第21話 今度こそ勝てるか源三?しかしそこで運命の悪戯が!
前回のあらすじ
なんと源三はパチンコ店が営んでいると言う金融業から金を借りる事にしたのだった!そしてその利息は何と10日で5割!源三は24000円を借りたので10日以内に36000円で返済しなくてはならないのだ!ところが源三はここで一発当てれば余裕で返せると考えて全く躊躇する事なく金を借りたのであった。
☆
一丈「では、こちらが24000円になります」
源三「ふぉふぉふぉ、これで12000発の玉を買って形勢逆転じゃわい!」
金を借りた源三は意気揚々とした様子で早速パチンコの玉に全額投入しに行く。
薮井「がははっ!これだけあれば私も大当たりを狙えそうだぞ!」
源三「ほげ……」
が、そんな矢先に聞き覚えのある下品な笑い声を聞く事になる。それは元病院の院長で今はホームレスの薮井だった。
薮井「み、宮永源三!貴様もいたのか!」
源三「驚いたのはワシじゃ!まさか貴様の様な無一文のホームレスがおったとはな!」
しかもその無一文のホームレスですら金を借りれたのだから源三はさらに驚く。
薮井「私は事前にネットで調べたのだ、この店で最近金融業を始めたと言う事をな」
源三「ホームレスの貴様がネットじゃと……?」
薮井「悪いか!すでに解約されたスマホでも無線Wi-Fiが使えるエリアに行けばネット位出来るだろうが!」
そう言いながら薮井が手にしていたスマートフォンは既に5年以上前のものと思わしき、見た目からしてくたびれた機種であった。
薮井「貴様は24000円で12000発か?私は48000円で24000発の玉を買うのだ!私の方が大当たりを出すチャンスは二倍と言うわけだな!ぐははははっ!!」
薮井は既に勝ち誇った様子で早速借りた金を全て玉に換金したのであった。
源三「全く愚かな奴め、貴様の様な運の無い男が幾ら注ぎ込んだところで待っているのは惨敗の二文字じゃろうが!」
薮井の姿を他人事と見なしている源三は自分には関係ないであろうと考えて、自身もパチンコ台に戻っていた。
源三「いざ勝負じゃ!この12000発の玉が大金に化けるぞ――――!!」
30分後
源三「うぬぬ!やはり手強いようじゃな!しかしワシにはまだまだ玉がたっぷりとある!この程度では終わらんぞ!」
30分後
源三「どうじゃどうじゃ~?そろそろ良いところに玉が流れてきておるぞ~。スロットも何度か当たりかけておるぞ~、これはそろそろ来るんではないのか~?」
60分後
源三「オラオラオラ―――――!どうじゃどうじゃ!?そろそろ当たりが出るころじゃな!?そうじゃろうが?ワシの怒涛の攻撃はまだまだ続くわ!もはや逃げられると思う出ないわぁ――――――――!!」
30分後
源三「た、頼む!当たってくれ当たってくれ当たってくれ!ワシにはもう後がない!ここで当たってくれないとワシの今後が大きく変わるのじゃ――――――――!!」
10分後
源三「夢……こんな夢もあるんじゃな~、だって夢としか考えられんのじゃ、こんな事ってきっと夢じゃな~」
☆
源三「夢……夢……」
長時間に及んだ源三の戦いは最終的に源三は当たりを出す事なく最後の玉を使い果たし、源三に残ったのは36000円で返済しなくてはならない借金だけとなった。
源三「そ、そ、そうじゃ!また金を借りよう!」
が、源三はそれでも懲りずに更に金を借りてパチンコに再挑戦しようとする。
源三「そして大当たりじゃ!そうすれば36000円くらい楽勝じゃ!大当たりを出して先ほど借りた金も次に借りる金もまとめ返ししてやるわ!」
ギャンブルで作った借金をギャンブルで返そうとする、まさにギャンブル依存症患者まっしぐらの近道を歩もうとしているのである!
