始まりの町(第2部)
まだ朝日が寝ぼけているとき、グランの人々はすでに活動を始めている。花に水をやっているひとや開店の準備をしている人の中に眠そうな人は一人もいない。そんな中、俺は冷たい空気を肌で感じながらギルドへ一直線に向かった。
「おはようございます!タクトさん!」
一呼吸入れてギルドのドアを開けるとドアについた鈴の音よりも早く朝の耳には少し答える元気な挨拶がとんできた。
「おはようございます。セリスさん、朝から元気ですね...」
「えぇ。受付に元気は必需品です!まあ隣の後輩君は部屋においてきたみたいですけど」
隣にはまだ夢の中なのではないかというはど目を細めた男の子がぐたぁ...と机に覆いかぶさっている。内心、この後輩君には近親感を感じている。愛想笑いで済まそうとしていると後輩君が自ら口を開いた。
「こっちのほうが普通なんですよ。大体セリスさんなんて僕より遅くまでギルドにいたじゃないですか。それなのになんでそんなに元気なんですか?超人ですか?全身超合金でできてるんですか?」
確かにその通りだギルドの受け付けは仕事上デスク仕事が主だろう。後輩君のいいようだと昨日も夜遅くまで仕事をしていたのだろう。にもかかわらず。肌荒れひとつせず、目の下にくまも作らず、朝っぱらから笑顔を振りまいているわけだ。後輩君の言いようも理解できる。
「こんな年からそんなことは言ってられないわよ」
年だそうだ。まあ実際若ければみんなきれいというわけではない、相当なポテンシャルをお持ちなのだろう。そして後輩君だが、もう言い返す気力もなくなったのだろう。今度は完全に腕に顔を埋めてしまった。そのさまはまさかお客さんが来ている状況だとはだれも思わないだろう。
「一応タクトさんが来てるんですけどね...」
「全然気にしなくていいですよ」
昨日は遅かったらしいですけど大丈夫ですかという質問は答えがわかりきっていたので発言しなかった。
「そういえば昨日の素材はすごかったですね!ギルドの中でも騒ぎになってましたよ」
「そんなにですか?魔法で一撃でしたよ?」
「ふつうこんな町に来る人は魔法なんて使えないんですって...それにタクトさんの魔法は威力が高すぎなんですよ、こないだの死体半分焦げてましたからね」
まあ、その時は威力の調節なんてできなかったからな...
「それはそうと、剣を買ったんですね!どこで買ったんですか?」
「えっと、ゴルドさんの鍛冶屋です」
「あぁ...でもよく購入できましたねあそこのおじいさんぼけてて剣を頼むと盾が出てくるって評判なのに」
「そ、そうだったんですか...」
「ま、まあ無事に購入できたようで何よりです。」
その後俺はギルドで依頼を受注した。内容は、とりあえずモンスターを狩って素材を取って来いというものだった。モンスターの種類が限られず、狩った数によって報酬が変わるものを選んだ。俺はそのまま森へと足を運んだ。と言っても竜がいたほうの森とは逆方向の森だ。あちらの森に行ってこの間のモンスターを狩ってもいいが、剣の練習相手にいは少し強すぎるかもしれない。ドラゴンを練習相手にしようとしていたやつとは思えない成長具合だ。
そして俺は順調にモンスターを狩っていった。好戦的なモンスターと戦うときはどう立ち回るかということを考えながら戦う、攻撃を食らっても死ぬわけでもないのでいい練習相手だ。好戦的ではないモンスターもいて、ゲームでは進んで倒していたが少しは気が引けるものだ、生活のためと思って剣をふるった。
この世界の魔物はゲーム位の世界のようにゲームのように倒すとアイテムになって消えるなんてことはない。さっき倒したモンスターが目の前に残るのは決して気分がいいものではない。そして持ち運び、依頼は素材目当てのものが多いということは倒して終わりではなく持ち帰らないといけない、モンスターも持ち上げるとしっかりとした重さがある。俺は収納魔法があるから全く気にしなくていいが。
そんなことを考えながら俺はモンスターに剣を振り次へと歩き出す後ろ目で、倒したモンスターを収納する。生きているものは収納できないのでそれを使ってこと切れているかを確認する。しっかりと倒していたようで小型のモンスターは少しの青白い光へと姿を変えた。すっかり手慣れ北作業を繰り返していると。少し開けた場所に出た。
少し魔法の実験をしてみよう、ちょうど気になっていた魔法があった。俺が一つ魔法を発動すると視界が一瞬だけ遮断されあたりを確認する...
「よし成功だな。」
自分の反対側に先ほどまでの足跡を見つけて確信した。そう、この魔法は空間転移。平たく言うと瞬間移動だ...
...一瞬の浮遊感を感じ、すぐに表れる地面に足をがくつかせグランに到着した。転送魔法の性能の高さと便利さに内心、関心しつつウィンドウを開いた。魔力量を示す紫色のメーターに目を向ける。少し欠けたそのメーターは転送魔法の消費量の多さを表していた。
「さすがにこの距離だとこたえるか...」
俺はそのままギルドは直行した。
「あっ!お帰りなさい!タクトさん!初めての依頼はどうでしたか?」
「どうだったかを測る物差しを持ってないんですけど...」
「冒険者は生きて帰ってくれば及第点です。」
そのまま今日狩ったモンスターはコインとなって袋に入って出てきた。
「出かけてた時間の割には大量でびっくりしました...ここだけの話タクトさんはうちの最有力株なんですよ、まだ入ってきて二日目なのに...」
まあ、死にかけたからな...そのくらいあってもらわないと困る。
「それでですね今度私...中央...」
「キャアアアアアアアアアア!?」
セリスさんの言葉を爆発音と女性の悲鳴がさえぎった。熱風はギルドのドアをたたき開け、ギルドの資料を部屋中にまき散らした。なんだなんだと外に出るとギルドの目の前の建物が炎に包まれていた。何が起こったのかだれが起こしたことなのかは、上空から響き渡る耳障りな笑い声が知らせている。
「あ、あれは...」
それはギルドの町を見下ろし家を燃やし、罪悪感もなさそうに白歯を見せている
魔人だ
「チュートリアルのボスの登場か...」