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第37話 パラレル劇場+続く醜い争い

~パラレル劇場(前編)~


タイトル:キャラに成りきるオタク


キャスト

主人公     沢渡美咲

成り切りオタク 宮永絵梨




アタシは今までアニメとかゲームとかのサブカルチャーの趣味とは無縁でいた。だからそれに嵌っている人たちがどんな人なのかなんて知る由もない。

だけど、私が初めて関わるようになったアニメオタクの少女。この子は絶対に一般的なオタク像からかけ離れているのはなぜだか断言出来た。

絵梨「おーっす。美咲、元気してたか~?」

アタシ「あ、絵梨ちゃんおはよう」

アタシに対して陽気に挨拶をしてきたこの少女は宮永絵梨ちゃん。一見すると彼女は元気で陽気な正確に感じるけど実は彼女、自分が現在気に入っているキャラに成りきろうとする風変わりな趣味を持ったオタク少女だったりする。

絵梨「なぁ美咲~。来週の月曜日の学校帰りにカラオケよってこうぜ~」

アタシ「えぇ、今日は別に用事内から特になんともないんだけど」

ちなみに今の絵梨ちゃんはちょっとボーイッシュな元気っ娘キャラに嵌っているらしく喋り方も男勝りで性格もやたらとはきはきしているように振る舞っている。

絵梨「おっ!なぁなぁそれと知ってるか?今日から学食に新しくコロッケカレーってのが期間限定でメニューに入ったんだってよ!」

アタシ「あら、それ初耳よ。カレーにコロッケって遭うのかどうかわからないけど一度試してみようかしら?」

絵梨「何事も冒険冒険。食って美味かったら次もまた食って期間があるまで飽きるまで食い尽くしてやろうぜ!」

アタシ「あら、絵梨ちゃんったらそんなに同じメニューばっかり食べてたらすぐに飽きちゃうわよ」

この男勝りの元気っ娘キャラはまだ良かった。見てて明るいし、あたしにとっては話しやすい相手だったから。しかしその次の週の月曜日。その時には彼女は既に別のキャラに興味が移り変わってアタシは全くの別人となった絵梨ちゃんとカラオケに行かなければならないのであった





女生徒「あれ?宮永さんどうしたのその眼鏡?」

女生徒「もしかしてイメチェン?意外と似合ってたりして?」

男子生徒「だけどよ、スカート長くしちまったのは勿体なくねぇ?宮永のショートスカートって俺結構グッと来てたのによ」

月曜日の朝、絵梨ちゃんはクラスの多数の生徒達から注目を浴びていた。それは絵梨ちゃんが眼鏡を掛けている上に今まで短めだったスカートをいきなり長くして来たからである。クラスの大半は絵梨ちゃんなりのイメチェンだと思っているけどなぜいきなりそうなったか私には大体察しが付く。

絵梨「皆さん。少し道を開けてくれませんか?教室の扉に集まっていては他の生徒に迷惑がかかります」

女生徒「え?ああ、ご、ごめんなさい……」

女生徒「み、宮永さんってあんな真面目な人だっけ?」

男子生徒「て言うか、何でクラスメイトに敬語?」

絵梨ちゃんはゆっくりと真面目そうな雰囲気を漂わせてアタシに近づいてくる。一応アタシの方から先に挨拶しようかしら。

アタシ「お、おはよう絵梨ちゃん」

絵梨「おはようございます沢渡さん」

先週までの男勝りの元気っ娘とは全く違った子の態度。友人であるあたしに対してすら敬語で苗字で呼ぶようになっている。

これはおそらく生真面目タイプの眼鏡っ子委員長キャラに嵌っているみたいね。この手の堅物はアタシは苦手なので一日でも早く別のタイプのキャラに興味が映って欲しいと思う。

アタシ「ああ、そういえばさ絵梨ちゃん。今日のカラオケなんだけど……」

絵梨「沢渡さん」

アタシ「はい」

分かってはいたことだけどアタシが先週のカラオケの約束(絵梨ちゃんの方からしてきた)のことを持ち出そうとすると絵梨ちゃんはピシャッとアタシの言葉を遮って眼鏡をくいっと指で動かす。