源三「金じゃ!金を貸してくれ!次こそは!次こそは当ててみせるのじゃ!」
一丈「いけませんよお客様」
が、別室で金を借りようとしに行った源三を店長の一丈が制止する。
源三「なんじゃ急に!……あ、あれ?ど、どなた様かのぉ~?」
苛立った様子で振り向いた源三であったが、一丈の背後に仁王立ちしているマッチョで身長が2メートルほどありそうな黒人男性を見て目を丸くして震えていた。
一丈「ああ、こちらの彼は警備員のボブ君です」
源三「へぇ~……け、警備員じゃったか~」
源三がイメージしているような老人の警備員ではなく、まるでプロレスラーのような屈強な警備員を見て源三は強気に出られる自信がとたんに無くなっていた。
一丈「それよりもお客様、いけませんね~」
源三「い、いけないって?」
一丈は相変わらず笑顔のままであったが、その笑顔のお国は物凄くどす黒い凄みが見え隠れし始めていた。
一丈「一度お金を借りたお客様が再度借りる為には、借りているお金を全額返済してからにしてもらうきまりになっておりますので」
源三「もんげ――――――――――――――!!」
そう、借りた金額が幾らであれ、借りたら返すまで新たに借りる事が出来ない、それがここのルールであった!源三は24000円を借りているので利子を含めて返済しなくてはならない金額は36000円。しかし源三はパチンコ玉を使い果たした上に無一文なので自力で36000円を返済しなくてはならないのであった!
源三「そ、そんな、そこを何とかしてくれ!もっと軍資金があれば当てられそうなのじゃ!」
一丈「規則ですから!」
源三「ひぃっ!」
笑みを浮かべる一条の背後には相変わらず強面で仁王立ちしているボブが存在感を放ち源三はそれ以上詰め寄る事が出来ない。そう、何度も何度も際限なく貸していると本当にいずれは大当たりを出されて全額返済の上に客に大金をせしめられる事もあり得るので、一度化したら、全額返済するまで貸さないと言うルールが出来たのであった!
一丈「お客様、これ以上続けられないのでしたらお引き取りを、ご覧のとおり順番待ちになっておりますから」
源三「そ、そんなアホな……」
このままこの店を後にしてまえば、源三は今日の間にこの店に再び入る事は極めて困難であろう、行列は未だにかなりの長蛇の列をなしており、今日一日はずっと収まりそうにない様子であった。
薮井「ぐぬぬ―――!!中々上手くはいかん!だ、だがまだなんとかなる!これだけ玉があるのだ!頼む当たってくれ!私に大当たりを!」
源三がふと視界に入れたのは、源三の2倍の数の玉を買ったが故に未だに数に余裕を残して続けている薮井であった。
源三「な、なぁ、や、薮井よぉ~」
薮井「お、またスロットが回ったぞ!今度こそラッキースリーセブン頼むぞ――!だぁー――――!全く揃わないではないか―――――!!」
源三は揉み手をしながらニヤニヤと笑みを浮かべながら、薮井に声を掛けるが薮井はパチンコに夢中で全く源三に反応しない。
源三「や、薮井、少し良いかの?」
薮井「黙れクソ爺!今見ての通り忙しい!見てて分からんのかボケが!」
源三「く、クソ爺にボケじゃと!?」
源三は基本的に見下している薮井に罵倒されて顔に青筋を浮かべる程に怒りを感じていたが、今は薮井と喧嘩をするわけにはいかない。
薮井「全く、空気の読めない奴め!玉を使い切ったのならさっさと帰らんか!」
源三「そ、そうじゃ!ワシは玉を使い切ってしまった!だからお主に貸してほしいんじゃ!」
薮井「玉を貸せだと?なぜ私が貴様に!?この玉はすべて私に価値をもたらすために必要な玉だ!貴様如きにくれてやるわけがないだろうが!」
源三「そう言うな!後で貸してくれた玉に対して+10個で返してやるのじゃ!」
薮井「殆ど変わらんではないか!そんな事でこの貴重な玉を貸してやるわけがない!さっさと消えるがいい!」
源三の取引に対して薮井は断固として拒否する、そもそも薮井は源三が自分の玉を借りたところで全てすってしまうとしか思っていないのである!
