第71話 ワレダムファイト開幕+トルネード嵐山現れる!
~機動武闘伝Gワレダム~
この世界では戦争は行われなくなった。60年前に一部の人類は環境が悪化した地球を後にして各国が建造したコロニーに移住したのであった。各コロニー間では世界の覇権をめぐる全面戦争に対する抑止策として4年に一度開催される、巨大人型ロボット『ワレダム』を使った格闘試合、『ワレダムファイト』で決められるようになっていた。各国からそれぞれ選出された代表選手同士で優勝者を決めて、優勝者の国が次のワレダムファイトまで国の主導権を握る事となったのだった。
だが、このワレダムファイトにも問題はあった。それは、激しい戦いとなるワレダムファイトが行われる舞台が地球で行われることであった。地球に残された人々にとって周囲に多大な被害が出るワレダムファイトは生活を脅かす脅威でしかなく、地球住民達はワレダムファイト、敷いては自分たちを軽視するコロニー住民を忌み嫌うようになっていったのだった……
そして、ネオジャパンからも一人の代表選手が出場していたのだった!
源三「ワレダムファイト!レディ――――――GOooooooooooooo!!」
※
源三は旧イギリスで他のワレダムファイターを探していたが、ワレダムファイターを嫌う地元の刑事や住民から厄介者扱いを受けるばかりであった。
マフィア「ふははははっ!この町は今日から俺たちの物だぁ――――!!」
マフィア「オラオラ!俺らに街を渡しやがれぇ――――――!!」
刑事「クソ!マフィアのワレダムファイター共が!どこのバカがあんな連中に流しやがったんだ!」
源三との騒動から翌日、町はワレダムに搭乗したマフィアたちに襲われていた。巨大な人型兵器であるワレダムは犯罪に使われれば脅威である。彼らが使っているのは旧式化し、払い下げにされた量産型軍用機で、性能はワレダムファイトの国家代表たちの専用機に比べれば遥かに劣るが、ワレダムを持たない民間人や地球警察にとっては脅威的な存在であった。
警官「ダメです!近づくことすらできません!」
刑事「手榴弾投げろ!足ふっ飛ばせば何とかなるかもしれん!」
警官「それならもうやりましたけど全然利きませんでした!」
刑事「…………」
まさに絶体絶命であった。警察署にある武器ではワレダムに対してまともなダメージを与えることは出来ず、一方的にやられるばかりであった。
マフィア「オラオラ!おとなしく黙ってこの街を差し出しやがれ!」
マフィア「俺らの為に誠心誠意尽すって誓えば命だけは救ってやる!」
刑事「奴ら、良い気になりやがって……!」
怒りを爆発させた刑事は小型のランチャーを抱えて身を乗り出す、それは誰が見ても自殺行為同然の危険な行動である。
警官「あ、危ない!」
刑事「これ以上、この街を、ワレダムなんかに壊させて溜まるかぁ―――――!!」
彼はワレダムの弱点であるコクピットを直接ランチャーで攻撃すればパイロットにだけは致命傷を与えられると考えての行動であった。
刑事「失せろぉ――――――――――!!」
実際にランチャーを使った事はあまりない刑事だったが、ランチャーの照準をワレダムのコクピットに向けて、発射する。このままコクピットに命中すれば、パイロットは無事では済まないのは確かだった。
マフィア「おっと、こいつは邪魔だな」
刑事「なにっ!?」
が、ランチャーが発射したグルネード弾は呆気なくワレダムのライフル弾によって撃ち落とされてしまった。そして、今度はそのワレダムはランチャーを持った刑事の方に狙いを定めていた。
マフィア「鬱陶しいんだよ!正義感気取りの熱血野郎が!」
1秒も経たないうちにワレダムの持つライフル銃の弾丸が刑事の体を木っ端微塵に打ち砕くのは明白であった。
マフィア「な、なに!?」
が、そのライフル銃の弾丸は弾き飛ばされていた。新たに出現した一体のワレダムの巨大な手によって、防がれていたのだった。
マフィア「な、なんだあのワレダムは!?」
マフィア「テメェ何者だ!?」
白を基調とした、そのワレダムは立ち上がる、そしてワレダムの中から聞こえてきた声は……
源三「ワシはネオジャパン代表の宮永源三じゃ!そして、こいつはワシのワレダム『シャイニングワレダム』じゃ―――――!!」
刑事「あ、あの日本人なのか!?」
そう、これこそがネオジャパン代表の宮永源三のワレダム『シャイニングワレダム』であった!
