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苦手な方はご注意ください。

創作読書感想文・竜の逆鱗

作者: どんちゃん

 竜は卵から産まれる。


 竜の卵はとても堅く、中から高濃度の魔力を放つことで壊すことは可能だが、外から壊すことはまず出来ない。つまり卵の時に外敵に襲われ、食べられてしまうということはまず起きないないのだ。

 しかし竜が無事に孵化する確率はとても低い。それは何故か?それは孵化できずに卵の中で殆どの個体が死んでしまうからだ。では何故死んでしまうのか?


 竜の卵の中には必ず2つの魂が宿る。つまり双子だ。これに例外はなく、必ず卵に宿る魂は2つなのだが、無事に孵化して生まれる時、生まれてくる竜は必ず1頭だけとなる。

 ならば残りの1頭はどうなってしまうのか?


 竜は双子の卵として産み落とされた後、しばらくすると双子が共に卵の中で自我を持つ。そして更に時が経つと、双子は魔力を操ることができるようになる。


 1つの卵という世界にいたたった2つの魂は、卵の中からその魔力を用いて外界を覗く。そして共に外の世界を眺めて風を知り、雨を知り、共に考え、共に笑い、そして時には自分達が中にいるこの卵を割り、自分達を食べようとする存在に対して共に恐怖したりと、外界の事を魔力を用いて眺めては一喜一憂しながら学び、卵の中で成長する。


 卵から孵化するまでの間、自分達の意思で自分達の宿るこの卵を自由に動かすことなど出来ない為、当然会話出来る相手は同じ卵という世界にいる片割れだけだ。


 この片割れは、血を分けた兄弟であり、親友であり、この世界で色々な意味で唯一無二のかけがえのない存在だ。


 竜は卵の中で成長するにつれ、お互いの姿を見て自分達は竜であることを知る。

 しかし2つの魂は、お互いに相手がそのままでは産まれることが出来ないことに気付いてしまう。


 片方の竜には心臓が無く、もう片方の竜には肺が無い。


 心臓を持つ竜は、片割れの竜に心臓が無いことを知るが、自らの体に肺が無いことには気付かない。


 肺を持つ竜は、片割れの竜に肺が無いことを知るが、自らの体に心臓が無いことには気付かない。


 心臓が無ければ魔力は生成できず、そもそもそのまま卵から生まれてしまえば、血液が循環することは無くなる為に死んでしまう。


 肺がない竜も、卵から出れば呼吸が出来ずに死んでしまう。卵の中だからこそ呼吸をせずとも生きることができているだけなのだから。


 互いに孵化すれば唯一無二の兄弟は死ぬと理解するが、互いに自分のことまでは見えないのでわからない。

 だが、確実に兄弟が死ぬときが近付いてきていることだけはわかってしまう。そして兄弟を救う方法というのも、本能的になんとなくだが知っている。その方法とは、相手に足りない物……つまりは心臓・又は肺を兄弟に渡すことだ。しかしそれをすれば今度は当然自分が生まれることなど出来なくなる。


 竜が生まれるためには、卵の中から高濃度の魔力。つまりはドラゴンブレスを放たなければならない。そしてそれが出来るのは個体差こそある物の、卵として産み落とされてから大凡1年後。

 1年が経つより前では魔力が足りず、逆にそれを過ぎてしまうと卵の中の栄養が尽きてしまい、中の2人はどんどん衰弱していきそのまま生まれることなく死んでしまう。


 だから多くの竜は卵から孵る事なく死んでしまうのだ。


 逆に生まれてくる竜と言うのは、片割れから心臓・又は肺を与えられた者のみであり、そのどちらかを渡される時には鱗が邪魔となるため強引に()がされ、その下に心臓・又は肺を移植される事となる。

 移植が完了すると、移植を施した側の竜は死ぬ。そして剥がされた鱗の位置に、死んだ兄弟の鱗を逆さに刺し、竜はドラゴンブレスを吐いて生まれてくる。


 その為竜は、逆さに刺した鱗のある位置をなによりも大事に想い、そこに触れる者など許さない。何故ならそれは、自分に生きる権利をくれた、なによりも大切な片割れからの(プレゼント)なのだから。

小学生の頃、夏休みの宿題で考えた読書感想文の内容をアレンジしたものです。


当時の私は漫画は読んでも小説を読む気にはならず、しかし読書感想文は出さなくてはいけない。そこで私がとった方法が、適当な本を選び、タイトルと中に書いてある単語からストーリーを想像し、読んでもいない小説の感想文を書くことでした。


当時の私が手にした本は、ドラゴンの絵が表紙に書かれている本でした。

手にした理由は格好いいから。

私はその本の中から逆鱗という格好いい単語を発見し、母に逆鱗について聞きました。そしてそれを元に内容を推測し、それに乗っ取った感想文を書いて提出しました。


先生からは、作者の伝えたいであろう想い等が、とてもよく伝わる良い感想文だったと褒められ、校内?の読書感想文コンテストかなにかに回されました。……まぁ、ある意味作者は私ですから、私の想いはよく伝わったみたいですね。


よかったよかった。ここまでは……。


翌週の月曜日、私は私を褒めてくれた担任の先生から呼び出しをくらいました。

なんと担任の先生は、私の感想文が気に入ったらしく、その本を購入し読んでしまったらしいのです。


私の読書感想文の内容は、竜の誕生秘話を書いた感動ドラマのような、ちょっと悲しい内容です。

しかし、私が読んだ事にした小説の内容はどうやらそれとは少々違ったようでして……。


先生曰く、内容を纏めると人間が竜の逆鱗に触れ、怒った竜が人の里を壊滅させてしまい、それを人間の勇者が打ち倒す!みたいなかなり血生臭い内容だったそうです。


全然内容が違うじゃないかと怒られましたが、仕方が無いじゃないですか?だって読んでないんですから。


先生。あの時はごめんなさい。

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― 新着の感想 ―
[一言] 作者様の作品の方が読んだ限りでは良い話だと思いますね。 逆鱗の場所は喉らへんだった気もしますがそれはどうでもいい。
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