第20話 新年あけましておめでとうございます!巫女とパチンコどっち?
2017年1月1日!新年の初日は神社にお参りに行く参拝客で賑わっていた。
来牙「やっぱり、若い巫女が多いな……」
絵梨「来牙君、アルバイトの巫女さんの事じっと見てる!」
宮永兄妹も参拝に来ていた、しかし!来牙はそんな神聖な神社と言う場所に来て、参拝よりも自分と同年代と思わしき巫女装束を身に纏ったバイトの少女たちをじっと眺めて、妹の絵梨に叱られていた。
来牙「いや、物珍しいもんだと思うとついついな」
絵梨「確かに可愛いかもしれないよね、て言うか参拝客の中にもきっと巫女の格好した女の子目当てで来てる人が……」
絵梨の言う通り、参拝客の中にはいかにもオタクであると言わんばかりの格好をした男性たちが混ざっていた。その多くがスマホやカメラを手に持ってその先には巫女の衣装を着た少女たちに向けられていたが……
警官「ちょっと、そのスマホ見せてもらえますか?」
オタク「えぇっ!?な、なんで!?ただ参拝してただけなんだよ!?」
警官「巫女さん撮ってたでしょ?違うかな!?」
このように警備に来ている警官たちが目を光らせているので、油断していると御用になるのである。
来牙「けど、結局爺さんは来なかったな、やたら目立つカメラ持ってきて気合い入れてたのにな」
絵梨「むしろ、良かったよね、お父さんが来たら絶対にトラブル起こして捕まるし、あっちの方と被ってくれて助かったよ~」
来牙「けど、明日になったらきっと神社にも来るんだろうな」
そう、この場には源三はいない。当初は源三も巫女装束の少女たち目当てに神社を訪れるつもりであったのだが、とあるイベントと被って予定を変更したのである。
絵梨「来牙君、帰ったらアタシが巫女装束着て見せてあげるからね、だから今は捕まる様な事したらダメだよ」
絵梨は来牙をからかう様に笑って抱き着く。
来牙「歩き難いだろ」
その姿は同じ多くの参拝客達から嫉妬や羨望の眼差しを集めるのだった。
オタク「オタター―――!!巫女さんよりも可愛い女の子とイチャイチャしやがってあのやろー――!!」
オタク「ここはリア充が来る場所じゃないんだよ!独り身の男が巫女さんと遊びに来る場所なんだぞ!」
巫女「こちとら正月返上でバイトしてるってのに、あのカップルムカつくんだよ!」
巫女「あ~あ、あのカップルの女の方に神の鉄槌下されないかな~、んでもってあの彼氏アタシのものにならないかな~?」
このように、オタクだけでなく巫女の少女たちにも嫉妬心は芽生えるのであった、たとえ一時的に神に仕える身であっても。
☆
そんな来牙と絵梨がイチャイチャと兄妹で神社の参拝を満喫している最中に源三はと言うと、とある行列に並んでいた。
店員「お待たせしました!本日よりも新年初日限定の一発半額サービスを開始したいと思います!半額になるのは本日の一日限りだけになりますのでご注意ください!」
客達「「「うおぉ――――――――!!」」」
それは、パチンコ&パチスロ屋の元旦の一日限定の特別イベントであった!
源三「ふふふ、軍資金は用意しておいた、今日は大量の玉で大当たりを狙うのじゃ――――!!」
その行列の中の先頭に近い方に源三は陣取っていた!この老人はこのイベントに参加するために前日の閉店間際から店に並ぶことで確実にこのイベントに参加しようとしていたのであった。源三に限らず列に並ぶ者達は皆このチャンスで一発当てる為に熱く燃え上がっていた!ここにいる者達はめでたい元旦の日にもかかわらず、神社への参拝など目にもくれずにギャンブルに情熱を注ぐ男たちなのであった!