源三「…………」
薮井から徹底的に拒否された源三、この時源三の中では何かがプツリと途切れてしまったのであった。
源三「うらぁ――――――!!」
薮井「な、何をするのだ貴様―――――――!!」
源三は何を思ったのか薮井のパチンコ玉をケース毎持ち上げていた。
源三「黙れ黙れ黙れ!黙ってワシに投資しやがれ!ワシがドリームを呼び起こしてやるわ――――!」
薮井「呆気なく負けた奴が何を言うか!私のドリームを貴様などに託すわけがない!返すんだそれを!」
薮井は飛びかかって取り返そうと思ったが、それをやると源三が持ち上げているケースを落として玉を散らかしてしまい兼ねないのでなかなか手を出せなかった。
源三「ふははっ!!これで今度こそ勝ってやるわ!レッツチャレンジじゃ――――!!」
薮井の玉をケース毎持って自分のパチンコ台に走る源三。しかし、神はそんな源三に対して運命の悪戯を仕掛けたのである!
その頃、別の場所では……
ゴルファー「いや~、新年から河川敷でやるゴルフは面白い!そーれ!」
所有者に無断でゴルフを楽しむゴルファーがフルスイングでゴルフボールをショットした!すると運命の悪戯か!?ゴルフボールは近くで凧あげをしていた少年の凧に命中したのである!
少年「うわっ!俺の凧がぁ――――!」
そして運命の悪戯か!?バランスを崩した凧は正月も休まずに熱心に餌を探して飛んでいたカラスに激突したのである!
カラス「カァ――――!カァ――――!」
自分よりも大きな凧にぶつかったカラスは驚きの余りじたばたと闇雲に飛び回る。すると運命の悪戯か!?飛び回ったカラスは勢い余ってボロボロで今にも取れ落ちそうだった運送屋の看板に命中したのである!更に運命の悪戯か!?看板は地面に落下するとすぐ目の前を走っていた自転車に乗る学生に激突しそうになる!
学生「うわっ!あぶねぇ!」
なんとか華麗なドリフトで回避した学生、しかし運命の悪戯か!?回避した方向には野良犬がおり、野良犬はいきなり迫ってきた自転車に驚いて飛び跳ねる様に逃げるのでった!
犬「わおー――――ん!!」
自転車を必死に避ける猫、またしても運命の悪戯か!?必死に逃げ回った猫は走行中の車の正面ガラスに張り付いてしまったのだった!
ドライバー「どわー――――!な、何なんだこの犬!うわぁー―――!!」
いきなり犬に視界を遮られて慌てふためくドライバーが運転する車は暴走する!迂闊に曲がる事も出来ずに正面を走り続ける暴走車、そして極めつけの運命の悪戯か!?その先には源三達がもめている例のパチンコ店の正面出入り口である。
客「く、車だ!車だ―――!」
客「やべぇ、轢き殺される!」
行列に並んでいた客達は真っ先に逃げるが店内の客達の大半はパチンコやパチスロに夢中で車の接近に気が付かない。
源三「始まるのじゃ……ワシの新たなる戦いが……」
どっがしゃ―――――ん!!
源三「どわぁ―――!わ、ワシの玉がぁ―――!!」
薮井「私の玉だぁー―――!!」
車の突撃で源三や薮井の玉は思い切り辺りに散らばっていた。
一丈「な、何なんだ一体!?わ、私の店になんてことを!」
が、運命の悪戯はこれで終わりではなかった!
刑事「これは大変な事になりましたね、至急応援を呼びましょう」
一丈「け、刑事!?」
実はこの店は以前から無許可での金融業を始めようとしているとの情報があり、刑事はその証拠を掴もうと張り込んでいたのであった。そして、そんな矢先に車が店に突っ込む大参事!刑事はこれをチャンスに事故調査を名目にパチンコ店を探る決断を下したのであった!
源三「ワシの玉!ワシの玉ぁ――――!!」
薮井「おのれぇ―――――!!やはり貴様には勝負運などないのだ!私の玉を返せぇ――――!!」
そしてそんな事とは関係なしに争いを始める源三と薮井。皮肉にもその後、パチンコ店が無許可で違法な金融業をしていたことが発覚し、源三も薮井を金を返さずに済んだのであった!




