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遺伝子分布論ZERO  作者: 黒龍院如水
不思議
2/80

閲覧と注意

  陰謀論の世界へようこそ。

 

 一応、本書では、初めて陰謀論に触れられる

 方のためにも、準備運動的な内容から始める

 つもりだ。

 

 かと言って、陰謀論の入門書的な内容という

 わけでもない。後半へいくほどゴリゴリの

 内容になっていく、といったところを注意

 されたい。

 

 ではまず、背伸びをして全身のストレッチを

 充分に行ったところで、4人の学生が集まる

 ファミリーレストランの場面から行こう。

 

 

  梅雨入りした6月の小雨の木曜日。

 

  ファミリーレストラン、バーバリアン。

 安い、早い、旨い中華風。ここ最近、日本

 全国に店舗を広げている。

 

 大学の最寄りのパインモト駅近くのレスト

 ランは優等生達に占領されているということ

 もあり、彼らの実家に近い南パインモト駅

 近くのレストランに4人で集まっている。

 

 中華風といいつつ、彼らがいるのは和風の

 座敷席で、席を区切る丈夫な背もたれが

 柔らかい合皮素材、店の少しいい加減な

 雰囲気もあって居心地よかった。

 

 午後4時を少しまわった。

 

 「その人のダンナがさあ、エーブイがひどい

 らしくて、特に酒を飲んだときとかけっこう

 アザになるぐらい、ってエーブイがひどい

 エーブイがひどい言ってんの」

「最初何の話かと思ってたけど、途中で気づい

 て、これは絶対突っ込まないでおこう、

 って思ったわけ」

 

「ふんふん」

「で、そのエーブイの話がしばらく続いてた

 けど、我慢して聞き流してたわけ」

「そしたら、ふいにエーブイだったら何バイオ

 レンスになるのかな、って凄い気になってき

 て、それで笑いそうなって必死に耐えてた」

 

「そこで笑うと不自然だもんな」

 

 ピンクの肩あたりまでのボブを首近くで

 ツインテールにした、リンゴ・ナナイシ。

 今日はアメリカンカジュアルな格好。

 紺のジャンパーは店内で脱いでおり、よく

 わからない地獄柄の黒の長袖ティーシャツ。

 

 本人いわく裏原宿系、なのだが全てイマムラ

 でそろえている。身長149センチ、体重は

 秘密だが、そんなに太く見えないのは理由が

 ある。血液型はオー型。

 

 リンゴのエーブイの話に相槌を打っていたの

 は、その向かいに座る、テツヤ・ミマタ。

 ストレートの長髪だが、オシャレとは少し

 違う、どことなく前時代の香り。

 

 173センチ、68キロ、A型

 

 裾の広がったジーンズ、白地に黒の

 アルファベットの文字がたくさん書かれた

 半袖ティーシャツ、6月のこの時期に本人は

 全く問題ないと言いはるが、外だと鳥肌が

 しっかり立っている。

 

 その裾の広がったジーパンにサスペンダーで

 シャツはイン。白のデッキシューズを素足

 で履く。今日は頭にバンダナを巻いていない。

 

「私だったらぜったいそういうの許さないかも」

 

 テツヤの隣で、背もたれにもたれ、数分眠っ

 ていたかに見えた女性が急に会話に入り出す。

 寝起きの低い咳をして水を飲む。

 

「いや、ミナに手を出そうというやつがまず

 そういないだろ」

 

 というテツヤの返しに対して、私のことを

 よく知っている人間ならね、と続けるのは、

 ミナ・ヤマダ。

 

 緑がかった青のジャージはオーバーアーマー

 のいい値段がするやつで、豚がデザイン

 されたレザーパッチのジーンズを履いている。

 

 身長158センチ、体重90キロ。

 

 いわゆる、激ポチャに分類される体型なの

 かもしれないが、小顔の美人だ。長い髪を

 アップにまとめている。B型。

 

 特筆すべきはその衣類に隠れた鍛え上げられ

 た筋肉で、ただの太目の女性ではない。

 

 南パインモト駅の東にある豪農の家に生まれ

 たミナ・ヤマダは、幼いころからピアノだけ

 でなく、武芸十八般の習熟に時間を捧げて

 いた。

 

