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霊石の因縁

朝日と陽和は、事の顛末を雪花に話した。すると雪花は何か心当たりがあるらしく、二人にこんな事を話した。

「実はね、昔私は呪われそうになったの」

「えっ…?」

「それでね、誰かに助けてもらって…、その時に光る石を身体に入れられたんだ」

二人は向かい合って、頷いた。

「やっぱり…、誰かに霊晶石を入れられたんだ」

「それがどんな人か覚えてないのか?」

雪花は首を振った。

「ううん、小さい頃の話だったから…、覚えてない」

「そっか…」

家が近づいてきたので、雪花は帰ってしまった。

「霊晶石って私達の力で抜けないのかな?」

「体内にあるんだろ?俺達はそこまで干渉出来る力はない」


二人が家に帰ると、杏が迎えてくれた。

「お帰り二人共、お客さんが来てるよ」

「えっ、誰だろ…」

靴を脱いで中に入ると、そこには黒髪黒目で黒いパーカーを着た男性と、楊梅色(やまももいろ)の髪の毛に灰色がかった黒目で黄緑のワンピースを着た女性、鳶色(とびいろ)の髪の毛と目をした年を重ねた男性が、ソファに座っていた。

二人は思わず驚いた。何故ならそれは自分達が生まれたばかりの写真に映っていた人物だったからだ。

「久し振りだね!覚えてる訳ないけど…」

「あの、あなた達は?」

「私は風見真莉奈、いや〜、ずっと会いたかったよ!」

「俺は風見桜弥、お前たちのお祖父さんだ」

「と言うと…、真莉奈さんがお祖母ちゃんなの?全然年取ってないように見える…」

「まぁ、私は死神だからね!厳密には人間との間の子なんだけど…」

陽和は桜弥の方を見た。 

「というと…、お祖父ちゃんの方が陰陽師なの?」 

「そうだな、陽和が陰陽師の力、朝日が死神の力を持ったのか」 

「まぁ、そうだな!」

黒髪の男性が二人を懐かしそうな目で見つめていた。

「確かに…、陽和は梨乃さんによく似てるな、朝日は俺似か?昴とおんなじ目つきをしてるな…」

「あの、あなたは…」

「俺は剣崎智、死神だ」 

「智さんって…、私達の曾祖父さん?!」

「まぁ、そうなるな」

「あの…、この前フィクマさんに会って、曾祖父ちゃんの事を言ってたんだ…、結局会えたのか?」

「ああ、なんか物凄く感謝してた、俺は全然大した事してないのにな…」

陽和は目を輝かせた。

「やっぱり…、格好いいな!」

「えっ…、俺が?」

「うん!」

すると智は赤面した。

「あ、あんまり言うなよ…」

「もう、お父さん、しっかりしてよ…」

一同は笑っていた。

「実はな、俺達がこうして集まったのはただ二人と再会する為だけじゃないんだ」

「どういう事?」

智が話を繰り出した。

「お前たちの友達に雪花っていう子が居るだろ?その子は霊晶石を埋められた事によって怪、特に獄炎の輩に命を狙われてる。昴には一応伝えたんだが、その霊晶石を埋めるのは、妖術、妖がやったと思ってるんだ」

「妖が?」

「呪禁っていう技がある。そのやり方の一つに霊晶石を使うものがあるんだ。それが出来そうな妖を俺は一人知っている。」

「それは…」

「あれは、玲奈が死んだ後、それでも十年は経ってないくらいの話だったっけな、冥府の依頼である妖を訪ねに行ったんだ」



智は冥府の役人に呼ばれ、王宮へ向かった。

「昴じゃなくて冥府が俺に用ですか?」

冥府の役人であり、死神の中でも古株であるジクが紙を手渡した。

「はい…、なんでも智様にどうしても依頼したいとの事…、お願いしますよ?」

その紙には柳の森と、そこに棲む妖の情報が書かれていた。

「長年人々を呪い殺していた妖か…、しかし、どうして俺に?呪術系ならもう少し他の人脈もあったのでは?」

「智様の説得なら、きっとあの妖も耳を貸してくれるでしょう。あの妖には長年手を焼いていました、風見の陰陽師も戦ったと言われておりますが、その結果、風見本家は根絶やしにされてしまい…。」 

