落してきた「都落ち」であり、体内にはかなりのアクセス権限が付与された投与型の拡張機構が宿っている。本来はこうした権限も都落ちの際にリセットされるはずだが、彼女は機構を『分割して』『半分だけ』取り込んでいるというイレギュラーを発生させているため、権限が消せないらしい。

 五年ほど南古野で暮らしているが、戦闘技能やその類のスキルはほぼ一切身に着けていない。「生まれが外なのに半端に対応できる技を身に着けると、街に慣れたと勘違いしてしまいむしろ危うい」という考えによるものであり今後も戦うつもりはなくあくまでアクセス権限を使う道具として七番の地位におさまっている。



多胡於久斗:タコオクト

 24歳。伸び放題の髭と髪を雑に流しているだけで、汚れた作業着姿の多い男。

 拳闘を手習いしていたらしき動きをする。妹の薊が娼館で働いていたが、前金制度で抜けられずに困っていたので強硬手段に出ようとする。

 事件後は安全組合傘下の人間としてあらためて監視下におかれ、能力を駆使できる業種についているらしい。


能力:『影の盾』:逃避用

 自分の身体に黒いもや、影のようなものを纏わせる。外から受けた物理ダメージはほぼ一切を通さず「どこか」へ流してしまう。しかし地面に足がついている=重力の影響は受ける、慣性力は中に通じるとの弱点をスミレに見破られ、敗北。また影を纏うのが発動条件のため、光源がなく自分の影と他の影とが分かたれていない場では発動しない。


多胡薊:タコアザミ

 妹。十代と偽っているが22歳。兄と二人暮らし。事件後は別の風俗店へ移った。口が悪いのは追い払おうとしていたとかではなく素。



尾道:オノミチ

 三十路。やり手の娼館主人であったが、あくどい儲け方をしようとしたがために失脚。島抜けで笹倉組に渡ろうとしたものの、安東の怒りに触れて暴行の憂き目にあう。その後安全組合内で「処理」された。


能力:『焦熱』:反撃用

 身に刻まれた火傷の記憶から生まれたプライア。触れたものに高熱を加える。触れた箇所伝いに間接的に焦熱を叩き込むことも可能で、発動も極めて速い。




《笹倉組》

 暴力団。金貸し、人さらい、薬、娼館経営とあらゆることに手を出しており常に裏から住民の金を吸い上げている。とはいえ先代・先々代がここに来た当時の南古野黎明期には住民から求められて自警を成していたこともあるため古い人間には「親世代が世話になったから」と厭いきれない心情もある。

 ただ自警などの善性ある行いですら、利を得るための行動に過ぎないのだが。


笹倉鬱郎:ササクラウツロ

 四十がらみの、オールバックにして細いうなじに髪束を散らした細面の男。病身を思わせるやつれた面相とどこもかしこも細い体躯のために実年齢よりもさらに老け込んで見える。背広に身体のラインがまるで出ない。懐には拳銃と匕首を常に忍ばせている。

 かすれた声・幽鬼のような足取りで、つかみどころがない。初動を周囲に悟らせない動きをしており、人の意識の狭間で歩いているようにすら見える。なんらかのプライアを持つ。


安東湧:アンドウユー

 笹倉組の幹部《四天王》が東。二十代半ば。茶髪をハーフアップにしており、へらへらした男。首回りは太く、鍛えた肉体が袖口からのぞく腕の太さにもうかがえる。右眉と右耳半ばを刃で切り付けられた跡が残っており、傷面。

 性格は享楽的かつ非常に残虐で、自身と組織の利にならないと判断した人間は即殺害する。感情の振れ幅が大きく、笑っていた一秒後には談笑相手を殴り倒していることもあるため非常に危うい。

 プライアホルダーであり、反撃用の強力な念動力を持つ。手をかざした先の対象を吹き飛ばしているため見えない力を発生させているものと思われる。


西園寺金持:サイオンジキンジ

 四天王の西。天井に擦れそうな長身、巨躯の男。はちきれそうなスーツに身を包み、上体の方が下半身より膨らんでいるように見えるほど異様な筋肉量。「閉じ込められない男」の異名を持ち、その名の通り怪力によりどこからだろうと脱出してきた経歴を持つ。プライアホルダー。おそらく怪力か、閉所脱出に関するものだろうと思われている。


