1話
新作です。
私はツヴァルト王国の第一王女です。
唐突ですが、私は現在……階段から転落しそうになっています。
このままだと、死ぬでしょうね。
誰かに押された気がするのですが……あまり気にしないでおきましょう。誰かのことを恨んで死ぬなんて悲しいですもの。
「お姉様、ご無事ですか!?」
あ……レティシエですか。
階段から落ちた私に急いで駆け寄ってきたのは私の妹であり第二王女のレティシエ。
もう、遅いですよ。私は……
……あれ、ちょっと待ってください。
「ふひっ」
無自覚でしょうね。嘲笑うかのような彼女のその笑みを一瞬見て、私は絶望しました。
もしかして、貴女が私を突き落としたのですか?
声など出す暇はなく、私の頭は地面に勢いよく打ちつけられました。
強打した頭より大量の血が流れ、若葉のようだった美しい緑色の絨毯を紅く染め上げます。
……ああ、この絨毯……好きだったのに。
私の瞳から涙がこぼれ落ち、紅く染まった絨毯に小さな水溜まりを生み出します。
瞳から、色が抜け落ちていくのが自分でもわかりました。それは絶望によるもの……
「お姉様、最期に言いたいことがありますの」
横たわる私の横にレティシエが顔を寄せます。
「もう、お察しかとは思いますが、貴女のことを突き落としたのは私です」
ああ、やはり……
「お父様とお母様の寵愛を独り占めしようとするんですもの。それが私、とても辛くて……だから、突き落としました」
独り占め……ああ、なるほど。そういうことだったんですね。
「あ、早く伝えないといけませんね。えっと……では、一言。私のために死んでくださり、どうもありがとうございます。貴女のおかげでお父様とお母様は私を愛してくれるようになるはず」
一言……というには長いのでは……?
「では、お姉様。安らかにお眠りください。貴女のことは一週間ぐらいは覚えておきますよ。では」
何も気にしない……そう在ろうとしたのですが、その言葉はあまりに私の心が傷つく言葉でした。
私はお父様とお母様を独り占めにしようとなんて……
その言葉が口から出ることはなく、私の命の火は静かに……ただただ虚しく消えていってしまうのでした。
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