第66話 有紗のリアルマネー講座+電池を買う源三+財布は渡さないぜ
~里村有紗のリアルマネートレーディング講座~
リアルマネートレーディング、通称RMTとは、オンラインゲーム上のキャラクター、アイテム、ゲーム内仮想通貨等を、現実の通貨で売買する経済行為を指す。擬似的な経済システムが成立するMMORPGやMORPG、レアアイテムをプレイヤー間で取引できるソーシャルゲームなどで行われている。
有紗「と言うわけで、今回はアタシがやってるMMORPGのリアルマネートレーディングのやり方を解説するね」
美咲「いきなり何が始まると思ったら何なのよ?」
有紗「手軽に出来るお小遣い稼ぎだと思って聞いてね」
美咲「…………」
有紗「ゲームごとにやり方は多少異なるけど、アタシが今やってるオンラインゲームではポイントを換金する形で現金を得るんだよ」
美咲「ポイント?」
有紗「ポイントは各プレイヤーが自分のアカウントでお金をゲームを運営する会社に支払う事で手に入れられることが出来るんだよ。1ポイント1円だね」
美咲「それで何ができるのよ?」
有紗「通常プレイでは入手困難、あるいは不可能なレアアイテムをポイントを支払って手に入れる事が出来るんだよ」
美咲「運営に払ったお金で運営からポイントを貰ってそれをまた運営に払ってアイテムを貰うって……ゲーム内のアイテムなんだから運営はアイテムの製造コストとか掛からないから儲かるわね」
有紗「基本料金無料のMMOとかでは割とメジャーなアイテム課金制度だね。このポイントはレアアイテムの購入以外にもプレイヤー間でのアイテム取引でも使えるんだよね」
美咲「お金で手に入れたポイントを使って他のプレイヤーからアイテムを譲ってもらうって事なのね」
有紗「そ、当人にとっては使い道の無いアイテムや武器でも他の人にとっては需要が高かったりするからね。ただ、運営にポイントを払って手に入れたアイテムはトレード出来ない場合が多いんだよね。多分こうすることによって本来通常プレイでは手に入れられないポイントを払ってでしか手に入らないレアアイテムを従来のポイントよりも安い値段で取引されることによって運営に直接ポイントを支払われなくなる事をある程度抑える為だね」
美咲「運営もその辺りは儲かるように考えてるのね」
RMTで儲けようとするプレイヤーはそれで他プレイヤーにアイテムを売ってポイントを獲得しまくって、獲得したポイントを運営にお金に換金してもらうことが出来るんだよ。だいたい1000ポイントで900円くらいに換金してもらえるんだよ」
美咲「プレイヤーが運営からポイントを購入する時に比べると1割も値下がりするのね」
有紗「これも運営が儲ける為のシステムだからだよ。ちなみにポイントの購入や換金やクレジットカードやコンビニ決済で出来るよ」
美咲「アタシ達の年齢じゃクレジットカードは持てないから有紗ちゃんはコンビニ決済なの?」
有紗「そうだね、遊びながら小遣い稼ぎが出来るから一石二鳥。絵梨ちゃんも結構やってるっぽいよ」
美咲「ポイント制度を作る事によってプレイヤー同士で直接金銭のやり取りになる事を防いでるって事みたいね」
有紗「ちなみに、近年ではRMTを禁止してるMMOは多いからこれをやる人は事前にゲームの事を調べてからにしようね」
美咲「アタシはやらないけど」
※電池を買う源三!
源三「やれやれ、リモコンの電池が無くなった上に、予備がないとは、婆さんも抜けておるんじゃな~」
源三は電池切れで使えなくなり、予備すらなくなっているリモコンの電池を手に入れるために、近くのドラックストア―を訪れていた。
源三「でんちでんちっと、忘れないように頭の中ででんちと連呼してやるのじゃ」
源三はひたすら頭の中で電池を言い続ける。
源三(でんち、でんち、でんち、でんち、でんち、でん「お、美味そうなパンじゃ!」ちじゃな~、パンチ、パンチ、パンチ)
が、何を思ったのか、頭の中でのでんちがパンチになってしまっていた。そうこうしているうちに源三はドラックストア―に辿り着いていた。
店員「いらっしゃいませ~」
源三「パンチを買いに来たのじゃ!」
そして、勘違いしたまま、店員にパンチを要求するのであった!
店員(えぇ~……)
それは、彼の店員歴16年において、初めての経験であった!客からパンチを要求されるという前代未聞の要求だった!