「風見本家が?!どれだけ強いんだ?」

「…お願いしますよ?」

智は頷き、現世に降りると、柳の森へ歩いて行った。



時刻は夜だった。麓には寂れた村があり、一人の老人が座っていた。

「あの、柳の森ってどの方角にあるんですか?」

老人は東の方角を指さした。

「ああ…、あっちだが…、お前さん若いのに命知らずだなぁ…、ここを訪れて戻ってきた人は居ない」

「えっ…?」

「しかも…、あの森の妖に人々は皆呪われ…、今じゃわし一人じゃ…」

「そんな事が…」 

老人は真剣な眼差しで智の方を向いた。

「お前さん、本当に向かうのかね?」

智は頷いた。

「そうか…、わしはお前さんを止めはしない、ただ…、早まるな」

「はい…」

智は老人に別れを告げ、柳の森に入った。


中は薄暗く、雲行きが怪しくなっていく。霧もかかり、智は魂のランタンを灯しながら進んで行った。何処かから何かを打ち込む音が聞こえ、それ以外は静まり返っている。

「ここに妖が居るんだよなぁ…」

森は深く、智は更に奥地へと向かっていった。

今まで鬱蒼としていた森が突然開けた。目の前には朽ち果てた神社がある。あらゆる所が汚れているので、看板や石碑は読めず、絵馬の文字も滲んでいた。


更に進むと、今まで柳だった森に一つだけ、欅の木があった。それはどうやら御神木らしく、しめ縄の跡がある。ただ、それ以上に気になるのは…、そこには釘が打ち付けられた跡が幾つも残ってるという事だ。

「これはまさか…、丑の刻参り?!」

すると、不穏な風が吹いたと思うと、空は一気に暗くなり、森の烏は一斉に飛び立った。

「あっ…!」

何処からか、下駄が鳴る音が聞こえる。

「…お前…、何故ここが分かった?」

怨念が込められた声が何処からか聞こえるが、どの方角を向いても誰も居ない。

「まさか…、お前が妖か?」 

すると、目の前の御神木から妖気が発せられ、一つの藁人形が刺さられてたと思うと、おびただしい量の藁人形が現れた。

「さっきの藁人形…、それがお前だよ」

声はすぐ近くで発せられた。

「妖め…、何処に居るんだ?」

「お前のすぐ後だよ」

気配を感じて振り向くと、すぐ側に妖が立っていた。黒い髪は右目が隠れ、左目にも掛かっている。見える目は緑色だった。服装は白装束で、高い下駄を履き、頭には五徳と蝋燭を被っている。その姿はまるで、丑の刻参りの服装だった。

