第26話 格闘予測プログラム?ラッキーVS不良青年
前回のあらすじ
来牙はラッキーに家に案内された。ラッキーの自宅は古びた印象の木造住宅であったが、家のクローゼットに入ってしばらく待っていると、なんと外に出た来牙が目の当たりにしたのはラッキーが作り上げた秘密の地下研究所であった!
☆
来牙「あの小さい家の地下にこんなだだっぴろい地下研究所を作ってたのか……」
ラッキー「今でも増築中だからね、これからもっと広くなる予定だよ~」
目の前の天才幼女の途方もない記述力とそれを実現できる財力を目の当たりにして、来牙は中々それ以上言葉が出てこないが、ラッキーはいたって、笑顔のままで地下の研究所を来牙に披露していた。
来牙「と言うか、ここって確か賃貸住宅じゃなかったか?勝手に作っても大丈夫なのか?」
ラッキー「ノープログレムだよ~、このお家と土地はとっくに大家さんに直談判してね買取済みだから」
そう言いながらラッキーは土地の所有権を示す権利書を来牙に見せていた。その権利者の名前の欄には確かに10歳の幼女であるはずのラッキーの名前である菜畑来季と書かれていた。
来牙「その年齢でマイホームと土地を所有したか、順風満帆だな」
ラッキー「まだまだだよ~、この研究所でやりたいことは沢山あるし作りたいものも沢山あるからね、それこそ日本人の平均寿命の80歳前後じゃ足りないくらいだからさ、若返りの薬や肉体の老化を鈍化させる薬を開発してる最中なんだよ~」
来牙「まるで近未来SFの世界に入り込んだような気分だぞ、クローゼットの中に数分間入って、外に出ただけだってのに……」
実際には近未来どころでは済まないような未知の実験や研究をしているのであったが、この時点では来牙はまだそこまで気が付いていなかった。
ラッキー「えへへ~、薬が完成したらラッキーはお兄ちゃん好みのロリボディを維持し続けられるんだよ~」
来牙「俺がロリコンである事前提で言うな」
ラッキー「お兄ちゃん、こっちこっち~」
ラッキーは来牙の手を引いたまま廊下を少し走り、巨大なシャッターのある部屋を案内した。
ラッキー「ちょっと待ってね~」
ラッキーがシャッターを開けると、その部屋の中の様子が来牙の前に曝け出されるのだった。
来牙「なんだ……ここ?」
そこには大量の機械がほぼ自動で色んな機械を作っている工場のような場所であった。
ラッキー「この部屋ではね、今は人型のヘルパーロボットを作ってるんだよ~」
来牙「言われてみれば作られてるのは確かに人型の形してるな……」
ラッキー「既にこの地下の研究所で20体以上が稼働中でね、ラッキーの研究を手伝ってくれたりね、地下の基地の警備や地上付近の監視とかもしてくれる便利なヘルパーさんなの~」
来牙「ヘルパーとか介護目的の範疇は軽く超えてそうだな」
実際に来牙の予想通り、戦闘面では並の人間では束になって掛かったところでまず相手にならない性能を誇り、ラッキーのサポートの面でも高度な研究の助手をできるくらいの性能は備わっているほどの高性能な人型ロボットなのである。
ラッキー「ロボットの研究と開発はほんの一環だよ、さっきも言った通り今はお薬の研究もやってるからね~、今度はコッチコッチ~」
