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第45話 一週間以上遅れましたがバレンタインの話です

2月14日はバレンタインデーである。女性が好きな男性にチョコレートを贈る日であるが、友チョコなど義理チョコなど、友人間でもチョコのやり取りは行われる。

源三「つまり、ワシにもチャンスがあるというわけじゃな!」

そしげ、源三もチョコを狙う男の一人であった!70歳手前にして自分モテますアピールをもくろむこの男は、自信満々にこの日を楽しみにしていたのだった!

源三「ああ~、今日はいったい何の日じゃったかな~?最近物忘れがひどくて忘れてしまったのぉ~」

朝からあからさまにバレンタインを意識している事がバレバレの源三であった。孫娘の絵梨からチョコを貰えることを期待しているのだが、自分からは積極的にチョコを要求せずに絵梨の方からくれるのを期待しているのである。

絵梨「来牙君、これ作ったから食べてね」

来牙「お、毎年毎年ありがとうな」

源三「…………」

が、いきなり源三は目の前で見たくない光景を見せられるのだった。絵梨が丹精を込めて作り上げた手作りチョコを毎年受け取っている来牙。この兄妹にとっては毎年のやり取りである。妹から兄に渡されるはずのチョコなのにもかかわらず見た目はまるっきり本命にしか見えない出来栄えなのである!

絵梨「ううん、アタシのほうこそ毎年受け取ってもらって嬉しいよ。来牙君にプレゼントするバレンタインチョコが一番楽しみな瞬間でもあるんだよ。アタシにとってバレンタインは来牙君にチョコをプレゼントするのがメインだからね」

来牙「妹からのチョコでも彼女から貰う以上の満足感だと思うぞ今の俺は」

源三「お、おのれ……!」

源三は眉間に皺を寄せて、拳を握り締めていた。今すぐに来牙からチョコを奪い取りたい気分であるがそれをやったら自分が絵梨からチョコを貰うチャンスも完全に失われるのでギリギリで堪えるのだった。

源三「ごほっ!ごほっ!」

そこで源三は取りあえずわざと咳き込んでみるのだった。

源三「ごほっ!ごほっ!」

こうすることで、絵梨に自分の存在を知らしめて、絵梨が『あ、ごめんごめん、お父さんの分もあるからね』などと言うのを期待しているのである!が、源三は失念していた、今年2017年のバレンタインは3年ぶりの平日バレンタインであることを!

来牙「おっと、こんな事してる間に時間だぞ」

絵梨「早くしないと遅刻しちゃうね、急ごう!」

源三「…………」

結局、絵梨は源三に一言も声をかけないまま、来牙と一緒に登校するのだった。





源三「…………」

源三は何となく、来牙と絵梨が通っている学校に来てみたのだった。登校中の女子生徒たちは皆、バレンタインにチョコを渡すことを楽しみにしているのか晴れやかな表情だった。

源三「老人にもチョコを!」

気が付いたら源三はそんな事を口にしていた。

源三「老人にもチョコを!老人にもチョコを!老人にもチョコを!」

源三はひたすら老人にもチョコを連呼していた。チョコを中々もらえない源三は見ず知らずの女子高生からでも貰いたい一心での奇行であった!