絵梨「校則を忘れたのですか?学校帰りにゲームセンターやカラオケなどの娯楽施設への立ち入りは禁止されていると」

アタシ「そうだったわね……」

この手のキャラは現実の委員長とはかけ離れているほどとにかく生真面目らしくやたらと校則や普段の振る舞いにはやけに気を使うので一緒にいる方も滅入ってしまう。

絵梨「では沢渡さん。もうすぐ朝のHRホームルームが始まるのでこれで失礼させて頂きます」

アタシ「ええ、変なコト聞いてゴメンね……」

そんな感じで朝のHRが始まり続いて一時間目の英語が始まる。

ここでアタシから一つ補足。アニメキャラに成りきろうとするオタクはあくまで性格や雰囲気や言動などを真似しているだけであってそのキャラの特技や能力まで真似できるものでは決してない。だから絵梨ちゃんは……

教師「それでは宮永。この英文を日本語に訳して見なさい」

絵梨「え……す、すみません。何一つわかりません」

このように委員長キャラになったからと言って学力が高くなったりするわけではないのは言うまでも無かった。




※前回のあらすじ



薮井は源三と鳥飼を出し抜いて一人、迷路の攻略に勤しんでいたが、当然、源三と鳥飼の報復にあったのであった!が、そんなドサクサの最中で、源三と薮井が争っている間に鳥飼は薮井が手に入れた地図を奪っていってしまった!



鳥飼「おお、これで3枚目の地図ゲットだぜ!」

薮井の持っていた地図を手に入れた鳥飼はその情報を元にして3枚目の地図を手に入れていた。

鳥飼「上手くいけば、確実に俺が一番乗りで金塊をゲットかもな、それも今日のうちにだ!」

源三と薮井を出し抜いて時間が経っているが、中々現れないのでもはや自分に追い付いてくるわけがないと高を括っていた。

鳥飼「はっ!俺は絶対に金塊を手に入れるぜ!俺が金塊をゲットした暁には、世の中のピチピチした10代20代女たちを全部買い占めてやるぜ!悔しがる若い連中の視線は酒の摘み程度にしてな!」

既に金塊を手に入れた後のプランを考えている鳥飼だった。

鳥飼「お、早くもこの近くに4枚目の地図があるみてぇだな!そいつもゲットしてやるぜ!」

鳥飼は既に4枚目の地図が近くにあることに気が付いて、早速自分の居場所を把握できるように地図に目を向けたまま移動する。

鳥飼「お、あれだ!」

その箱は源三が3枚目の地図を手に入れた宝箱とそっくりで、源三はあの中に新しい地図があることを確信して駆け寄る。箱の中を開けるとその中には大量の地図が入っていた、多くの客が取る事を配慮して同じ地図が大量に入っているのだろう。地図の前にはカメラが設置されており、『一人につき一枚まで!2枚以上取る事を厳禁とする!』と書かれていたのだった。

鳥飼「一枚あれば十分だっての、これでまた金塊に一歩近づいたぜ」

源三「貴様は金塊に永遠に触れてはならんわ――――!!」

鳥飼「げ、源三!?ぐほぉ!!」

が、地図を入手した途端にいきなり源三が後ろから大声を出して殴りかかってきていた!

薮井「やはり貴様はここに来たのだな鳥飼」

鳥飼「や、薮井、テメェもか!」

そこには薮井も姿を現していた。

薮井「私は私なりにあの地図の内容を覚えていた、だから私はあの地図の記憶を頼りに、別方向で地図を集めて貴様がいずれココに来ることを予測して待ち構えていたのだ」

源三「そしてノコノコとやってきた貴様をこうしてぶち殺すってわけじゃ!覚悟しやがれなのじゃ――――!!」

鳥飼「うるせぇ―――――――一!!」

源三「ぐげぇ――!!」

今度は鳥飼が源三を正面から蹴り飛ばしていた。

鳥飼「ザコ共が俺の邪魔してんじゃねぇよ!金塊は俺の物だ!テメェらにくれてやる金塊はねぇ!!」

薮井「貴様のような低能な輩に金塊がふさわしいわけがあるか!おとなしくここで消えるがいい!」

源三「勝つのはワシじゃ!ワシが金塊を手に入れて人生ウハウハになるんじゃ――――――!!」

再び争い始める3人の老人たち!果たして勝ち残るのは誰なのだろうか!?

