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Bluetooth

作者: 羽生河四ノ

家のWi-Fiが使えなくなった。壊れたというか。

「ええー!」

もはや私なんかは重篤なネット生命体であり、なろうはまあ・・・たまにしか来ないけども、でもほぼ毎日のようにあっちこっちで大してドラマチックじゃない事を書いて「いひひ」って投下している身としては大変な事態であった。


ネットが使えないなんてもう死ぬ!


っていう感じ。恥ずかしながら。大変に恥ずかしながら。でももう言ってみたら厨二病やらJKやらが、持ってるスマホ月末近くなって使用量が残り1ギガですけど?ってメール来たみたいなもん。その時の動揺。狼狽。不安感。ソシャゲのやりすぎで親との仲も悪くて普段はうるせえなって漢字なんだけども、こんな時ばかりは、

「1ギガ追加してよお」

って言う感じ。


有り体に言えば四の五の言ってられない。うだうだ言っていられない。グダグダ抜かしている場合じゃない。


ネットにつながらないと大変だ。本当に大変だ。


「あばば」

口から泡を吹きながらNTTのモデムとWi-Fiの機器をオンオフした。


パソコンが使えない。あばばば。スマホで調べて、そんで調べながらモデムとWi-Fiの所に座り込んでオンオフした。


まずオンオフしましょう。みたいなこと書いてたし。『Wi-Fi ネット繋がらない』ってGoogleに入れたらまずそういうのが出てきたし。だからとにかくオンオフした。


普段つけっぱなしのモデムとWi-Fi機器である。でもこういう時だけ興味が向かう。普段見向きもしないのに。繋がって当たり前のネットなのに。そういう自分がなんというか、ちょっとあれだった。気持ち悪いというか。

「どしたのお?」

ってなる感じ。普段興味ないくせに。こんな時だけ気持ち悪。


モデムとWi-Fi機器、何度もオンオフした。しかし領海外で拿捕されておそロ●アになって連絡が付かなくなった親族の様に一向にどうにもならない。症状は改善しなかった。ネットには繋がらなかった。ちょっと待って、時間をおいて再起動しましょうっていうのもあった。その時のちょっと、一時間とか?そういう時間を待つ間。


その間の不安感!


不安感たるや!


それはもうネット生物からしてみるとそれはもう。


「・・・」

泡を吹いてフローリングの床に倒れた状態で待った。一時間。その間色々な事を考えた。パソコンとモデムのこの間を有線でつなぐか?とか、新しいWi-Fi機を自転車でヤマダ電機まで買いに行くか?とか、ドコモのスマホの容量をこないだ30ギガにしたからまあ最悪それで当面は何とかなるだろうけども、そうなると30ギガで足りるのかな?とか。そういうの。お金かかる!とか死ぬ!とかそういうの。もう死のうかな。とかそういうの。


そういうのが走馬灯みたいに、フェナキスティスコープを見るみたいにグルグルと頭の中に回った。


普段考えない事も考えたりした。

「自分の体の一部が動かなくなったらこういう感じなのかな?」とか、そういうの。極端だから私って。メンタルも脆弱だし。ネットにつながらないだけでこのざま。でも仕方ない。「息吸えなくなったらこういう感じなんじゃないの?」みたいな思考なんだ。すぐこうなる。極端だから私って。だからこのざまよ。ネット繋がらなくなったらすぐこのざまよ。


そうして長い一時間がようやく経過した。スマホでアラームかけて一時間計ってた。その間に口の周りに付着していた泡はもう乾いてパリパリになっていた。


「・・・頼む」

モデムとWi-Fi機を再起動した。ネットにはつながらなかった。


「ちきゅ、ちう、ちゅ、畜生!」

私だって何度かのリロードの後、こうしてちゃんと畜生って言える。何度か噛んだけども。でも言える。それなのにお前等あ!おのれらあ!


