第57話 友と友、涙の別れのベイバトル!
※マーゾ溝口の奴隷願望記
ここはマーゾ溝口の部屋。溝口はこの自分の部屋を根城にして常日頃から美少女に甚振られる自分を想像しているのである。
溝口「蹴られる俺、唾を吐きつけられる俺、股間を踏まれる俺、どれも俺にとってはまさにご褒美だぜ」
溝口の机にはお気に入りの少女達の隠し撮り写真が並べられている。溝口の中では彼女たちは全員ドSとして脳内設定が為されているのである。
溝口「今行くぞお前ら!お前は俺を甚振り俺はお前に甚振られる!こうして俺達はお互いの欲求を満たすのだ!」
相手の少女にしてみれば押しつけがましい迷惑行為でしかない行動を溝口は決意するのである。
母親「何時まで気持ち悪い声出してんだい!さっさと晩飯食べなさいバカ息子が!」
溝口「うるせぇクソババァ!テメェなんぞお呼びじゃねぇよ!」
マーゾ溝口(33歳)。実家暮らしで61歳の母親と2人暮らしである。
☆
JK「それでさ、そいつ鼻水たらしながら告白したらしいよ」
JK「超キモいし!それ絶対に振られる末路しか有り得ないし~」
派手なメイクをしているギャル系のJK二人が、とある男子生徒を貶す会話を楽しんでいた。
JK「それが告白された子ったらド天然でさ、『そんなに私の事が好きでいてくれるならぜひよろしく』って言って付き合っちゃったらしいよ~」
JK「ヤバいし!その子って女神なの?」
JK「それがね、告白した鼻水男が実はドMで、告白された女の子は清純に見えてドSだからお互いの性癖の愛称ばっちりなんだって~」
JK「ヤバいし!マゾの男とか生きてる価値ねぇよ!」
そんな会話を楽しむJK二人の前にそれは現れるのである。
溝口「俺を蹴れぇ――――――――!!」
女用のヒモパンツを穿いただけの溝口が女子高生達の前に突如として姿を現す!
JK「「き、キモォ――――――――――!!」」
その悍ましい姿とマゾヒスト丸出しの台詞に二人のJKは大きな悲鳴をあげていた。
溝口「俺は生きている!女に甚振られる事で生きる価値を実感するんだぁ――――――――!!」
JK「お前死ねよ!マゾ男とか生きてる価値ねぇだろ!」
JK「せめて自分で自分の足でも蹴ってろよ!」
溝口「俺を蹴れぇ――――――――――!!」
JKの罵倒を受けて更に気合を入れるように溝口は二人のJKに迫り続けるのだった。
☆
少女「今度のキャンプ楽しみだね~」
少女「カレーライスを自分達で作るんだよね、大丈夫かな~?」
ところ変わってこちらは二人の女子小学生。学校の臨海キャンプを控えており、今から楽しみでどんなキャンプになるかで盛り上がっていた。
少女「こういう時ってさ、やっぱり好きな子に告白ってあるのかな~?」
少女「実はアタシ、1組の田辺君に興味あるの」
少女「田辺君ってあの草食系の男の子だよね。ああいう子って結構人気なんだね~」
そして恋バナが始まろうとしていた矢先だった。
溝口「お・れ・を……!!」
少女「な、何?」
少女「誰ですか!?」
茂みから声が聞こえたと思うと産毛の生えた見るからに中年男性の物と思わしき生足が出てきて少女達を驚かせる。
溝口「俺を蹴れぇ――――――――――!!」
少女「イヤァ―――――――――――!!」
女物のヒモパンツを穿いた男の出現に少女は恐怖で悲鳴をあげていた。
溝口「俺を蹴れ!臨海キャンプの思い出作りの前菜に俺を蹴れぇ――――――――!!」
少女「や、止めて下さい!止めて下さい!い、嫌ぁ――――――――!!」
少女「そんな思い出イヤァ!」
溝口「俺を蹴って、唾を吐きつけるが良い!」
溝口は少女達にさらに迫るとヒモパンツでギリギリで隠した股間を彼女たちの顔に近づけるのだった。
少女「もう嫌だよぉ――――!」
少女「誰か助けてぇ―――――!」
※ベイバトォォォォルッ!!それは熱きベイブレイダー達による戦い!
