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第一話 「言いつけ」

 ――――昔々、ある森の中に、〝赤ずきん〟という、小さな女の子が住んでいました。

 煙突(えんとつ)のついた赤い屋根のおうちで、赤ずきんは、お母さんと一緒に暮らしています。

 そんな、ある日のことでした――――



「――――いいですか、赤ずきん」

 台所のほうから、お母さんの声がしました。

 赤ずきんは、視線だけで答えながら、飲みかけのミルクをテーブルの上に置きます。腰かけた丸い椅子の上で、小さな足がふりこのように()れていました。

「おばあさまがご病気になられたの。お見舞いに行ってあげなさい」

 言いながら、ゆっくりと近づいてきたお母さんの手には、大きなカゴがにぎられています。受け取ろうと椅子からおりた赤ずきんに、お母さんは静かに言い添えました。

「あぁ、オオカミには気をつけてね。――――絶対に、よりみちしてはいけませんよ?」

 カゴを受け取ると、ずっしりとした重みが伝わってきました。カゴには、花の模様がぬわれた白い布がかけられていて、中身はうかがえません。『何が入っているの?』と、首を(かし)げる赤ずきんに、お母さんは、にっこりと笑って答えました。


           *


「行っておいで。それまで家に帰って来るんじゃないよ」

 赤ずきんがお気に入りのブーツをはいて家の外に出ると、お母さんは、そう言ってカギをかけてしまいました。怖くなった赤ずきんは、困ったように辺りを見回します。

 しかし、ホコリをかぶった空っぽのタルや、お父さんが使っていたオノ、きれいに積まれたまきがそのままになっているだけで、不安はいっそう大きくなっていきます。

 赤ずきんは、小さなため息をつくと、木の影が伸びる暗い道を見つめ、あきらめたように歩きだしました。ふくろうが鳴き、どこからか吹いた風が、まぶかにかぶった赤いずきんと、スカートを揺らしました。

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