ネットにつながらない。住んでる地域の障害情報みたいなのも調べた。特に出てない。


「あ」

でも、そこでふと気が付いた。モデムの方のランプがついてない。下二つ。いつもついてると思う。ついるよねここ。記憶を探る。いつもは確かついてたよね?必死に記憶を探る。探った。


「うひょー!ネット!Wi-Fiうひょー!」

初めてネット環境を手に入れた、Wi-Fi環境を手に入れたあの当時の記憶ではついてる。ついてた。ここ、この三つがついてるのが正常な状態なんだな。そう思った。その時はその環境が自分にもたらされたことがうれしく、モデムにもWi-Fi機にも興味が尽きず、私もまだ純粋だったかもしれない。

「おほー!すげー!」

ってなってた。


今となっては戻れぬ過去の話だ。


その後NTTorドコモに行った。ドコモのアプリからIDとパスワード入れてインフォメーションセンターからドコモ光の方に行って故障の旨を伝えてロボットとチャットみたいな事をして受付番号を貰ってNTTからの連絡を待って連絡来て症状の旨を伝えてCOPのやつを伝えてそんで新しいモデム来るっていう事になった。


「はあー」

NTTさんとの通話を終え電話を切ってそんでそれから少ししてようやくほっとした。よかった。何とかなったみたい。現状は何ともならないが、明日明後日にでもなんとかなるみたい。何とかなりそうだ。うん。よかった。今日明日くらいは別にドコモのネットワークでも大丈夫だろう。まあ、二日くらいは全然。


その後ふと、

「いや、こういう時はあれじゃないか?こういう体験も滅多にないしコーヒーショップとかに行ってそこでやるとかしたらいいんじゃないか?」

という思考が降ってわいた。


ほら、ス●バとかにいるじゃん。ノーパソ持ってなんかやってる人。正面の通りに向かってノーパソのロゴを、林檎のマークをさ、見せつけるようにしてなんかやってる人。


いるじゃん。


ああいう自分かっこいい。●タバという場所でこうやって林檎で仕事してる感じがかっこいい自分かっこいい。みたいなの。ああいうのやったらいいんじゃん?って思った。


せっかくだし。せっかくのこういう体験時だし。それアメブロに書けるじゃんって。アメブロとかに書けばいいじゃんって。


アメブロとかで自己紹介のプロフィール写真とかをヘッダー画像とかを腕組んでカメラ目線で出来る感じに見せてる人達がやってそうな感じのやつ。


まあ、さすがにノーパソ広げてなんちゃらかんちゃらみたいな、山手線沿線駅前スタ●みたいな事は出来ないけども。でもスマホでさ。今日のアメブロはス●バで考えてました。っていうのくらいはさ。大丈夫でしょう。


という訳で、●タバは敷居が高くて怖いし恥ずかしいし等々で入ったことないのでタリーズに行った。スタ●にはまだ行けないけども、タリーズにはなんとか入ることが出来るようになった。ちょっと進歩したと言っていいと思う。


そんで甘い、甘汁コーヒーをトールで注文して、周りに誰も人がいないところの席に座ってそれからスマホとBluetoothのイヤフォンをテーブルの上に広げた。


ほらBluetoothのイヤフォンで音楽聞きながらちょっとさ。そう言うのいいでしょ?10代とか20代とか拗れた30代とかみたいでしょう?


「あれ?」

しかし、Bluetoothのイヤフォンは一向につながらなかった。何度ペアリング相手を探しても一向に見つからない。何?どういう事?


壊れてた。Bluetoothのイヤフォン壊れてた。点滅がおかしかった。なんかどっかでなんかした?え?でもとにかく。とにかく壊れてた。Bluetoothのイヤフォン壊れてた。NTTのモデムに続き、Bluetoothまでも。お前もか。お前もかー。


「ブルータスお前もか?」

Bluetoothだけに。


勿論公共の場だし大声じゃなったよ。独り言で小声でぼそぼそとしてて聞き取りずらい私の声だ。


ただでも、言ってから後悔した。


凄く後悔した。


本当に後悔した。


ぶわぁっと汗腺が開いた感じがして、おでこのあたりにべとべとした汗が出てきた。


あと周りをきょろきょろと見回した。


誰か聞いてなかったかと思って。


今の。


聞かれてたら殺すしかないと思って。



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