第1話 ワシが宮永家の主なのじゃ!+面白い動画アップで人気者じゃ
とある町のとある一軒家、ここには宮永家と言う家族住んでいます。家族構成は家主とその妻と分け合って息子夫婦がいない代わりに孫息子と孫娘が住んでいますが、その理由についてはあまり触れてやらないでください。
源三「いや~、やっぱり食欲の秋じゃな~!食い続けないと落ち着かんわ~」
この老人、宮永源三は宮永家の一応の主である。秋になってからは食欲の秋を口実にして好き勝手に食べたいものを食べ続ける自堕落に自堕落を重ねた生活を送っていた。
楓「お爺さん、その食欲の秋もそろそろ終わりです、バグバグと食べてばかりいないで少しは控えて頂きたいですね、見るに堪えないお腹になりつつありますから」
この老婆は源三の妻で主婦の宮永楓。夫とは全く異なり良識人であり、それゆえ何故源三と結婚したのかが不思議に思われるのである。
源三「固い事を言うではないのじゃ~、残り少ない秋だからこそ今のうちに食いまくるんじゃ!」
源三はテーブルの前に散らかっているピザやケーキを口に詰め込みながら汚らしくゲラゲラと笑い続ける。
楓「よくこれで病気になりませんね、いっそ病気になって療養が必要になったら大人しくなりそうでそっちの方が助かるんですがね~」
源三「さてと、昨日借りてきたエロDVDを見るとするか」
源三にデリカシーなどと言う概念は無きに等しかった。家族全員が使う今のテレビで平然とアダルトDVDを視聴するのである。
源三「お~い絵梨よ~、そっちにおらんでこっちでワシと一緒にエロいDVDを見んか~?そんでもってワシと一緒にエロい気分にでもならんかの~、どわはははははっ!!」
源三はそんな老人から一歩引いた場所で目を背けていた孫娘に対して平然とアダルトDVDを一緒に見る様に勧めていた。恥じらいも無い態度の祖父に対して当然、孫娘が快く応じるわけもない。
絵梨「お父さん、見て見ぬふりをしている孫娘の気遣いを無駄にしないでよ……」
この可愛らしい美少女が源三の孫娘の宮永絵梨だった。孫娘なのに源三をお父さんと呼んでいるのは源三が年寄り扱いされるのをしつこく嫌がるので絵梨の方も面倒だからお父さんと呼んでいるだけに過ぎない。
源三「そんな気遣いなどするなするな!わしらは家族じゃ!家族の間に遠慮も恥じらいもいらん!イラン人なんていらん!なんちゃって――――――――!どわはははははっ!!」
デリカシーの無さに加えて下らない親父ギャグを発する源三。絵梨は地元の高校に通う高校一年生と言う年頃の少女で、悩みごととして真っ先に思い浮かぶのはこの源三のセクハラである。源三は絵梨を可愛い孫娘として気に入っており、しつこく身体的接触を伴うセクハラを連発してくるのだが当然、絵梨にとってそのセクハラはありがたみも親しみも感じない。
来牙「爺さん、いい加減に絵梨が嫌がってるって少しは感じろ。と言うか孫娘離れしろ!」
源三「おのれ来牙――――――――――!!死ね死ね死ねