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第八話 「おばあさん」

「きゃあっ!?」

 咄嗟(とっさ)に振るわれたカゴをまともにくらい、おばあさんの姿をした化けものの体はベッドの向こうに転げ落ちました。赤ずきんは恐怖におびえながらもとなりの部屋に駆け込み、丸テーブルの下に隠れます。その後すぐに扉から外へ逃げだすべきだったと思い直しましたが、もう後の祭りです。

 薄い壁の向こうから、化けもののうめき声が聞こえてきました。手元を探るような物音が続いた後、床が大きく軋みます。化けものが立ち上がる気配が伝わってきました。

『……赤ずきん?』

 驚くほど近くでくぐもった声が聞こえ、背筋が凍りつくようでした。床の軋む音が断続的に響き始め、おばあさんが部屋のあちこちを歩き回っているのがわかります。

 あの化けものが、赤ずきんがとなりの部屋へ駈け込んでいくところを見ていたかはわかりませんが、どちらにせよ、見つかるのは時間の問題でした。

 不意に軋む音が大きくなり、ずんずんとこちらに近づいてきます。

「……赤ずきん。そこにいるのは、わかっているんだよ?」

 間を(へだ)てていた壁がなくなり、おばあさんそっくりの声がはっきりと耳に届きます。部屋の入口から中をのぞきこんでいるのでしょう。


 ――――もはや赤ずきんに、選択の余地はありませんでした。


 抱きしめていたカゴを床に置き、覆いかぶさった白い布を取ると、赤ずきんは、下に敷かれた赤い布をどかしました。

 そうして、底に隠されていたものを手に取ると、ずっしりと重い手ごたえが返ってきました。

「……見ぃつけた」

「ぁぁーーーーーっっ!!」

 テーブルを覗きこむ二つの瞳に、赤ずきんはそれを横なぎに(ふる)いました。

「ごふっ!?」

 ごりっという骨を削ぐような生々しい感触がして、化けものが顔から床に倒れ込み、ひっくり返ったテーブルの上の皿がおばあさんの上に()(そそ)ぎました。

「ぎゃぁぁーーーーーーっっ!?」

 破片が背中に突き刺さり、化けものはうつぶせに横たわったまま悲鳴を上げました。慌てて立ち上がり、テーブルに頭をぶつける赤ずきん。食べ残したごちそうが床に散らばり、足元を汚しました。

「うぅっ……」

 化けものが、おばあさんの声でうめきながら顔を上げました。その時赤ずきんの目に飛び込んできたものは、流れた血で赤く染まり、ズタズタになった顔面。それが、赤ずきんの中で、ランプの火を浴び焼けただれた猟師の顔と重なりました。

「――――っ!?」

 悲鳴を飲み込む赤ずきん。握りしめた血だらけのオノが鈍く光り、頭の中で、にっこりと笑うお母さんの言葉が(よみがえ)ります。

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