源三「ワシはこの決断を下すのに悩みに悩みまくった……元旦初日は巫女装束を着た娘達を眺めて天国に上る予定でったのを変更してまでワシはこの超お得イベントを選んだんじゃ……!」
源三は今頃、来牙と絵梨が巫女装束を身に纏った少女たちの居る神社にいるである事を想像して涙を流していた。
源三「だからワシは勝つのじゃ!半額じゃ!すなわちいつもと同じ軍資金で二倍の数の玉を得られるんじゃ!すなわち勝率も二倍じゃ――――!!」
そして源三は他の客達と同様に開店と同時に一気に店内になだれ込む。
源三「これじゃ!これでありったけの玉を寄越すのじゃ!」
源三は1万円札と二枚の千円札を店員に見せつけてそれで買えるだけの玉を購入する。そして、前々から目を付けていた当たりが出やすいと言われているパチンコ台に向かって猛ダッシュする。
源三「その席はもらった―――――!!」
老人「な、なんだー――!?」
丁度自分と同年代と思わしき老人が座ろうとしていたのを源三が横から飛びいる形で先に座り込む。
源三「ぐふふふ、勝つのじゃ!ワシはこの勝負に絶対に勝つ!」
普段であれば一発4円なので12000円では3000玉程度であるが、今回は半額であるため源三の手元には6000発の玉があるのであった。
源三「ゆけ―――!!」
いざ、源三の戦いが始まった!神社の巫女たちを見に行くのをあきらめてまで12000円を投入した源三の勝負の行方はいかに!?
90分後……
パチンコ音声「ああ~、おっし~!もうちょっとだったのにね~」
源三「…………」
源三の座るパチンコ台がそんな音声を発していた、スロットには『779』の数字が表記されている。そして源三の手元に残っているパチンコ玉は既に0であった。
源三「ほ、ほ、ほ……ほんげぇ―――――――――――!!」
源三、まさかの大敗!普段の2倍の数のパチンコ玉を得ながらまさかの大敗!席に座ってから精々90分間程度の出来事だった!
源三「ま、負けた……わ、ワシ負けた?」
12000円を注ぎ込んで購入した6000発の玉はもはや一発も残されていない。源三は普段の2倍のチャンスをものにできずに呆気なく負けたのであった!
源三「か、金は……」
財布の中を確認する源三であったが、既に中に残されているのは小銭しかない。だが、それも無理はなかった、あの12000円だって源三が楓に対して無理を言って土下座しまくってようやく借りられた唯一の金であったのだから。
源三「い、今から何処かで金を手に入れてくるのじゃ!」
源三は一旦店を出てから金を調達して再びチャレンジしようと考える。
源三「って、な、なんじゃこの列は!」
が、店には未だに長蛇の列が並んでいた。源三は一番最前列に近い位置に陣取っていたために気が付かなかったが、今から一から並んだとしても1時間や2時間程度で入れるような列ではなかった。ましてや今から、金を調達して並び直していたら、次に入れるのは何時になるか分からない、それ以前に今日の営業時間中にはもはや不可能と言っても過言でもなかった。
源三「どうすればいいのじゃ!これではワシは折角の大チャンスに12000円を失っただけになってしまうのじゃ―――――――!!」
???「お客様、随分とお困りのようでいらっしゃいますね」
源三「ほ、ほげ?」
そんな行き詰った状態の源三に背後から声を掛けてきたのは整った身なりをした男であった。
源三「な、何じゃお主は?」
一丈「申し遅れました、私は当店の店主を勤めさせていただいております、一丈と言う者です」
源三「お主が店主じゃと!?」
目の前に現れた店主と名乗る男は名刺を渡して自分がこの店の店主である事を証明する。その割には比較的若々しい容姿で最初は源三は店主である事を疑っていた。
一丈「お客様、やはりここでこのまま引き下がるのは流石に悔しいですよね?」
源三「当然じゃ!折角の大チャンスだと言うのに!せめてもっと金があれば当てられるかもしれんと言うのに……!」
一丈「では、そんなお客様の為に当店の新サービスをご紹介します、どうぞこちらに」
こうして源三は一丈と名乗る若手の店主に奥の別室に案内されるのであった。




