2話
……ここは天国かしら?
いえ、地獄……でしょうね。私は天国に行けるほど立派な生き方をしてきたとは言えませんもの。
「……あら?」
鈴の音のような耳心地の良い音が私の耳に届きます。
一体なんでしょうか。
「あ……」
ここは天国というのはあまりに何もない場所。もしかしたら、ここは天国ではなく天国へ導く何かの通り道なのかもしれません。
そう思いながらやってくるのを待ち続けていると、眼前にいつの間にか凛々しい顔の男性が一人。一体誰でしょうか……
見惚れていると、その男性はこちらを見て微笑みながら……
「天国もいいとは思いますが、『転生』に興味はありませんか?」
その凛々しい顔からは想像のつかない甘い……例えるならそう……花のような可愛らしい声でそう言います。
「転生……ああ、生まれ変わるということですよね」
「はい」
「そうなると、生前の記憶は消えてしまうのでしょうか?」
転生が嫌だということではありませんが、先に聞いておかねば後で何かあった時に困ってしまうと思うのです。
「どちらでも構いません。記憶を消した方がいいでしょうか?」
「いえ……折角、生まれ変わることができるのなら生前の記憶はきちんと保持したままでいたいですわ。まだ……まだ……私はやりたいことが……たくさん残っているんですもの……」
第一王女という身分ではできなかったこと……城下を駆け回りたい。友達を作りたい……そして、恋愛がしたい。
その心を読み取ったように眼前の殿方は言います。
「では、記憶を保持したまま……あなたを平民の女性に転生させます。よろしいですね?」
「はい、お願い致します」
生前に妹だったレティシエが私の最期に浴びせた冷酷な声……あれとは対称的な明るい優しげな声で彼は答えます。
「……かしこまりました。次こそ、あなたに幸せな人生が訪れることをこの場で切に願っております」
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