南刀然:ミナミトウネン

 四天王の南。抜き身の長脇差を常に右手に携えている男。左の方がボリュームのある妙な髪型をしているが、自分で刀の切っ先にて切りそろえているためらしい。

 人生初のカチコミで緊張から刀を握った手を開けられなくなり、以降十年以上もそのまま刀を握って生活している。もはや腕と一体化しているため、切っ先で背中を掻いたり刃で切らずにものを受け止めたりと異様な技を自在に行える域に達している。通称「斬臣」「侠剣」「ドスで飯食ってる奴」。

 プライアは持っていない。


中川正道:ナカガワショウドウ

 四天王の中。眼鏡をかけたインテリ風な男。組の対外折衝役であり、四天王全員で動くときには頭になる。見た目は前線に出てくる風に見えないのだが、毒を操るプライアを持っており抗争になると真っ先に警戒される人物。



ゴウ

 大陸系、忠華から渡りきた華僑の面々。港湾部を根城としており労働者の斡旋やとりまとめ、輸出入に噛んでいることが多い。(密入区)のブローカーも多数抱えており、統治区ドミニオンへの出入りについてはここを通すのが基本となる。


周永白:チャウヨンパイ

 五十近く、もう人生の閉じ際のはずだがとてもそうは見えない貪欲そうなぎらつきが薄い眼に宿る。頭髪は頭頂部を残してほぼ禿頭、腹部の突き出た恰幅の良い男だが動きには武を窮めたと思しき安定感と力の満ちた様子がうかがえる。

 沟の龍頭大哥ロントウダーグア、つまりトップ。礼を大事にし礼を尽くすが、同格と見ない者には徹底して突き放した態度を取る家思想の強い人物。なんらかのプライアを持つ。


王辰:ワンチェン

 周の腹心の部下。ひとまわりほど、周より年下。刈り上げた白髪交じりの頭髪、頬骨と顎先のあいだの肌でピンとマストを張ったように硬い表情、遊びのないスーツ姿。両腰には桃木剣タオムゥジェンと、まったく同じ意匠の鋼の直剣を一振りずつ提げている。

 元・蛇頭シィエトゥの密入区ブローカーの元締め。なんらかの事件で周と敵対したのち、彼の下につくこととしたらしい。プライアは持たず剣術で戦う。


楊欣怡:ヤンシンイー

 二十歳そこそこ。理逸の隣に住む怠惰で甘えグセの強い女性。うねりを帯びた髪先に色気があり、体格もしっかりしてプロポーションも良い。けらけら笑いながら常日頃より理逸に食事をたかっている。反面、公私はしっかり分けるタイプであり仕事になると普段の甘えもなく最低限のやりとりしか許さなくなる。

 顺风耳シュンフェンアの異名を持ち、妙に事情通なときがある。だが人を使っている様子はないため、おそらく自身のみでプライアを使って情報収集していると思われる。


竜生九子:ロンシャンジウズィ

 沟の幹部。九人で構成されている。うち四人はプライアホルダーでもデバイスドライバでもなく、なんらかの身に着けた武術などを用いて戦闘を行うタイプ。

 龍には成れない者たち、であるため組織を継ぐのは王の予定。



《民間水道局凪葉良内道水社》:PWSナギハラナイドウスイシャ

 南古野を支配する企業連合ユニオン。民間水道事業者を母体として微機解発研究機構やプラント技術社などが併合して出来た。新市街を根城にしており南古野の支配と生産に関わりを持とうする。