「お前を先に呪ってたんだ、ただ…、お前は一発じゃ死なない相手だったな?」

智は胸に異常を覚えた。

妖は刀を取り出すと、智に一発斬りかかった。

「あっ…!」

智はとっさに鎌を取り出して、刀を弾いた。

「鎌か…、さては死神だな?僕を殺しにきたのか?」

刀には妖気が充満している。

「『妖刀の祟』!」 

「『吸血の鎌』!」

二人の武器はかち合っていたが、妖の方が押していた。

「お前はここに足を踏み入れた…、だからお前をここで殺し、末代まで呪ってやる!」

妖は智を弾くと刀で突き刺し、身動きをとれなくした。

「僕を退治しようとしたあの風見とかいう陰陽師もこうして死んだよ…、お前の事を、憎んでやる、恨んでやる、祟ってやる、そしてこの場で呪い殺してやる!」

妖はそう言って藁人形を取り出した。

「人を呪わば穴二つ…、僕は相手を呪い、自分を呪う…。僕の名は時雨(しぐれ)だよ、まぁ…、覚えた所でお前はここで死ぬんだが?」

時雨が藁人形を握り締めると血が滴り、智の胸が締め付けられた。

「兄共もこうして死んだね、懐かしいよ」

そして時雨は智の腹の上に乗り、胸に五寸釘を打ち込んだ。

「恨むなら僕じゃなくて自分を恨む事だね?僕はただここに居座ってるだけさ、それなのにお前はそこに踏み入れてしまった、だからこうしてるだけだよ」

「くっ…!」

時雨は赤く見開いた右目を智に向けた。

「さて…、これでとどめだよ」

そして五寸釘を完全に打ち込んでしまった。智の身体に妖気が充満している。

「あっ…!」

「これでお前も終わりだな?」

だが、智の口は笑っていた。

「…なるほどな、こうやって人々を呪い殺してたのか」

「何?!」

「『未練の鎖』」

智は立ち上がると五寸釘を抜き、呪いを黒い鎖として具現化すると、一気に断ち切った。

「最初からこっちがとどめを刺すことだって出来た、だが、様子を見てたんだよ。お前を裁く為にな?」

時雨の顔が一気に険しくなった。

「お前…、よくも、よくも…!」

時雨は刀を再び取り出すと、斬りかかって来る。

智は目を紫色に光らせると、『死神の書』を取り出した。

「裁きの炎で焼き尽くす!『審判の炎』!」

すると時雨は紫色の炎で焼かれ、その場に跪いた。

「俺は剣崎智、火の死神だ!」

「これが…、報いか…」

炎は消え、時雨の蝋燭の火も消えた。森には雨が降っている。


時雨は御神木に寄りかかると、啜り泣いていた。

「泣くなよ?風邪ひくぞ?」

智は自分のパーカーを時雨に掛けた。

「妖だから…風邪なんか…!へくしっ」

「ほら、やっぱり…」

智は時雨に寄り添い、そっと温めた。

「なぁ、どうしてこんな事をしていたんだ?」

時雨はぽつりぽつりと話をしだした。

「昔、僕は姫として育てられた。僕の一族はこの地を治める武士の一家で、僕は二人の兄を持って産まれてきた。僕は剣術に関しては誰にも負けないくらいに強かった、将来はそれを使って民を守るのが夢だった。それなのに…!父や兄達は僕を姫として育て、屋敷に籠もらせた。僕はそこから一歩も出されなかった。母は僕を産んだあとすぐに亡くなった。それはつまり…!僕は父と兄に!一族に!領地の民に見放され、捨てられたって事なんだろう?!だから…、僕は長かった髪の毛を切り、父と兄共を呪い殺した。そしてその呪いで自分も死んだはずだった。だけど死んでも死にきれず、僕は妖となり、その他の領地の民も殺していった。」

「そうだったのか…」

「恨みの力で僕は存在している。僕は神社を訪れ、人を呪う人々も利用した。その人の代わりに自分が呪い、呪おうとした相手も殺す事で、自分の糧にした。その結果神社は滅亡したがな。」