源三「どうした?パンチじゃパンチ!早くするのじゃ!」
店員「…………」
執拗なパンチの要求に店員も腹をくくる覚悟を固めるのだった。
店員「わ、分かりました……そ、そこまで言うのなら、とびっきりのパンチをくれてやる……歯を食いしばれ!」
そして、源三は安心して突っ立ったまま歯を食いしばった。
源三「ふぉふぉふぉ、これでよくやくパンチが手に入るのじゃ……え、パンチ!?」
が、源三は途中でおかしくなったことに感づき始めていた。
源三「パンチじゃと?なぜ、ワシは買い物に行ってパンチを欲しがっておるんじゃ?」
そして、源三は改めて思い返す、自分の目的は何だったのかを。
源三「お、思い出したのじゃ!ワシが欲しかったのはパンチではなくて電池じゃ!そうじゃ、ワシは電池を買いに来たんじゃ――――――――!!」
店員「うおらぁ―――――――!!」
源三「ぐおぇ―――――――――――!!」
店員歴16年の彼は初めて、パンチを客にくれてやったのであった!
※財布は渡さないぜ!
鳥飼「へへへっ!金がたまったし、最新のMPプレイヤーが買えるぜ!」
鳥飼はためた金を財布に入れて以前から欲しがっていたMPプレイヤーを買おうとしていた。
薮井「ほぉ、ちゃんと、買えるだけの金はあるのか?」
鳥飼「おう、薮井か」
そんな、上機嫌の鳥飼に声をかけてきたのは薮井だった。
鳥飼「当たりめぇだ、だから今から買いに行くところなんだっての」
薮井「ほぉ、見せてもらおうか?」
鳥飼「だから、大丈夫だっての」
薮井は勝手に鳥飼の財布を確認する、ちゃんと新しいMPが買える金額が入っているのか確かめるために。
薮井「ほぉ、しっかりと貯めてきたようだな、これなら買えるだろう」
鳥飼「だから言ったろうが、問題ねぇっての」
薮井は親指を立てる、そしてそのままの状態で走り出す。
鳥飼「って、泥棒かコラァ―――――――!!」
薮井「ふははっ!馬鹿め!騙されるとはな!世の中油断した方の負けなのだ!」
堂々と、鳥飼の財布を持って逃げ続ける薮井とそれを追いかける鳥飼。
???「薮井、パ~ス!」
薮井「うむ!」
薮井は声がした方に向かって財布を投げる。
ぱしっ←源三が財布を受け取る
源三「貰ったぁ――――――――――!!」
そして、源三が財布を手にもって逃走するのであった!
薮井・鳥飼「「…………」」
薮井「ま、待て、泥棒!」
鳥飼「お前もだろうが!」
源三「ぐはははっ!間抜け共め!ワシに金をくれるとはおめでたいわ――――――!!」
大笑いしながら後ろから追ってくる薮井と鳥飼の方を見ながら笑いつつ、自転車を漕いで逃げる源三、走って自転車に追い付けるわけがないという自信から源三は余裕であった。直ぐ近くに車が迫っていることに気が付かないくらいに……
源三「ぎゃほ――――――――!!」←車に跳ねられる
源三「ぐっへぇ―――――――――!!」←跳ねられた先に走ってきたバスに跳ねられる
源三「ぼへぇ―――――――――――!!」←跳ねられた先に走ってきた自転車に轢かれる
鳥飼「……救急車呼ぶか?」
薮井「いらん、私もアイツを診る気はない」
そして、薮井が死にかけの源三から財布を取っていた。
鳥飼「待ちやがれ!また盗む気か!」
薮井「鳥飼、今日は迷惑をかけてしまってすまんな、詫びとしてお前が欲しがっていたMPは私が買おう」
鳥飼「…………」
何時になく真剣な顔の薮井を見て鳥飼はその言葉に真剣さを感じた。既に電化製品店は目の前である。
店員「最新MP後一台です!」
薮井「源三の自転車がある!これで私が買う!」
薮井は残り一つとなったMPプレイヤーを求めて電化製品店に向かって自転車を漕ぐのであった。
薮井「私が買ったぁ―――――――!!」
店員「まいどあり――――――!!」
そして、薮井は鳥飼の期待に応えて見事に最新MPを買ったのである!
☆
薮井「見ろ、お前が欲しがっていたものだ」
鳥飼「おう、確かに受け取ったぜ」
鳥飼は薮井が必死になって買った、最新MPが入っていると思われる紙袋を受け取り、その中から、それを手に取ったのだった。
鳥飼「って、マイクロプラグじゃねぇか―――――――――!!」
マイクロプラグは、1987年頃から発売されたウォークマンのリモコンに採用されたヘッドフォンプラグの規格であった!
薮井「ああ、正真正銘のMPだ!」
鳥飼「そのMPじゃね―――――――――――!!」
こうして、鳥飼の最新MPを購入する金はマイクロプラグを購入する資金になったのであった!