タダシ「ああ、地図が中々手に入らないな~」

そんな源三たちとは関係なく、この巨大迷路に一人で挑戦していたタダシ青年(22歳)は地図をいまだに一枚しか持っていない状態で迷路をウロウロと彷徨っていた。

タダシ「僕は……どうしても金塊が欲しいんだ!金塊を手に入れて幼馴染のみっちゃんにプレゼントするんだ!」

そう、タダシは小学校時代からの幼馴染の女性、みっちゃんに恋をしていたのだった。彼はみっちゃんの今度の誕生日プレゼントに金塊を渡すつもりで燃えていたのだった!

タダシ「ん……?」

そんな最中にタダシは争い続ける三人の老人を見つけるのだった。

源三「死ね!末裔まで死ね!」

鳥飼「テメェらは地上に出てくるな!」

薮井「貴様らのようなバカが私のような天才の足を引っ張ることになぜ気が付かん!」

タダシ「…………」

その様子を見たタダシは使命感を感じる、自分がこの争いを止めなくてはならないのだと。

タダシ「止めてぇ――――――――――!!」

タダシはそう叫びながら争い続ける老人たちに向かって突撃した!

爺共「「「ぎょわ―――――――!!」」」

が、タダシは実は高校時代空手のインターハイ出場選手だった!鍛え上げられた体で思いっきり体当たりをされた源三達は全員まとめて吹き飛ばされていた!

源三「ぎゃふんっ!」

鳥飼「ぐえっ!」

薮井「ばびょんっ!」

源三は床に叩き付けられて、鳥飼と薮井は壁に叩き付けられたのだった!

タダシ「はぁ……お爺さん達!争いはいけません!」

源三「…………」

鳥飼「…………」

薮井「…………」

源三達は返事をしなかった、何故なら三人とも気を失っているからである。

タダシ「いけない!そろそろ閉演時間だから急がないと!」

タダシはこの巨大迷路の閉演時間である午後の6時が迫っていることに気が付いて慌てて移動を始める。地図を手に入れた参加者は次回の参加時にそれを最初から持った状態で始められるのだが、タダシは一枚も持っていないのでせめて一枚くらいは手に入れて次回に再挑戦したいと考えていたのだった。





アナウンス「閉演の時間になりました、迷路内に残っているお客様は係員の指示に従い、地下の出入り口から迷路の外に出て下さい」

そして閉演の時間となり、迷路内の客たちは近くにある地下への出入り口を使って次々と外に出ていくのである。

絵梨「あ~あ、さすがにきょう一日で終わらせることはできなかったね」

来牙「こうやって何回も来させて、その度に入場料を取るとは上手い経営者だな」

来牙と絵梨も一番近くにあった地下の出入り口から外に出ている最中だった。

絵梨「ところでお父さんはどうしたのかな?もう先に出ちゃったのかな?」

来牙「さぁな、流石に何時までもここに残るわけにはいかないだろ、閉演時間後も出ないで迷路に隠れてたらこの迷路は元々の出入り口どころか地下の出入り口もオートロックで占められて、閉じ込められるからな」

絵梨「そうだったね、そうしたら明日までこの迷路内から完全に出られなくなっちゃうからね」

こうして、来牙と絵梨を含めた客たちは全員、迷路から出たはずなのであった。

アナウンス「閉演時間を過ぎています、まだ迷路内に残されているお客様は速やかに近くにある地下の出入り口を使って外に出て下さい、地下の出入り口が見つからない場合は、コールセンターにお問い合わせください」

そんなアナウンスが流れてから数分が経過してもコールセンターにはなにも連絡がなく、経営側はすべての客が迷路から出たと判断したのであった……

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