第7話 ついにみつけた天才児!
前回のあらすじ
なんとか天才赤ちゃんがいると言われる病院で医者に成りすます為の白衣を手に入れた源三であったが。問題はこれからどうやって赤ちゃんがいる場所を探すかであった。
☆
源三「お~い貴様~」
医師「はい、なんですか?」
源三は通りすがりの若い医師に声をかける。
源三「例の天才的な赤ん坊ってどこじゃったか覚えておるか~?ワシこの年齢だからうっかり忘れてしまってな~」
来牙「単刀直入だ……」
源三はストレートに病院内の関係者に居場所を聞き出そうとしたのだった。
医師「いや、僕みたいな若手医師が知るわけないじゃないですか。例の天才的な知能を持った赤ちゃんを保護している場所は今の我が院の最高機密で院長他数名の関係者しか知らされてないんですから」
源三「そ、そうじゃったかな……?」
予想以上に居場所を特定するのが難しそうであることを今更ながらっ関する源三であった。
医師「と言うか、先生の様なベテランの方でも知らされてないんですね」
源三「ふぉふぉふぉ!ほ、ホントじゃな~!ワシを誰だと思ってやがるって感じじゃな~」
医師「ところで、あまり見ない方ですが何科を担当してらっしゃるんですか?」
源三「ぎくっ!」
当然、源三は医師ではないので何科などと言われても答えられなかった。しかしこのまま医療関係の話をしていたらボロが出るのは時間の問題だった。
源三「おおー――っと!そろそろ診療のじかんじゃったわ!急がねば急がねば!じゃあのー――――!!」
源三は適当な事を言いながら誤魔化して来牙を抱えた状態で走り去るのだった。
医師「あんな人いたか?」
訝しむ医師の視線を感じながら源三は一旦逃走。逃走した源三が近づいたのは最高責任者である病院の院長室だった。
源三「こうなったら、コイツから何とかして居場所を聞き出してやるわ!」
来牙「院長ならこの病院の医者や看護師の名前と顔を把握してるんじゃないか?だって雇った人だし」
源三「小学一年生がもっともらしい意見を言う出ないわ!」
が、来牙の言う事は的を射ていると源三は感じていた。
源三「アイツが院長じゃな~」
丁度病院の院長が院長室に向かってくる姿を確認した源三。院長の顔は事前に病院のパンフレットで確認済みであった。
源三「いかにも金儲けの亡者とでも言うべき顔をしてやがるわ!」
来牙「金儲けの亡者はどっちだよ」
顔が悪人面の院長に対して見た目も心も腐っている源三だった。
源三「お!鍵が掛かっておらんぞ!来牙よ貴様はその辺で待っておれ!」
来牙「言われなくても院長室に忍び込むわけないし」
源三は何の躊躇も無く院長室に入り込んでいた。すでに院長がこの部屋に戻る少し手前なので、早く隠れなくてはならない。
源三「……ここしかないのじゃ」
源三は青い蓋付きの大きなゴミ箱を発見して、身を隠すならココしかないと意を決するのだった。
源三「おのれ~、悪臭がキツイの~!」
ゴミ箱の中にはビールの瓶が大量に捨てられてある。どうやら燃えないゴミのようであった。
源三「って、アイツ勤務中に飲酒してる医者だったんじゃな!」
源三は院長の裏の姿を垣間見つつもゴミ箱に隠れたのだった。
院長「では、ここまでで結構だ」
丁度、院長が部屋に戻って来たのだった。
源三「何か、情報を手に入れなければ……」
院長「さて」
院長が部屋に一人になると(思い込んでいる)院長は眼鏡を軽く触ってから、カバンの中に入っていた一枚のDVDディスクを取り出していた。そしてそれをすぐさまDVDプレイヤーに入れていた。
源三「なんじゃ!?奴は何を見るつもりじゃ?一体どんな秘密の隠された映像なんじゃ?」
源三は重要な情報が得られると思い、こっそりとゴミ箱のふたを僅かに開けて映像を覗き見るのだった。
院長「ふふふ、ようやくゆっくりとこれを見る事が出来そうだな」
源三「な、なんじゃ、あれは……!」
その映像を隠れて見ていた源三は絶句していたなぜならその映像は……
