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スポーツ大会

  10月も半ばになって、しかしまだ気温

 は下がらず、肌の強い者は半袖で過ごす。

 

 彼らは、大きめのレンタカーを借りて南へ、

 テキサス州へ向かっていた。ノブヒデ・

 ヤマダが運転し、ノブツナ・ヤマダが助手席

 に座る。

 

 2列目に、サラ・レッドフィールドとコーネ

 リアス・マクマホン、三列目にガリレオ・

 ムーアとケノービ・ミントが座る。

 

 ダラスから少し西へ行ったところにある

 スタジアムで、彼らが最近よくプレイする

 ゲーム、リーグオブミソロジーの世界大会

 が行われており、それを観に行くのだ。

 

 車内では意外にもゲームの話ではなく、他の

 話題がなされていた。

 

「ヤマト人はね、お風呂にお湯を溜めて入る

 のよ」

 サラは毎晩ヤマト人の生活のことを聞きたが

 った。ヤマト国に興味がある、というより

 自分とは違う世界のことを知りたいようだ。

 

「へえ、ジャグジーとは贅沢だね」

 コーネリアスの言葉に、

「ジャグジーとは少し違うのよ」

 サラも同じコメントをノブツナとノブヒデに

 したようだ。

 

「こっちの家でもやってるのそれ?」

 3列目からガリレオが聞いてくる。

 もちろん、と助手席のノブツナが答える。

 

「ただ、お風呂の構造が根本的に違うんだよな。

 なんというか、説明が難しいけど、お湯を

 流す場所がヤマト国の風呂にはあって、こっ

 ちの風呂には無い」

 

 洗髪したり体を洗うと、お湯が汚れてしまう、

 という欠点がこの国の風呂にはあった。

 

「他にもね、家の中では靴をサンダルに履き

 かえるのよ」

 ノブツナもノブヒデも、家の中では靴から

 サンダルに履き替える。

 

 ヤマト国では畳というマットを使うが、畳の

 場合はサンダルも履かない、という話も

 ノブツナが付け足す。

 

  お昼過ぎにミッドウエスト市を出て、3時

 間ほどで大会会場に着いた。

 

 開始まではあと1時間ほどある。それにして

 も、巨大なスタジアムだ。ふだんは、プロの

 フットボールの試合などに使用されている

 ようだ。

 

 車を停めて、6人で大会会場へ向かうと、

 知った顔が3人、お互い挨拶する。

 

「いつ着いたの?」

「さっき空港に着いてそのまま車でこっちに」

 

 ノブツナとノブヒデの妹、ミナ・ヤマダ、

 セツナ・ムナ、タツトラ・ウシジマだ。

 大会観戦と観光を兼ねて飛行機でわざわざ

 ヤマト国からやってきたのだ。

 

「他の連中も連れてくれば良かったのに」

「往復ウン十万だからね、さすがに……」

 

 ハイスクールの生徒たちにも紹介して、

 皆で会場入りする。

 

「今日は終わったらどうするの?」

「夜はダウンタウンまで行って3人で泊まっ

 て、明日はダラス観光」

「そして、明後日にこっちまで来ると」

 そう、と答えるミナ。ついでにオクラホマ

 まで観光に来るのだ。

 

「あ、まだ時間あるんで楽屋見に行きます?」

 携帯端末を操作していたセツナの言葉だ。

 

 今回、ヤマト国のチームが準々決勝まで進み、

 その観戦チケットが取れたのだ。セツナは、

 たまたまその選手のひとりと昔から知り合い

 で、試合前に会えるという。

 

 楽屋近くまで行くと、その選手が外で待って

 いてくれた。ゲーム内の名前でいうと、ユト

 リセダイ選手、ポジションはボットレーンの

 キャリーだ。

 

「お、未来のスーパースター!」

 セツナを見てユトリセダイ選手が言っている。

 どうやら、セツナのバンド活動を知っていて、

 それをからかっているようだ。

 

 ハイスクールの皆も、出身国は違うがプロの

 選手を間近に見て少し興奮ぎみだ。それぞれ

 握手する。

 

「調子どう?」

「うーん、悪くはないんだけど、相手が相手

 だけにね」

 今日の彼の相手は、優勝候補だ。ヤマト国の

 レベルもだいぶ上がってきたが、まだ勝つ

 には遠い相手だ。

 

 調整もあるだろうからと、セツナが切り上げ

 ようとしたとき、ユトリセダイが呼び止める。

「あの連れの女の子、プレイするのかな?」

 