「あっ…」 

時雨は智の胸ぐらを掴んだ。

「だから…、お前をこの場で!」

「やめろ、虚しくなるだけだろ?」

智は目を紫色に光らせ、時雨を束縛した。

「くっ…」

「冥府に言われたんだ、時雨、お前の寿命はすぐそこまで来ている」

「なら、お前を呪って…!」 

「時雨、確かにさっき俺はお前を裁いた。ただ、死ぬ時にもう一度裁かれるはずだ。お前の罪は大きい、下手すれば魂は消滅し、二度と生まれ変われない」

「だからなんだ?!」

「それなら、少しでも罪を軽くしようと思わないか?殺した人々よりも少なくなるかもしれない。だけど、少しでもそれを埋める為に、誰かを救おうと思ってないか?」

「だから何だよ、僕なんか二度と生まれ変わられなくてもいいさ」

「お前の力を誰かの為に役立てようとは思ってないのか?」

「僕の、力が…?」

時雨は智の顔を見た。

「ただ、僕の力じゃ人を…」

智は時雨の肩に手を置いた。

「残された命を最後まで誰かの為に使う、それだけで充分さ」

時雨の蝋燭に再び火が灯った。

「あっ…」 

「それじゃあ、行こうか」

智は時雨に手を差し伸べると、一緒に森を抜けて行った。

そして、人里に入った所で智はこんな事を言った。

「ここから先は、大丈夫か?」

「でも、どうすれば人を…」

「自分の良心と、他人の心に耳を傾ければ、方法はきっと見つかる。後はその通りをすれば良いだけさ」

「智さん…、ありがとうございました」

時雨は一言そう言い、頭を下げるとそのまま消えるように去ってしまった。

長い夜が終わり、山里は明るくなっていく。智は朝焼けを見ながら冥界へと戻って行った。


「智様!」

ジクが智の姿を見ると、駆けてきた。

「ご無事だったのですね!」

「まぁ…、そうですね」

「しかし…、あの妖はどうされたのですか?」

「あぁ…、あいつなら大丈夫さ」

智はジクに向かって笑って見せた。



「そんな事があったんだ…」

「今、時雨は何をしてるんだ?」

智は首を振った。

「さぁ…、それからはよく知らない。上手いことやってくれると良いんだけどな」

智は立ち上がると桜弥と真莉奈に言った。

「俺達はそろそろ帰るとするよ」

「あっ、また会いましょうね!」

朝日と陽和はお辞儀をすると、三人を見送った。

そして、部屋の片付けをしていると、朝日がふとこんな事を呟いた。

「あの妖が、雪花に会ったのかな?」

「さぁ…、どうなんだろうね」

片付けを終わらせた二人は、自分達の部屋に入っていった。



それからまた翌日、朝日と陽和と雪花は、晃にまた手を焼いていた。

「昨日あった事の話をしよう、僕のペットのミミズが全部死んだんだ」

「あれ、ペットだったの?」

雪花は、晃が瓶に大量に集めていたミミズを思い浮かべた。

「餌を入れないと死んでしまうぜ?当たり前だろ?」

「だって、この子達何食べるか分からないから、ずっと土の中に居るだけじゃん…」

「じゃあせめて土と一緒に入れるとか…」

「それだと汚くなるから洗ってきれいな瓶に入れたのに…」

朝日はため息をついた。

「お前…、動物虐待も甚だしいな!」

晃は首を傾げた。

「だってどうすればいいか分からないから…」

「じゃあなんで私達に聞かなかったの?」

「僕は僕しか信じられないんだ」

そんな一言を言って十秒後、いつものように晃はこう言った。

「で、今まで何の話をしていたっけ?」

「お前のミミズの話だよ!」

朝日は頭を掻いて、そのまま晃を引き摺るように行ってしまった。

陽和と雪花は苦笑いを浮かべながら、それを見ていた。

「ねぇ、雪花ちゃんって昔妖に会った覚えはない?」

雪花は首を振った。

「分からない」

「そっか…」

学校が見えたので、四人はいつもの教室に入っていった。

陽和は雪花の事をずっと見ていた。最近気づいた事だが、陽和には雪花の中の霊晶石の気配が感じられるようになった。霊晶石はたまにぼんやりと光っている。

陽和は周囲の気配にも気を配っていた。雪花の今の状況なら、いつどこで怪に狙われるか分からないからだ。