源三「貴様らのような者たちがいるから、ワレダムに対する憎しみが広がるのじゃ!」
マフィア「うっせぇ!ネオジャパン代表だろうがこっちは二人だ!」
マフィア「同時に襲い掛かってやる!」
マフィアたちは数で攻めれば勝てると考えていた、確かに両者のワレダムのスペックや搭乗者の腕っ節がほぼ互角であれば必然的に二人側の方が優勢であろう。しかし、源三はネオジャパンの代表に選ばれるほどの実力者であり、源三のシャイニングワレダムもネオジャパンが総力を挙げて作り上げた、ワレダムである。
源三「ワシのこの手が光って唸る! お前を倒せと輝き叫ぶ!必殺!シャイニングゥーフィンガァァ!いぃぃけぇぇぇぇ!!」
マフィア「「なぁにぃ―――――――!!」」
源三のシャイニングワレダムの必殺技が炸裂したのであった!その破壊力はマフィア達が使っている旧式化して払い下げになった量産型軍用機など一撃で呆気なく葬り去る威力なのである!
刑事「つ、強すぎる……」
その後、マフィア達は刑事達によって逮捕されたのだった。そして、ここに自分の探し求める男がいないと分かった源三は街を去ろうとしたのであったが……
刑事「持ってきな」
源三「ん?」
刑事は源三に対して既に冷めたピザを渡していた。
刑事「本当は暖かいまま食わせてやりたかったんだがな、それでもここじゃご馳走だからよ、貰っておいてくれ」
源三「うむ、丁度腹も減っておったことじゃ、有り難く食わせてもらうとするかのぉ」
源三の戦いはまだまだ続く、ワレダムファイトはまだまだ続くのであった!
※トルネード風山の回転力こそが武器なのだ!
風山「トルネード、トルネード!」
コマの仮装、もとい武装をして回転し続ける男。彼の名前はトルネード風山かぜやま36歳、無職、既婚、2児の父。
風山「娘達よ、この父と一緒に回転力を高めようじゃないか!」
長女「うざい、死んで」
次女「キモイ、消えて」
このように、10歳の長女と、8歳の次女からは完膚なきまでに嫌われまくっているのである。
風山「それにしても母さんは何処だ!もう朝だというのに何時まで寝ているんだ!」
長女「アンタこそ寝ぼけないでよ」
次女「母さんはアンタに愛想尽かして6か月前に家出したんじゃない」
そう、この風山の妻はトルネード風山に愛想を付かせて6か月前に家出してそれ以来、夫とは一度も会っていないのだった。
風山「それよりも娘達よ!朝の早起きは決して怠るな!朝の時間は貴重だ!30分早く起きればそれだけで朝の時間に大いなる余裕が出来る!慌ただしくなることが無くなるのだ!」
次女「確かに、アタシとお姉ちゃんにとって朝の時間は貴重よね。学校があるんだから」
長女「そうそう、5年以上も無職の人は朝の時間が幾らでもあるから余裕だから分からないだろうけど」
娘達は父親に侮蔑の視線と毒舌をお見舞いして学校に行くのだった!