再びラッキーに手を引っ張られて案内されるラッキー。旗から見ると幼い妹が兄の手を引いて遊びまわってるように見えなくもないが、実際には普通の男子高校生を天才幼女が自慢の秘密研究所を案内しまわっているのであった……
ラッキー「この部屋では様々な薬物の開発を実験してるんだよ~、殺気の若返りや肉体の老化を鈍化させる薬はもちろんだけどね、他にも例えばね、飲ませた異性を一時的に魅了するいわゆる惚れ薬とかね」
来牙「へぇ~……あれってリアルで作ってるんだな……」
ラッキー「ラッキーが作ってるのはね、媚薬みたいに性的に発情させる薬じゃなくって、実際に飲ませた相手に恋心を抱くように惚れさせる薬なんだよ~、もちろん性的に発情させる媚薬もラッキーは独自で研究と開発してるけどね、新しいのが出来たらお兄ちゃんにもプレゼントしちゃうよ~、思春期真っ只中の男子高校生にとっては媚薬も惚れ薬も喉から手が出るほど欲しい代物だよね~」
ニッコリと笑顔のまま来牙にそんな約束を平然としてしまう10歳の幼女だった。
来牙「10歳の幼女が男子高校生の心理を推察するなよ、だいたい合ってるかもしれないが……」
ラッキー「天才じゃない、普通の10歳の女の子でもその気になれば多分理解できちゃうよ~、だって男子高校生は基本的に一にエロで二にエロだからね~」
そう言いながらラッキーはぶかぶかの白衣を軽くチラチラと捲って素肌を見せつけて、来牙の反応を見てみる。
来牙「あのな……(キョロキョロ)そうやって、年上を(キョロキョロ)からかって遊ぶなよ、お前だって天才でもまだ10歳で(キョロキョロキョロ)子供で、中にはお前みたいな幼女を積極的に食い物にしようとしてる(キョロキョロ)大人だっているんだからな~」
ラッキー「お兄ちゃん、この独り言の間に9回チラ見しました~」
来牙「…………」
天才は来牙の視線の微妙な動きすらも見逃さないのであった!
ラッキー「そして、今回ラッキーが開発した画期的な発明品はね、既にラッキーが装備済みなんだよ~」
来牙「装備済み?」
いきなりラッキーは新しい発明品の話題に置いて本題ともいうべき話をし始めていた。
ラッキー「うんうん、ゾンビ映画を見てね、それの格闘シーンを見てそれを真似してみようってやってみたら出来ちゃった~」
来牙「お前にかかればフィクションの世界の装備やシステムをあっさりと実現できるもんなんだな、お前がその発明を世に発表しまくれば世界中が大騒動だな」
それこそ、10年前とは比較にならないくらいに、ラッキーの頭脳と技術力に目を付けた汚い大人たちが群がってきそうであった。
ラッキー「お兄ちゃん、やっぱりラッキーの事を心配してくれてるんだね、ラッキーがこの発明を世に知らしめて、その結果ラッキーが悪い大人たちに利用されて、最終的にロリコンオジサンたちの欲求不満を処理するロリッ娘フーゾク嬢にされちゃわないか心配してくれてるんでしょ~?」
来牙「前半はだいたいお前の言った通りだが、後半部分は全く考えてなかったことだからな」
などといいつつ、ラッキーに言われて来牙は多少なりとも、自由を奪われたラッキーがロリコン親父共に好き放題される姿を妄想してしまっているのである。思春期の性欲と妄想力はあらゆるエロイメージを編み出す事が出来、それは普段クールに振舞っている来牙とて例外ではない!否!むしろ実は来牙のような男子こそ性に関して並外れた欲望を秘めていたりするのであった!