帰り道、晃と別れた直後に怪が現れた。鷲のような姿をしており、鋭い眼差しは見たものを凍らせるほどだった。

怪は直ぐ様雪花を狙ってきた。

「『氷風輪舞』!」

陽和はとっさに氷の壁を造り、雪花を守った。

「あっ…」

「大丈夫、私達が居る」

だが、怪はそれを突き破ってしまった。

「危ない!」

朝日が鎌を振りかざしたのでなんとかそれに耐える事が出来た。

「こいつ、雑魚と思ったら中々強いぞ!」

「えっ?!」

怪は翼で風を起こし、三人を吹き飛ばした。

「うっ!」

「雪花ちゃん!大丈夫?!」

「陽和ちゃん…」

「調子に乗りやがって…『五行•「陽」』!」 

朝日は岩石を怪に衝突させたが、効果がない。

怪は風切り羽を利用して突風を巻き起こした。

「あっ…!」

「危ない!」

すると、怪に刀が突き刺さり、墜落した。

「えっ…?」

「大丈夫?」

現れた人物は苔色の着物に、灰色の袴を着、五徳と蝋燭を被っていた。

その人物は雪花に向かってこんな事を言った。

「懐かしいね、忘れてると思うけど」

「えっ…?」

「『妖呪炎』!」

その人物の手から緑色の鬼火が現れ、怪を瞬時に焼いていった。

「怪は僕の敵だからな、人間は引っ括めたがるんだけど」

怪は燃えながらもその人物を狙い、飛び掛かってくる。

「『積年の恨み』!」

その人物は刀を振り回し、怪を切り刻んで消滅させると、刀を仕舞い、雪花の方を向いた。

「僕の名前は時雨、妖なんだ」

「妖?」

雪刀の胸元がぼんやりと光った。

「僕は君を助ける為に霊晶石を体内に埋め込んだんだ」

「そうなんですか?」

「ああ、そうだよ」

朝日と陽和は驚いた。

「時雨って…、曾祖父さんの話に出て来てた?!」

「うん?君達は…」

時雨は二人の方を見た。

「俺は風見朝日、そっちは双子の姉ちゃんの陽和です」

「時雨さん、こんにちは」 

「曾祖父さん?あぁ…、確かに心なしか智さんに目元が似ているような…」

「俺達、さっきあなたの話を聞いたんですよ」

「それで、霊晶石を埋めれるのはあなたぐらいだって」

「そうだったのか…」

時雨は頷いた。

「呪いが解けたらこの霊晶石を外すんだ。妖は沢山居るけれど、強力な呪いを解けるのは僕ぐらいだって…、そういう人々を助けて回ってる。呪いをかけて殺した人数よりも少ないかもしれない、だけど、僕の力が少しでも役に立つのなら…、そうするよ。」 

時雨が雪花達と別れて、離れようとしたその時、突然目の前に紫色の鬼が現れた。

「妖の分際で…、余計な事をしてくれるな!」

「お前はこの前の至極か…!」

至極は雪花に目を向けると、霊晶石に紫色の邪気を送り込んだ。

「『鬼呪瘴』これが鬼族の呪いさ」

「あっ…!」

「『黒牛の呪』!」

「無駄だ」

時雨の呪術は、至極に直ぐ様吸収されてしまった。

「『黒紫炎』」

そして至極の炎で焼かれ、時雨はその場に倒れた。

「俺の呪いを解いたのはお前だったのか。しかも霊晶石まで持ってやがる、本当ならそれを全部奪ってやりたいんだがな、今日はこの辺で勘弁してやるよ」

「うっ…!」

至極は何処かに行ってしまった。

「時雨さん!」

時雨は苦しみながら、雪花の方を心配している。

「大丈夫…?」

陽和は霊水晶の数珠を巻き、御札に邪気を吸収させ、浄化した。

「無理しないで下さいね?」

「あぁ…」

時雨の蝋燭は消えかかっていた。

「あれ、妖力で燃えてるんだ。しかし、大分吸収されている…」

朝日は何を思ったのか、時雨の懐の中から巾着を取り出して中を開いた。すると、そこには霊晶石が幾つも入っていた。

「霊晶石…、一部は霊水晶や妖水晶になってるか…。」

朝日は妖水晶を取り出すと、時雨に握らせた。すると、水晶は時雨に吸収され、蝋燭の火が燃えだした。

「あっ…」

時雨は起き上がると、朝日の方を向いた。

「ありがとう…」

「大丈夫でしたか?」

「あぁ…、大丈夫さ。みんな、ありがとう…」

時雨は立ち上がると、三人に別れを告げ、何処かに行ってしまった。


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