風山「さて、俺も回転しに行くか」
長女「ちょっと!今は登校時間だから外に出るんじゃないわよ!『風山の父ちゃん、変人だ――――!』とか言われるのが目に見えてるんだから!」
こんな感じで、小学生が登校する時間の外出は禁止されているので風山はしばらく家の中で身体を回転させまくりながら時間を潰すしかなかった。
☆
板前「鉄火と納豆流すよ――――!」
ところ変わってここは回転寿司。営業時間になると同時に御客達が入ってくる。有名店なので平日の昼間でも客は常にいる状態なのであった。
老人「ここの回転寿司はお寿司が回るのがちょっと早い気がするな~」
老人「ああ、うっかりしていると取り逃してしまいそうだ」
客として来ているのは、もっぱら平日の昼間でも暇を持て余している老人達が大半であった。
風山「遅いわぁ―――――――――――――!!」
ただ一人、働き盛りの年齢のコマの武装をしている男を除いて。
風山「遅過ぎる遅すぎる遅すぎる!なんだこのノロノロとした回転力は!そんんな回転力が何の武器になると言うんだ!」
風山は自らが回転しまくって怒りを表していた。
老人「あ、アンタ一体何をしておるんじゃ……?」
が、それが怒りの表現だと伝わらなかった。
店主「お、お客さん!お店の中で騒がないで下さい!」
風山「バッカモ―ン!貴様こそ回転寿司店の店長としてこの回転力の無さを何故改善しようとしない!こんな回転力では簡単に当たり負けしてしまうぞ!肉眼でも余裕とでとらえられるほどのスピードじゃないか!」
店主「肉眼でとらえられない様な速度で回ってたら誰も取れなくなるじゃないですか!」
風山「バッカモ―ン!回転力無くして美味い寿司になるかボケェ――――!」
☆
風山「もっとだ!もっと回転力を極めなくてはならない!」
風山は午後の回転力アップトレーニングに励んでいた。
風山「もっと回転力をアップして、そうすればさらに高い攻撃力が実現できるはずだ!」
子供「わ~、目が回る~!」
風山「なにぃ?」
風山の近くにあったのは気軽に遊べる簡易的な遊園地だった。子供達がメリーゴーランドに乗って遊んでいた。
風山「お、遅い……!」
が、風山にとっては何が楽しいのか全く理解できない。風山にとってはメリーゴーランドはノロノロと回っているだけの乗り物にしか見えないのである!
風山「遅いわぁ―――――!!」
風山はメリーゴーランドに向かって大声で叫んでいた。
子供「あのオッサンなんて格好してるんだ!?」
子供「コマだ……コマになり切ってるオッサンだ……」
風山は怒り心頭で回り続けるメリーゴーランドに向かう。
風山「一体、なんなんだその回転力は!あまりにも遅すぎるじゃないか!こんな回転力の無いアトラクションを作って金を得ようなどとはぼったくり商法も良い所だ!そしてそんな物に浮かれて喜んでいる者達もあまりにも愚かすぎる!」
風山の怒りは収まらない、怒りのあまりそのまま風山はメリーゴーランドに向かって突進しようとする。
係員「なにをしてるんですか!近づいたら危ないでしょ!」
が、間一髪のところで係員達が風山を抑える。
風山「責任者を呼べ!もっと回転力を高める事は出来ないのか!こんな回転力のメリーゴーランドなど必要ない!」
………
……
…
風山「回るぞ!もっと回るぞ!俺は回り続けるのだぁ―――――――!!」
源三「うむ、まさにトルネード風山の名にふさわしい回転力じゃ」
絵梨「回れ右して自分の姿を鏡で見てごらんよ」
来牙「どうやって生活してるんだ?父親のコイツが無職の上に小学生の娘が二人いる状態で」
源三「勝手に家を出た妻が生活費を送っているのじゃ」
絵梨「いっその事、娘さん達を引き取ってあげてほしいよね」
風山「娘達は俺が守る!俺のこの回転力で娘達を悪い虫から全力で守るのだぁ――――――!!」
来牙「取り敢えず、コイツらの制裁に必要な奴は遠慮なく言ってくれ」