筧堂嶺:カケイドウレイ

 水道局上層に関わる者。管理官。宅島に指示を出している。詳細不明


宅島艮:ヤジマゴン

 恵まれた体躯を鍛え上げ、警備兵として高い実力を持つ男。Chapter1にて理逸とスミレと交戦、スミレの微機により記憶処理を受け戦闘について覚えていない。

 自身に命じられたスミレの確保命令と、記憶を失う失態を演じても斬られなかったこととで南古野になにかあると感づき、ある計画を進めんとしている筧の元に赴く。


新田:ニッタ

 新人警備兵。


好古:コウコ

 古参警備兵。



────────


用語:


四大災害:クァドディザスタ

 作中で半世紀以上前に起きた四つの巨大災害。国によっては人口が1/10になるほどの壊滅的な被害を受けたが、全容は定かではない。

 第一災害の太陽嵐によってオゾン層破壊・電子機器の壊滅。第二災害の大地震によって国土破壊。第三災害の蝗害によって食糧逼迫、第四災害の旱魃で水不足が発生した。

 現在もその影響は続いており、世界全体がかつかつの水食糧事情に喘いでいる。


統治区:ドミニオン

 企業統治区、とも。四大災害で国家という形態での運営が事実上困難となり、強力な企業連合が統治するようになった区域。

 当初は合同統制部という名で一時的な指揮を執るとの触れ込みだったが、次第に権力を強めて上級市民と下級市民を明確に差別化。搾取じみたシステムを構築し、今に至る。

 どの国も災害当時に国が運営を委託した民間水道局・民営化水道事業の企業が母体となっているようだ。


末端子拡張機構:エンデバイス

 en-device。人間の機能拡張を行うべく体内をナノマシンコロニーに作り替える特殊機構。視覚・聴覚など五感の機能を向上させることで超常的な能力を発揮させる。中には「五感の側の誤認・新規構築から新たな機能を発現させる」ものもある。

 特殊能力を人間に付与するアイテムだが、同じく特殊能力のプライアと同時使用はできない。脳髄のなかで同じ領域を使っている、からだとか。

 使用者は機構運用者デバイスドライバと呼称。使用時は目に青い光──ナノマシンが活性化しているときに発する熱のない光──が宿る。気絶時にも消えていない場合、過剰稼働オーバーヒートを起こしておりその状態の継続は脳の覚醒継続であるため数日も持たず廃人になる恐れがある(薬剤投与などで抑えなくてはならない)。明滅しているときはコントロールが効かなくなっているときで、向精神加速薬アクセラなどによる強制的な活性化が原因として考えられる。

 使いすぎて「強化された感覚」に脳髄が慣れていくと微機ナノマシンの経路を効率的にするべく焼け憑きという、葉脈状の傷痕が体表に残るようになる(これを人為的かつ安全に経路を舗装したものは階路コースと呼ぶ)。

 脳もいずれはその強化感覚から脱することができなくなり、「早すぎる感覚に身体が追いつかない」などの『感覚酔い』が発生する。これを防ぐため定期的に感覚を基準値に戻すのが《機構調律者デバイスチューナ》の仕事である。同レベルのデバイス同士では記憶参照情報を覚えきれないため、基本的に自分で自分の調律は出来ない。

 よりハイグレードで、下位権限のデバイスを統括・操作する統率型拡張機構:ハイ=エンデバイスと呼ばれるものもある。こうした上位機種によって脳の記憶参照情報を保持できるなら、自身でも調律が可能だが……?