来牙「で、お前が発明したフィクションで登場するような画期的な発明品って何だよ?」
来牙はそんな心理をラッキーに見透かされているのを誤魔化す為にも話題をラッキーの言っていた発明品に戻していた。
ラッキー「ふふふ、お兄ちゃん」
ラッキーはニコニコした笑顔からニヤリとした不敵な笑みに変貌していた。
ラッキー「ラッキーと喧嘩して勝てる~?」
来牙「…………」
ラッキーの言っていることの意味を来牙はしばらく理解しかねていた。
来牙「口で言い合っても天才のお前には上手く言い負かされそうだな」
ラッキー「違うの違うの~」
ラッキーは両手をパタパタと振りながら来牙の言ったことを否定していた。
ラッキー「そうじゃなくって~、バトルしたらラッキーに勝てるって意味で聞いてるの~」
来牙「いや、流石に負けはしない……だろ?」
ラッキーが言い直した喧嘩と言う意味は文字通り、殴り合いの腕っ節の強さを意味する言葉であった。無論来牙は幾らなんでも幼女であるラッキーに負けるとは思っていなかった。幾らラッキーが天才とは言え格闘技を極めたわけでも喧嘩慣れしてるわけでもないはずだからだ。
ラッキー「うっぷぷ~、普通はそう思うよね~?と言うか誰でもそう思うはずだよ~、例え仮にラッキーが空手とか格闘技をやってたとしても体格的に力じゃ絶対にお兄ちゃんの方が有利なはずだもんね~」
まるでラッキーは自分が勝てると言い切っているような言い方であった。
ラッキー「というわけでお兄ちゃん、ラッキーに殴り掛かるか襲い掛かって見て~」
来牙「いやいや、なんでだよ!?俺が10歳の幼女相手にか!?」
ラッキー「良いから良いから~、ラッキーを腕っ節で捻じ伏せた後は何しても良いんだよ~、だからファイト~カモ―ン!」
等とラッキーは来牙に対して自分に襲い掛かる様に促すが来牙は到底それに対して馬鹿正直に襲い掛かろうなどとは思わない、自分よりも遥かに非力で小柄で腕っ節とは無縁にしか見えない幼女相手なのだから。
ラッキー「さぁさぁ!力づくで幼女を自分の言いなりにして食い物にする暴漢魔になった気分でラッキーを襲って~」
来牙「…………仕方ないな」
取り敢えず来牙はラッキーに凸ピンでもして済ませようと軽く考えてみた、とはいえそれがラッキーに悟られないように油断させるようにゆっくりと近づいて……
カプ←ラッキーが来牙の指を噛む
来牙「え……?」
ラッキー「はい、お兄ちゃんの凸ピンは失敗でした~」
まるで来牙の凸ピンを予測したかのように阻止していた。
ラッキー「ね、ね、凄いでしょ格闘予測プログラム!常に相手の一手、二手先を予測した行動パターンで立ち回れるんだよ~」
来牙「な、格闘予測プログラム?」
ラッキー「もっともっと本格的に襲ってみて!殴り掛かって良いし!押し倒して良いし!」
来牙「……それは流石にな~」
僅かながらラッキーの言う格闘予測プログラムの片りんを見た来牙だったがそれでもラッキー相手に本気で襲い掛かるのは気が引けていた。
ラッキー「ありゃりゃ、お兄ちゃんは本当にラッキーの事を大切に思ってくれてるんだね~、だけどそれなら仕方ないよね、いったん外に出て試してみようよ~」
来牙「試す?」
ラッキー「その通り~、実験の続きは屋外で続行しま~す」
☆
その後、ラッキーの提案で地下基地から地上に出て、いきなりラッキーと2人で外に出ている来牙だった。ラッキーがどうしても実験の成果を来牙に見てほしいと言うので仕方なく付き合う事にしている来牙。
ラッキー「おあつらえ向きに如何にも喧嘩したくてしたくてしかたなそうなお兄さんがいます」
来牙「何処にだ?」
ラッキー「あそこ」
と、ラッキーが指さす前に、その男は大きな声を出すのである。
不良「あ~、誰か思い切り殴りてぇな~!喧嘩してぇよな~!」
堂々と大声で人に聞こえるようにそんな事を言ってのけており、周りの人達から露骨に距離を取られていた。
ラッキー「彼のその願い、ラッキーが叶えちゃいます!」
来牙「お前、何する気だ?」
ラッキー「とりゃ~!」
ラッキーは何時からか持って来ていた、水の入った風船球を投げつけていた。
不良「うわっ!なんだこれ!誰だコラァ!」
そしてそれを平然と不良にぶつけていたのだった。
来牙「…………」
ラッキー「あはは~、水浸し~、びっちゃびちゃ~」
不良「テメェかこのクソガキ!覚悟しろコラァ―――――!!」
自分がやったと言わんばかりに無邪気に笑っている当然怒りを露わに向ける不良がこちらに迫ってきていた、そして余裕しゃくしゃくの様子のラッキー。
来牙「本当に大丈夫なんだろうな……?」
そして不安を隠しきれない来牙、どうなるというのでしょうか?
続く