ベイバトォォォォルッ!!それは人生の縮図!そして男のロマンである!!
源三「ゆけぇぇぇ!ワシのドラゴーンナイトォォォ!!」
『友と友、涙の別れのベイバトル!』
薮井「やっぱり、あれはユーリさんの勘違いのようだったな」
源三「全くじゃ!アンタの勘違いは凄まじいわ!」
ユーリ「いや~、私としたことがトンデモナイ勘違いしちゃいました~、まさか真犯人を操っていたのがタバコ屋のお婆ちゃんだったなんて予想外でした~」
ここはユーリが経営するベイブレイドショップ。源三達にとっては溜まり場でもある。
鳥飼「…………」
ユーリ「おや、鳥飼君じゃないですか~」
そこに、仲間内の一人である、鳥飼がやってきていた。
源三「鳥飼、遅かったではないか!ほれ見ろ!口に入れただけでバチバチと弾ける、バチバチキャラメルじゃ!貴様も食え食え!そして口の中をバチバチさせるが良いわ!」
源三はゲラゲラと笑いながら、鳥飼にキャラメルを渡そうとする。しかし、その鳥飼の表情は妙に険しい、そして次の瞬間だった。
ばちん!
鳥飼は源三の手を払いのけるのだった。
源三「ほ、ほげ?」
薮井「鳥飼、お主はいきなりなにをしているのだ!?」
鳥飼「部外者は黙ってな!これは俺と源三の問題だ!」
ユーリ「一体どういう事なんですか鳥飼君!?」
鳥飼はユーリや薮井のいう事にはまともに答えることはせず、源三を睨み付けたまま指を指してこう言い放った。
鳥飼「源三!俺ベイバトルだ!」
源三「貴様がワシとベイバトルじゃと!?」
その言葉にその場にいる者たちは全員驚愕する!
源三「待て!なぜワシと貴様が戦わなければならんのじゃ!?仲間内でどういう事じゃ!?」
鳥飼「源三、テメェは俺とは、仲間とは戦えねぇってのか?」
源三「そもそもワシらが戦う理由などないじゃろうが!」
鳥飼「仲間とはあくまで戦えねぇってか……だったら俺たちはもう仲間じゃねぇ!!」
源三「な、なんじゃと!?」
薮井「鳥飼!おぬしは本気で言っているのか!?」
鳥飼「こんな事を冗談で言うわけがねぇだろうが」
鳥飼の目には全くの迷いが感じられなかった。
鳥飼「とにかく、俺の挑戦を受けろ!」
源三「さっきから本当にどうしたというのじゃ!?鳥飼よ、貴様はいったいどうしたのじゃ!?」
鳥飼「うるせぇ!テメェがあくまで俺の挑戦を受けねぇっていうのなら、こっちにだって考えがある!覚悟しやがれ!!」
そう言い捨てて、鳥飼は店を出て行ったのだった。
源三「な、なんなんじゃ鳥飼の奴……」
☆
次の日の朝、源三は昨日の鳥飼の態度の事をなんとなく考えながらぼんやりと家で朝食を食べていたのだったが。
絵梨「お、お父さん!外見て大変だよ!」
源三「な、なんじゃ絵梨よ!?」
孫娘の絵梨が慌てながら、そんな事を言ってきたのだった。
絵梨「とにかく外を見てきて!なんかいろいろな意味で変なことになってるから!」
源三は絵梨に言われるがまま、家の外に出たのだった。
鳥飼「宮永源三は臆病者だ――――――――!!」
源三「と、鳥飼!?」
そこには、メガホンを持って源三を臆病者呼ばわりする鳥飼がいたのだった!