 それだけでなく、洋の東西問わず様々な

 家庭料理を作ることができ、家事、雑用も

 こなす。その上での学業であるため、寝る

 時間は貴重だ。

 

「前にさ、学校でたまたまだろうけど、コウ

 とぶつかって、コウ吹っ飛んでただろ」

「おれ、そういうの慣れてるから……」

 

 テツヤの言葉にそう弱々しく返すのは、

 リンゴの隣に座るコウ・サナミ。

 

 彼を一言で表すとすれば、モッサリ感、だ。

 チノパンに白のシャツ、グレーのカーディ

 ガンに悪いところはなく、それでも充分に

 モッサリ感を出せるのは彼の才能だ。

 特に髪型がそういう印象を強めている。

 

 身長165センチ、体重66キロ、オー型。

 

 隣に座るリンゴ・ナナイシとは、この春から

 付き合っている。その経緯は長くなるが、

 コウが毎日プロレスの技をリンゴに掛けられ

 ることに不平を言ったのがきっかけだった。

 

  彼らは雑談をしながらも、それぞれ大学の

 課題を片づけている。飲み放題のドリンクと、

 おやつのフレンチフライなどをつまみながら、

 数時間居座るが、店のほうは忙しい時間以外

 なら気にしないようだ。

 

 彼らがどのような経緯で4人で集まるように

 なったのか。

 

 まず、リンゴが中学生になった時、コウが

 近所に引っ越してきた。そこでリンゴは

 同じ学年のコウを巻き込んで軽音楽部に入る。

 

 軽音楽部に入りつつ、2人のユニット、その

 名をモストデンジャラスコンビ、を結成する。

 リンゴがベースギター、コウがギター。

 

 高校に入って、同じく軽音楽部でテツヤと

 出会う。他にも部員はいたが、気の合う

 3人で、モストデンジャラストリオとなる。

 テツヤはドラムス。

 

 3人は大学に入ってすぐ、ヴォーカリスト

 を募集した。そこで見つけたのが、浪人して

 大学に入って来たミナ。そこで、グループ名

 をビッグザマウンテンと変えた。モスト

 デンジャラスカルテットと迷ったうえで。

 

 彼らを結びつけたのは、音楽の趣味は元より、

 漫画、アニメ、コンピューターゲーム、小説、

 などの趣味が合った。合った、というよりは、

 微妙にずれていて、お互い刺激し合う、と

 いったほうが正しいかもしれない。

 

 そして、例えばこの音楽活動で将来やって

 いこう、などとは彼らは全く思っていない。

 完全に趣味の範疇だった。

 

 しかし、この彼らの趣味により、まったく

 思ってもいない展開に巻き込まれていくが、

 それはまた後の話である。

 

 「テツヤはまだフォーエバーファンタジー

 16やってんの?」

 ミナの問いかけにテツヤがもちろんと答える。

 

「シーズンパス買ったし、ダウンロードコン

 テンツももちろん買う」

「15で死んだと言われていただけに、16

 が出たこと自体が誉められるべきかもしれな

 いけれど、なんで今回もカスタマーレビュー

 で星1が多いのかのう」とミナ。

 

「大方の予想に反して、前作と同じようなホス

 ト風、男4人組というパーティ構成……」

 あんたちなみに星何付けたの、の問いに、

 中空を見つめ、星5と汗をかきながら答える

 テツヤ。目が泳ぐ。

 

「間違いなく俺の期待は星5だった……」

 レビューというのは期待値を付けるものなの

 か、の問いに答えずに、

 

「おい、おまえら、店内でいちゃつくのは

 やめろ! このバカチンが!」

 勉強に飽きてコウに前三角締めを極めていた

 リンゴに注意することで話を逸らす。

 

  午後6時近くなり、解散することとなった。

 この時間から店は少しづつ混んでくる。混ん

 で来ると、この店のホールスタッフのワン

 さんなどが注意しにくる。

 

 むしろそうやって言ってきてくれるほうが、

 変に気を使わなくてよかった。しかも、試験

 前などは事情を話せば少々混んでいても席に

 居座ることを許してくれるのだ。

 

 さすが科挙の国出身だけある。

 

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