再会、そして始まる
H県N市青波台、そこには双子の兄弟が居た。名前は風見朝日と風見陽和、陽和が姉で、朝日が弟だった。二人共活発で良い子だった。ところが、二人は父親の顔を知らずにそだったのだ。
母親が言うには、父親は忙しくて中々青波台に行けないという事、遠くで仕事をしているという事しか聞かされていない。だが、風見というのは父親の方の名字なので、離婚はしていない事で良いだろう。二人はそれに疑問を持ちながらも過ごしていた。
そんな二人も小学五年生になった。二人は仲が良い神野雪花と、色々と厄介事を抱えた問題児、塚本晃と過ごしていた。
「晃、お前大丈夫か?」
「え?なんの事?」
朝日はため息をついた。
「お前、十秒前に言った事忘れてんのかよ?」
「うん、忘れた」
「明日こそ宿題出すっていうのに…、それを忘れたって言うのかよ…」
「ああ、そうだったね」
ところが、晃は明日になっても明後日になっても宿題を出さなかった。
「しっかりしろよ!」
「えっ?今なんて?」
「だから忘れるなら今宿題しろ!先生も怒ってただろ?!」
ところが、晃の耳には何も届いていなかった。
そんな感じである晃の横にはいつも三人が居た。人の話は全く聞いてくれない晃だったが、三人の声にはなんとなく耳を貸してくれるような気がしたのだ。
ある日の事、四人はいつもと同じように歩いていると、真上から何かが被さった。見上げると巨大な蛇の怪が四人を見下ろしている。
「えっ?」
怪はどういう訳か雪花を狙っている。朝日と陽和は雪花を庇いながら、逃げ回った。
「何が起きてるの?」
晃はなんとなくそれに付いてくる。
「全く…、逃げるしかないのかよ…」
朝日が言ったその時だった、突然空から巨大な鎌が降ってきた。陽和はそれを拾おうとしたが、重すぎて無理だった。
「姉ちゃん、貸せよ、これはこうやって使うんだ!」
朝日は慣れてような手付きで鎌を持つと、怪に向かっていった。
「姉ちゃんは二人を逃しておけ、俺が食い止めておくからな」
怪は朝日を睨みつけ、尻尾を叩きつけた。朝日はそれを避けたと思うと、尻尾を斬り、更に脳天目がけて鎌を打ち付け、怪を倒した。
「ヘッ、これでどうだ」
二人を逃した陽和は朝日の元へとやって来た。
「ねぇ、何でこんなにも手が慣れてるの?」
「そんなの分かる訳ないだろ?!」
だが、二人が油断している間に、倒したはずの怪は起き上がり、背後から襲ってきた。
「あっ…!」
「危ない!」
斬撃が怪を貫き、そのまま消滅していった。
「えっ…?」
目の前には、金の縁取りと袖口に、紅い花と蒼い星が描かれた中華の赤い衣を纏い、金の土台に様々な色の水晶で飾られた冠を被り、金色の靴を履いて、更には金色の釜を持った青年が立っていた。 青年は、二人を見ると懐かしがるような口調でこう言った。
「久し振りだな、朝日、陽和」
だが、二人はそれが誰なのか全く分からなかった。
「あの…、どちら様ですか?」
青年はため息をついた。
「なんだよ…、父親の顔を忘れて…、まぁ、小さかったから仕方ないか…」
「えっ…、お父さん?!」
二人は驚きと戸惑いと疑いが一気に来て言い表せないような気持ちになった。
「何だよ…、信じられないのか?」
「それ…、本当なのか?しかし、何だよその格好は…」
青年は一枚の写真があった。それは、母親である杏と、目の前に居る青年、それから幼い二人が映っていた。
「これが証拠だよ」
「あっ…」
「今まで言わなくてごめんな、俺の名前は風見昴…、冥界を統べし王…、冥界神帝•昴だ!」
二人は何とも言えない顔をした。
「えっ…?」
「お父さん、まさか、病気なの?」
「何で信じられない顔をするんだよ。仕方ないか、俺の方の親族には会わせてないからなぁ」
「どういう事?」
昴はさっきの鎌を指さした。
「お前らなら使えると思って手渡したんだ、俺には死神の血が入っている。だから、俺の子供なら使えるはずだってな。ただ…、朝日にしか使えなかったらしいけどな」
「へぇ…」
「それなら…、陽和の方には…」
すると、目の前に燃えてネバネバした人形の怪が現れた。
「獄炎の輩か…、陽和、行け」
昴は陽和に御札を手渡し、背中を押した。
「ええっ?!」
怪は陽和に向かって来る。
「えっ、とりあえずこう?!」
陽和が御札を投げると怪に風穴が空き、動きが止まった。
「『金封輪舞』!」
陽和はもう一枚御札を投げると、怪は浄化されてしまった。
「思った通りだ」
「えっ?」
「陽和の方には…陰陽師の力がいったんだ。」
「えっ、でもさっき死神の力って…」
「俺には死神の力と陰陽師の力を両親から貰った。まぁ、俺には他に魂の力とか神力が宿ってるんだがな、二人には別れて受け継がれたようだな」
二人は信じるような、信じられないような、変な気分になった。
「と、いうと…、俺達にも怪に対抗出来る力があるって事か!」
「まぁ、そうだな」
昴は二人に霊水晶で出来た数珠を手渡すと、こう言った。
「実は…、大変な事になってるんだ、さっき二人の側に居た女の子が居るだろ?」
「雪花ちゃんの事ですか?」
「ああ、その子が怪に狙われてるんだ。恐らく…、身体に埋められた霊晶石が原因なんだろう」
「霊晶石?」
「天然の霊水晶の原石だ。恐らく産まれ付きそうなっていたんだろうな。しかも霊力も中々強い。だから怪が狙ってるんだ」
「へぇ…、よく分からないけど」
「だから、二人で守ってくれないか?」
二人は肯いた。
「雪花とはずっと一緒に居るからな、分かった!」
「お父さん、やってみせるよ!」
昴は二人の頭を撫でると、足に炎を纏って飛び上がった。
「二人とも、任せたからな!」
そして、何処かに消えてしまった。
「よし、やってやるか!」
「でもどうやって?」
朝日は方法は全く考えてなかった。
「う〜ん…、でも、雪花から目を離さないのは大事だろうな、また怪が現れたらなんとかすればいいんだろ?」
「そのなんとかを聞いてるのに…」
「まぁ、やるしかないだろうな 」
朝日は大きく背伸びをして、歩いて行った。陽和もそれに付いて行った。