 サラのことが少し気になったようだ。僕と同

 じ匂いがする、とだけ言い残し戻っていった。

 

  ノブツナたちとミナの3人は席が少し離れ

 ているので、そこでいったん別れる。

 

 別れ際、ウシジマにノブツナが小声で、

「ダラスも楽しめそうですか」

 と尋ねるが、一瞬ニヤリとして、今回は難し

 そうです、と小声で返すウシジマ。

 

 飲み物と食べ物を買って、観戦の体勢を

 整える。

 

 これから行われる試合は、5戦して先に

 3勝したほうの勝ち。どちらかが3勝した

 時点で終わる。それもあって、今日は

 日帰りだ。

 

 試合は夕方5時に開始、試合時間はだいたい

 30分ほどで、1時間間隔で行うため、

 5試合目までいった場合は終了は夜9時半

 ごろの終了となる。そこから帰ると、

 ミッドウエスト市到着は深夜を少しまわる。

 

 選手が対戦フロアに入って来た。

 

 紹介が始まる。ヤマト国の選手たちは、

 半ば諦めているのか、開きなおっているのか、

 リラックスしているように見える。

 

 そして、バンピックフェーズが始まった。

 

  このゲームは、世界で約2億人以上がプレ

 イする、あらゆるジャンルのゲームを含めて

 も世界で最もプレイ人口の多いゲームだ。

 

 そして最近は、この手のゲームがスポーツに

 位置づけされている。確かに、一般のスポー

 ツという概念から少し外れているようにも見

 えるが、一応体を鍛えるとパフォーマンスも

 向上することが分かっている。

 

 内容は、5対5の対戦型。初心者向けに

 弱く設定された人工知能とも対戦できる。

 

 そして、基本無料。いわゆるペイトゥー

 ウィン型のゲーム、つまりお金を掛けるほど

 強くなるゲームと異なり、スタート時点で

 誰もがレベル1から開始となる。

 

 ヒーローの見た目を変えるスキンと呼ばれる

 ものがあり、ものによって少し値段が張る。

 

 ヒーローは108体あり、36体づつ3つの

 種族に分けられている。悪魔、人間、神仙の

 3種族だ。

 

 悪魔のグループは瞬間火力に優れ、神仙の

 グループは防御、人間のグループは継続火力

 に秀でている。

 

 また、悪魔グループは一人で行動したときに

 攻撃ボーナスを持ち、かつ序盤が強い。神仙

 は複数でいる場合にボーナスがあり、終盤に

 強い。人間族は平均的能力で中盤が得意だ。

 

 登場するヒーローは、ひとつの常在型能力、

 3つの通常スキル、ひとつの必殺技を持つ。

 

 各種族のヒーローは、6つのカテゴリーに分

 かれている。アサシン、ファイター、メイジ、

 マークスマン、ヒーラー、タンクだ。

 

 種族36体中、6体づつ各カテゴリーのヒー

 ローがいることになる。そのカテゴリー6体

 には、操作難易度でランクが付けられている。

 

 強さのランクではなく、操作難易度で、どの

 ヒーローもゲーム内で最強になり得る。

 ヒーローはレベル1からスタートし、最大

 レベルは18だ。

 

 種族間の相性は比較的微差で、カテゴリー間

 の相性のほうが影響が大きい。最終的に、

 108体のヒーロー同士の相性を意識する

 必要があり、状況は複雑だ。

 

  この、多数のヒーローを種族に分け、さら

 にカテゴリーに分け、そして操作難易度で

 ランク付けすることには意味がある。

 

 それは、ヒーローを固有の名前ではなく、

 例えば神仙グループのファイターの2番目、

 という特定の仕方が出来るようになる。

 

 そうすると、ゲーム内でのデフォルトでは、

 セイテンタイというヒーローになるのだが、

 スキルはそのままで、全然別のヒーローを

 設定できる。

 

 登場ヒーローをマトリクス化することによ

 り、あるヒーローのスキルセットは好きな

 のだが、見た目が気に入らないから使い

 たくない、ということが、起こり難くなる。

 

 そして、特筆すべきは、大会賞金。優勝すれ

 ば、おそらく選手ひとりあたり、ヤマト国の

 通貨でいうと数億円、が手に入る。

 

 選手たちのモチベーションは、当然高い。

 そして、ヤマト国のチームが、バンピック

 フェーズでいわゆるポケットピックを

 見せてきた。

 

 言い換えれば、シークレットウェポンだ。

 あっさり負けるよりは、少しは楽しませて

 くれそうな予感だった。

 

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