源三「バレンタインは若者だけのものではない!老人にだって女子高生からチョコを貰う権利はあるはずじゃ!」

教師「何者だ?」

が、そんなことをしていたら当然不審者と判断されるのは当然であった。筋骨隆々の教師が源三の肩をつかんで背後から凄みにある声で声をかけてくる。

源三「男に用はない!友チョコなどいらん!」

教師「不審者は出ていけ――――!!」

こうして、源三はあっさりと追い出されるのだった。そしてその光景は来牙と絵梨も実は見ていたのだった。

翔「おいおい、お前らんとこの爺さん、バレンタインになると毎年あんな感じなのか?必死だったじゃねぇか~」

来牙「あんな爺さんは知らないぞ」

来牙は同級生の翔に源三のことで絡まれたが、面倒なので他人のふりをしようとしていた。

翔「あの年齢で女子高生に声かけるって勇気あると思うぜ、援交目的の爺と勘違いされるご時世だからな~」

美咲「その辺にしておきなさいよ、恥ずかしい身内のことで揶揄われる気持ちを少しは考えなさいよ……」

有紗「こればっかりは来牙君が可愛そうだと思うよ!」

翔「なんだよ?美咲はともかく有紗が来牙のフォローとか珍しいじゃねぇかよ」

有紗「まぁ……恥ずかしい身内のおかげで右往左往するのは他人事じゃないしさ……」

翔「今日はバレンタインだし、来牙の気持ちがわかるお前がアイツに励ますついでにチョコやったらどうだ?」

有紗「ああ、アタシ学校の連中にあげるチョコとか無いからね」





源三「そもそも何時からなんじゃ!?いつから日本はバレンタインなどと言うようになったんじゃ!?」

鳥飼「そうだよな!なんでただのチョコを渡すやり取りに愛だとか恋だとかが絡むんだっての!」

薮井「そもそも日本でバレンタインに浮かれている連中は無知なのだ!諸外国でバレンタインにチョコを渡すイベントなど殆どないぞ!」

源三達は何時もの迷惑老人トリオで集まっていた。なるべく、チョコを見たくない気分であった源三と鳥飼と薮井は昼間から飲みまくろうと考えたが、居酒屋が営業している時間でもないので、適当なファミレスで酒を飲んでいたのだった。

ウェイトレス「お客様、本日はバレンタイン感謝デーですのでチョコパフェやチョコクレープが割安価格で提供できますが如何なさいますでしょうか~?」

そんなウェイトレスの気を利かせた接客なのだったが、源三達にはそれが気に障ったようであった。源三達は互いに顔を見合わせると、捻くれた表情でウェイトレスのほうを向く。

薮井「ふむふむ、こんな日に爺三人が揃って実に侘しくて惨めな光景だわ……と言うわけだな」

ウェイトレス「え?」

いきなり薮井が妙な言いがかりをつけてきて、ウェイトレスは何のことかわからずに混乱する。

鳥飼「バレンタイン感謝デー?バレンタインに感謝しなくちゃならねぇ義理何てねぇんだよ!」

ウェイトレス「す、すいません……?」

ウェイトレスは反射的に頭を下げていた。最も、老人たちが何に怒っているかなど分かるわけもないのだが。

源三「こんな日なんだから、チョコも貰ってない爺共の相手してないで早く彼氏にチョコを渡したいとはっきりと言ったらどうなんじゃ――――――!!」

ウェイトレス「め、めっそうにもございません!」

源三がかなり無茶苦茶な言いがかりをつけてウェイトレスは完全に慌てふためいていた。

源三「全く、最悪な日じゃな!お年玉を強請られる正月のほうがマシじゃな!」

鳥飼「来年からは2月14日は海外で過ごした方がいいみたいだな!」

薮井「どこもかしこもバレンタインに媚びるとは嘆かわしいのだ!」

源三達は文句を言いまくりながら店を出ていくのだった。

ウェイトレス「って、お客様お代を払ってください!」

無論、酒代は支払わなければならなかったが。





源三「おのれ~、今日は一日チョコと言う単語が常に聞こえてくるのじゃ~」

鳥飼「俺、あのファミレスを出てからここに来るまでもう、チョコの受け渡し現場を3回も見ちまったぜ!」

薮井「私はチョコを貰った男がその場でチョコを投げ捨てて破局する現場を見たいものだな」

やさぐれた状態になった源三達はファミレスを出てからは競馬場に来ていた。バレンタインデーもギャンブルに熱中する者たちの戦場では今日が2月14日であるとは感じることがなく、源三達はこの日をこの場で過ごし続けようと考えていた。

鳥飼「ここで一発当たったら、バレンタインを忘れられるくらい酒飲めそうだな」

薮井「そうだ!我々にチョコなど必要ない!あんな物はどこかに監禁された際の救助が来るまでの非常食で充分だろう!」

源三「じゃろじゃろ~!ワシらにはバレンタインなど関係ないのじゃ~」


が、この老人トリオはこの後、今までの人生ではあり得ないほどのチョコだらけのバレンタインを迎えるのであった……続く!

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