院長「良いぞ良いぞ!院長の権限においてすべての女医とナースの身体を我が物とするこの光景!病院の院長なら誰もが憧れる光景だ!」
それは、AVだった。病院の院長が自らの権力を盾に女医やナースたちに肉体関係を強要し、酒池肉林のハーレムを作り上げると言う、まさに院長の心の底の欲望を具現化したような内容であった。
源三「な、なんて奴じゃ……奴はこのような事を自分も実際にやってみる事が夢だったとはな、病院の女医とナースたちが知ったら全員一斉に止めてしまいそうじゃ……」
院長「ふははははっ!!誰が一番偉いか分かったか!?院長はこの病院の絶対権力者だ!彼氏に婚約者だと?黙れ黙れ黙れ!そんな男達などと淫乱な事をしている暇があったらこの院長にどう奉仕するかを考えんか―――――――!!」
まるで自分自身がAVの世界の悪徳変態院長にでもなりきっているかのような姿に源三ですら顔を青ざめてドン引きしていた。
源三「…………」
が、源三はいつの間にか院長が見ているAVに見入っていた。作戦の最中であると言うのに女子更衣室を望んだ時と同様に性欲に傾いているのであった。
源三「まぁ、これを見終えてからでも良いじゃろうな」
そんなこんなで90分が経過した。
院長「ふははっ!素晴らしいAVだ!是非ともシリーズ化してもらいたいもんだな。いずれワシもあのような病院を作り上げたいもんだ!」
AVを見終えた院長は大層満足げな表情であった。そしてそれをゴミ箱の中からこっそりと見ていた源三も股間を抑えながら気持ち悪い満たされたような表情を浮かべていた。
院長「おっと、そろそろ連絡だな」
そこで院長が携帯を取り出してどこかに連絡するようだった、さっきまでAVを見ていた愉悦に浸っていた源三も素早く頭を切り替えて院長の会話に耳を傾けるのだった。
院長「ワシだ、例の天才的頭脳を持った赤ん坊だが、そろそろ第4精密診察室に運んでやってくれ、くれぐれも内密にだ」
源三「おおッ!その赤ん坊の移動先か!」
ゴミ箱に長時間潜っていた源三はついに有力な情報を手に入れるのだった。
院長「ワシも一旦そっちに向かう、いずれワシの役に立ってくれる天才的頭脳の小娘の教育をしてやらなければならんしな」
院長の表情はまさに子供を悪用しようと目論む卑劣な顔つきだった。
源三「おのれ~、ワシの為に大金を運んでくれる天才を院長の地位を使って先に利用するつもりじゃったか!そうわさせん!」
そして、源三の表情は子供を私利私欲に利用しようとする子悪党丸出しの顔つきだった。院長が部屋を抜け出したのを確認して源三も見取り図を確認してから部屋をこっそりと出るのだった。
☆
源三は来牙を連れて、院長を尾行していた。
来牙「本当にこれから行く場所が例の天才のいるところなんだろうな?」
源三「そうじゃ!あのクソッたれ院長は天才の赤ん坊を移動させるらしい、奴は院長の地位を悪用して赤ん坊を利用しようと目論む悪漢じゃ!」
来牙「悪い大人ばっかりだな」
来牙は源三以外にも赤ん坊の天才的頭脳を悪用しようと考える大人がいる事に呆れていた。それと同時に天才的な頭脳を持って生まれてしまったがために悪い大人たちに翻弄される赤ん坊に同乗していた。
来牙「ところでさ~……なんで俺までゴミ箱に入らなくちゃならないんだよ?」
源三「余りデカい声を出すな!中に入ってるのがばれるじゃろうが!」
源三はゴミ箱に入ったまま院長を尾行しており、来牙までその中に入れられていた。
源三「これは作戦スネークじゃ!だけど適当な段ボール箱が無かったからゴミ箱で代用したのじゃ。これなら姿を見られる心配はないぞ」
来牙「動いてる瞬間を見られたらお終いだけど……」
こんな感じで源三はゴミ箱に入ったままコソコソと移動して院長の後を付けるのだった。院長は病院の地下に移動していた、以外にも後ろを気にすることなくその足は早足で早く目的地に辿り着こうとしているみたいだった。
源三「今に見ておるがよい、奴の卑劣な作戦などワシがぶち壊す!」
来牙「アンタの卑劣な作戦の為だけどな」
卑劣な大人二人が天才の赤ん坊を奪い合う戦いがすでに始まっていた!