 値段は下位グレードでも上級市民の年収が相場。個人登録を成して使うため、奪い取ってもコア部分のデータ書き換えは出来ず他者には扱えない……基本的には。


相構成型式駆動機:B.S.drive

 デバイスのコア部分。失伝技術のなかでも再現が追いついていないものであり、破損すれば現代技術では修復不能。


心因性現実干渉能力:プライア

 Psycological Reality Interference Abilityの頭文字をとってプライア。

 トラウマを種に、「この現実を否定したい・克服したい」と強く願った者に宿る超能力。主として発現状況により逃避用・救助用・反撃用に分かれる。

 脳の松果体および一部器官に発達が見られる他はとくに常人と変わりないが、既存の物理法則に反する能力を駆使する。使用者は能力保有者プライアホルダーと呼称。

 危険なため、申告と届を提出していない場合に能力所持が発覚した場合は就業制限や行動制限、果ては禁錮まで厳しく刑が課される。

 機構と能力を切り替えて併用できる者もたまにおり、それらは二重実行者ダブルワーカと呼称する。


南古野:なごの

 灯京、京杜など主要都市が滅びたあとに残った、この元・日邦國に6つだけ残る統治区のひとつ。

 南大壁、北遮壁という名で呼ばれる、大地震の際に基礎から倒れた高速道路が壁となって南北を封鎖しており、南の先が上級市民の住む新市街、北の先が【沟】と名乗る華僑組織の住む港沿い中華街となっている。街中は倒れたビルや廃墟に埋め尽くされ、常に危険が漂う。

 地下にはかつて地下鉄が通っていた大都鉄道網なる施設があり、いまは水道パイプラインが走る。ここを舞台にしておこなわれるのが水道局との水の奪い合い、制水式。通称を水泥棒という。


民間水道局凪葉良内道水社:

 Private Water ServiceでPWSとも。南古野において水を占有し、新市街に住む上級市民を優先して配る民間企業。

 水泥棒で勝利出来なかった場合は彼らの提示する高額な値段で水を購入するほかなくなる。また、南古野で流通する貨幣の一種である水道免税券なるものの元締めである。

 パイプライン警備のため、文明崩壊後の世界では貴重なエンデバイスや銃器で武装している水道警備兵を所有する。群青の制服に身を包みボディアーマーとフルフェイスメットで姿を隠した第二種、メットを外してエンデバイスによる感覚器官の強化に振った第一種装備などが存在する。


電子制御:エレクトロ

 太陽嵐のせいですっかり数を減じた電子機器の操作のこと。物理的な電子機器の扱いについては電子回路:サーキットで大体は通じる。

 扱いに熟達したものを電子奏縦師:エレクトロニカと呼ぶ。


2nAD:セカンナド

 After Disasterの2世世代:2ndで略してセカンナド。災害により住む土地を失い流れた人々の呼称。

 同時に彼らが流民としての人生の中で身につけてしまった、その土地その土地での言語の集合によるごちゃ混ぜの言語のことも指す。その言葉は感情表現・肯定否定のワードから始まる語順で他の既存言語とも語系が少し異なり、身内同士でしか通じず地域差も激しい。

 貧民の多い旧市街でも格差はあり、その中でも2nADは上の理由もあり会話しづらく仕事も任せづらいため、立ち位置はかなり下方に位置する。

 希望街というバラック群を南大壁の近くに作り上げ、ここで難民流民を中心に受け入れている。南大壁は連絡用軌道車線:バレットラインという高速搬送用の路線も含め10車線あったため、横倒しになってもそこらのビルより高さがある。


千変艸:ヴァリアブルウィード

 万能草。なににでも成る草。作中では代用煙草に用いられていたがそれこそ薬効ある草から食用サラダ菜まで、生育前の種子に手を加えることであらゆるものに変化する。

 ただ素体となるものは単独の種ということになるため、病害などで致命的なものがあると即座に枝分かれした派生植物もすべてダメージを受けることとなる。そのため常に種がストックされており、有事の際は代替わりするようになっている。


皇水甕:スメラミズ

 制水式にあたってどの組織が請け負うかを決めるための儀式。逆オークション。かつての時代に皇の者がおこなった人心を信じる行いが元となっているが、三組織の趨勢を決めるためのギャンブルと化している。面子を保つための行動が必要となるため最適最善の行動をとりにくい遊戯。


慈雨の会:ジウノカイ

 雨とプライアホルダーを信仰する組織。日邦においては三大宗教と並んで力を持っており、炊き出しなどで接触機会を増やし信仰者を獲得している。

 強化アクリルの涙滴型チャームを揃いで身に着けており、中にはトプンと、ひと口分に満たない水が入っている。天からの恵である雨を納めた代物で、活動の際にはこれを常に持ち歩く。

 若年者への施しがめぐり巡って自身に帰り徳になる、『自分がそうしてもらったから、そうする』という思想が強く、信者の数は相当にのぼる。



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