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始まりの町(第3部)

グランの町が魔人の襲撃にあった。空中から街を見下ろす魔族は高笑いしながら第二の魔法を放つ。ギルドを中心に起こった中規模の魔法は、事の重大性を住民に知らしめた。


「ふははっ、ようやく重大性に気付いてきたようだなぁいいか?よく聞け、この町は魔王様のものとなり私の功績の一部になる、感謝しろ?」


はいはい、ありがとうございます...はぁ...魔人との初戦闘、もっとシャキッとしたやつを期待してたな。こいつに熱いバトルを求めるのは無理だ、リセットはできないものだろうか...この世界のこと、魔法のこと、少しずつ理解はできてきた。そろそろボスが来るのではないかと思っていたらこれだ...負けイベントでもいいから、もっとかっこいい奴にしてくれよ...敵のビジュアルも大切だよ?


病んでいてもらちが明かない、現にこいつは民家とギルドを壊してくれた、それなりの報いを...なっ?


「タクトさん、なにをっ?」


俺が剣に手をかけていることに気付いたセリスさんが声をかけているがこたえている暇はない、なぜならもう準備はできているから、あとはタイミングだけだ。そうだこいつを一撃で倒してセリスさんへのイメージアップでも計ってみるか...まあ元から一撃で倒すつもりだけどねっ...!


長く息を吐き、自分なりにタイミングを定めた。


視界が切り替わり目の前には魔人の後ろ姿が移る。俺が使ったのは転移魔法



地上から魔人の後ろへと移り



目の前には無防備な魔人が一人



構えていた剣を抜き魔人の首を狙った



剣聖の補正により俺の剣は、一流の職人の腕と最高の素材によって作られたもの以上の切れ味を持つ



ただ、空を切ったかのごとくその剣は進行上にある魔人の首を跳ね除けた


斬られた魔人も、下で見ているギャラリーも、誰一人として声を発さなかった。それほど一瞬の出来事だ。


…俺は魔族の体とともに着地する。


「...手ごたえがないとはまさにこのことだな...ん?」


ギャラリーに目を向けると驚きと驚きと驚きが含まれた目線が俺に注がれていた...



...朝日はすでに顔を出している、宿屋の屋根にとまった鳩が独特のリズムで早く起きろと催促を繰り返している、目が覚めた時にはもうすでに眠たい、という気はなくなっていた、それだけ長く寝ていたということだ。ゆっくりと背伸びをし、軽い朝食をとってからゴル爺の鍛冶屋に向かう。これが魔人の襲来から一週間後の俺のルーティーンだ。


「おはよーございます」


「あぁ、タクトか...おはようさん」


ゴル爺の家には剣の鍛錬を行う道場がある。昔、子供たちに剣を教えていたらしい。ゴル爺の剣の稽古をしてやるという提案を受けたのは良策だった。何せギルドの建物の半壊により今のギルドには工事のおじさんしかいない、全くまだここにきて二日目だったのにあの魔人もやらかしてくれたものだ。


あの魔族の襲来の後…俺はすぐさまセリスさんに捕まった。 そこからは尋問タイムだ…


魔族の後ろにはどうやって言ったのか、そもそもなんで魔族を倒せたのか、そんな人間がなぜグランに来たのか、そもそも俺は何者なのか、etc.


俺はほとんど答えることは出来ない、おそらくほかの世界から来ました。そう言えば全部の辻褄は合うんだろうが、それが信じられなかった場合俺はかなり怪しい奴になってしまう。そのリスクを感じなんとか愛想笑いで乗り越えた。


…力を入れずに剣の軌道に留意しながら剣を振る。


「…まぁ、及第点じゃな…ほんの6日でここまで上達したなら上出来じゃろう。」


ゴル爺はお茶をすすりながら俺を評価する。及第点と言っているが最初は虫にも負けると言われていたのを鑑みると、俺はかなり上達したのだろう。


「そりゃあ良かった。これで虫ぐらいなら勝てるかな?」


「バカもん。わしが6日かけて教えたんじゃ、ここいらの魔物には負けんわい!」


初日の言葉を完全に忘れた正論に片方の頬をつり上げると少し冷えたお茶を一気に飲み干した。


「ふぅ。じゃあそろそろお暇するとしようかな。」


「そうか、剣の筋はよく見える。まぁ死なない程度に頑張れ。」


「あぁ、まぁ頑張るよ!じゃ。」


軽く手を振りゴル爺の家を出た。


「よし!ギルドに行くとするか…」


…修復が終わり、まだ少し木材の匂いが香るギルドのドアを通った。


「こんにちは〜」


今までと変わりないほど完璧に修復された受付にはセリスさんと後輩くんがいつも通り座っていた。


「あっ、タクトさん!修復後一番乗りですね!その後調子はどうですか?」


「この一週間ほぼゴル爺の家で剣を振ってました…お金のことなら、この間モンスターを売ったお金があったので苦労しませんでしたよ。」


「そ、そうですか、まぁ良かったです。それでですね…ちょっと提案なんですけど…」


セリスさんが少しよそよそしく表情を変える。


「なんですか?」


「単刀直入に言うと、ほかの街に拠点を移してはいかがでしょうか。この街に来て1ヶ月も経ってないですけど、タクトさんのレベルはこの町では持て余してしまうでしょうし、もっと依頼のレベルやモンスターの強さが高い街を拠点にした方がいいと思ったんです。」


「まぁ確かに僕もそうした方がいいのかな、とは思いますけど…あっ、提案ってことは、おすすめの街を教えてくれるってことですか?」


「そうです!そうです!と、言ってもタクトさんのレベルはどこの街に行ってもおそらく力をあり余すことになると思うので、ここは思いきって中央都市に行ってはいかがでしょうか?」


中央都市っていうのは最前線の都市ってことか。 なるほど、道中を飛ばして一気に物語最後の街に行こうってことか…それもありだな…


「ありですね…」


「そうですよね!私もそれがいいと思います。普通の人がそんなことしたら3日でいなくなりますが、タクトさんの実力だったら中央都市でも安心ですし、今なら明日か明後日にも出発できますよ。」


「そうなんですね。」


ということは、セリスさんとはお別れか…色々教えてもらったし、なにかプレゼントでも渡そうか、あとついでにゴル爺にも、何にしようか…


「じゃあタクトさんは中央都市に行かれるんですね!」


「え、えぇ、って言うかセリスさんが言い出したんじゃないですか…」


「そうですか…奇遇ですね!」


「へっ?」


「実はたまたま、たまったまなんですけど、私、この度中央都市のギルドに移動になったんですよ。なのでもしかしたらまたお会いするかもしれないですね!」


「え!」


なんだこのご都合展開は!


「タクトさん口角が上がってますよ?嬉しいんですか?」


セリスさんはからかうように笑っている…


「まぁタクトさんみたいな超優秀な人材を私が手放すわけないんですよね。」


「き、聞こえてますよ。」


っと言うわけで、俺の物語は第2話へと突入する。


俺は、どう考えてもメインヒロインなセリスさんと中央都市に向かうことに、今のところ順調過ぎる俺の物語は、どこで挫折が訪れるのか心配だったりする…


が、まぁ面白おかしく冒険できたら良っか!と思う俺氏なのであった…

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