院長「鍵を渡したまえ」
医者「はい、院長」
そこに待っていた医者から院長は鍵を受け取る。
院長「既に移動は済んでいるんだろうな?」
医者「ええ、この扉の奥に例の天才の赤子がいます」
院長「ふははははは!!恐ろしいほど順調な計画だ!よろしい、君は下がりたまえ、後は私がやっておく」
医者「はい、失礼します」
医者を下がらせて院長は天才の赤ちゃんが移動させられた先の部屋に入っていく。
源三「うおっしゃ!ついにご対面じゃ――――――!!」
ゴミ箱に入った源三も駆け足で部屋に入る、来牙はと言うと臭さに耐えかねて咄嗟にゴミ箱から出ていた。
院長「ごきげんよう菜畑来季ちゃん。院長のおじさんだよ~」
その奥のベットの上の赤ん坊、菜畑来季と言う名前の赤ん坊に対して院長は薄気味悪さすら感じる馴れ馴れしい声で話しかけていた。
源三「赤ん坊に話しかけておる、旗から見たら爺バカじゃな」
来季「ぶーぶー、詰まんない~!もっと面白い本読ませてぇ~!」
源三「…………!ま、マジで喋ってるのじゃ……」
その赤ん坊が流暢な日本語をペラペラと喋る光景を目の当たりにして源三は改めて噂が本当であったと言う確信を得たのだった。
院長「ああ、分かっているさ、君にはこれからもたくさんの知識を身に付けてもらわなくてはならないからね、おじさんは君の類まれな素質を最大限に生かしてあげたいんだよ、分かってくれるね?」
来季「それよりそれより、もっと面白い発明品とか作りたい!作る材料欲しい~」
院長「ああ、発明家も良いじゃないか!医療を飛躍的に進歩させる発明品を作ってくれ!それを我が病院で独占して医学界を牛耳るのも容易い事だ!」
そんな悪辣な院長と天才過ぎる赤ん坊の常識離れしたやり取りを源三はじっと聞き続けていた。
源三「ま、マジじゃ……!マジで天才じゃ!あ、あの赤ん坊は絶対に我が手中に収めるのじゃ!」
源三はこの場で院長を気絶させるためにゴミ箱に入ったままこっそりと接近する。流石の源三も緊張を隠せないのか、身体がかなり力んでおり、お腹に力が入る。
ブゥ―――――!!
源三「くっさぁ―――――――――!!」
院長「な、なんだ貴様は!?」
腹に力が入った源三は狭いゴミ箱の中でおならをして自らの臭さに声をあげてしまっていた。
源三「おのれ~、あと一歩で貴様を秘密裏に処理できたのに失敗じゃ!」
院長「ワシを処理だと!?」
源三「そうじゃ!ワシは正義の男として赤ん坊を悪用しようと目論む貴様を成敗しに来たのじゃ!」
源三は赤ん坊の方をチラチラと横目で見ながら自分が正義の味方アピールをしていた。
来季「ぷぷぷ~、本当はラッキーを利用してお金儲け企んでるんだよね~?考えてる事バレバレ~」
源三「なにぃ――――!!天才はエスパータイムじゃったのか!?」
来季「エスパーじゃないけど見てれば考えてることくらいわかるも~ん」
院長「何が正義だ!貴様こそ金の亡者め!この病院で墓を作ってくれるわ!」
源三「黙れ黙れ黙れ!貴様如きに天才の赤ん坊は渡さんわ!!」
来季の天才的頭脳を狙う二人の外道な大人たちの争いが始まったのだった!