鳥飼「皆さん!宮永源三は俺とのベイバトルを拒否して逃げている臆病者だ!こんな臆病者を許していいのだろうか!?」
来牙「玩具対決って、絶対に引き受けなくちゃならないのか……」
その演説の内容に来牙は常識人の観点からかなりの違和感を感じていたが、源三は真剣な表情で鳥飼を止めに行く。
源三「と、鳥飼!貴様一体何をしているのじゃ!?」
鳥飼「現れやがったな臆病者の宮永源三!!俺との挑戦から逃げておいて何しにノコノコと現れやがった!」
源三「いい加減にするのじゃ!貴様はいったい何をしているのかわかっておるのか!?」
源三は鳥飼の胸ぐらをつかんで迫っていた。
鳥飼「分かってるぜ、だが全て事実だ、オメェが俺との戦いを避けてる臆病者だって事がな!」
そう言い放つと鳥飼は源三の手を払いのける。
鳥飼「明日の早朝、バトルコロシアムで待ってる、逃げるんじゃねけぞ!」
そして、それだけ言い残して鳥飼は去っていったのだった。
源三「わ、分からん!分からんのじゃ!鳥飼がなんであんなことになってしまったのか分からんのじゃ!」
来牙「分からんと言えば、なんでいつの間にかアンタ達のベイブレイドを扱ったストーリーと化しつつあるこの作品の趣旨も俺は分からないな……」
絵梨「しかも、良い年の大人たちだよね……」
翔「ったく、もう見てられねぇな……」
そんな、混乱する源三と冷静な突っ込みと感想を口にした来牙の前に現れたのは来牙のクラスメイトの遊佐翔だった。
源三「ど、どういう事じゃ!?」
翔「俺様に説明させてくれ、鳥飼の爺さんがなんであんなことを言ってるかについてな」
源三「何か知っておるのか!?」
絵梨「なんか、またややこしくなりそう……」
来牙「俺たち、この会話から外れて良いよな?」
結局、この場にいるメンツに加えて、薮井とユーリも含めての翔の説明が始まるのであった。
☆
翔「鳥飼の爺さんはな、明日の昼には日本を出発しなくちゃならねぇんだよ」
薮井「鳥飼が海外にじゃと!?全く知らなかったのだ!」
それは、源三達にとってあまりにも唐突な事実であった。
ユーリ「だけど、だからってなんで、早急に源三君とバトルする必要があるんですか?日本に帰ってきてからじゃダメなんですか?」
ユーリの問いに対して翔は軽くため息をついて重い口を開く。
翔「次に日本に来れるのがいつになるかなんて分からねぇんだよ」
薮井「ど、どういうことなのだ!?そもそもなぜ鳥飼がいきなり海外に行くことになったのだ!?」
翔「仕方ねぇだろ!鳥飼の爺さんはフェイスブックに就職することが決まったんだからな!」
ユーリ「ふぇ、フェイスブックですって!?あの、超有名なSNSにですか!?」
来牙「68歳で海外に就職……」
絵梨「無茶苦茶嘘くさいね……」
来牙と絵梨の的確な指摘は誰の耳にも入らずに話は進む。
翔「アイツにとって、フェイスブックの就職は子供のころからの夢だったってのは源三の爺さんの方が良く知ってんだろ?」
源三「うむ、奴は子供のころからフェイスブックで働きたがっていたそうじゃ、昔から何度も聞いたわい」
絵梨「フェイスブックって創設されたのって2004年だよね?」
来牙「こいつらが子供のころ存在してないな」
またしても来牙と絵梨の的確な指摘は耳に入らないまま話は進む。
翔「だからよ、アメリカに行く前に奴はアンタとの決着を付けたいって事なんだよ!」
源三「……全く鳥飼め、肝心なことは何時もだんまりじゃな……」
ユーリ「無理もありませ~ん。それを知ったら源三君は自分に気を使ってワザと負けると鳥飼君は思ったんで~す」
源三「……否定はできん」
翔「そんな勝負は奴は望んじゃいねぇ、奴は真剣勝負で日本での最後の勝負をアンタで飾りたいんだよ、だからよ、俺様のこの話を聞いたからって手を抜く真似は許されねぇぜ」
来牙・絵梨「「…………」」
来牙と絵梨は内心でこう思っていた。ホビーの勝負でワザと負けるくらいいいのではないかと……
源三「分かったのじゃ!奴の仲間としてワシは、アメリカに旅立つ奴の挑戦を全力で受けるのじゃ!」
こうして、源三は鳥飼の挑戦を受ける決意を固めたのであった!どうなる源三と鳥飼のラストバトル!?




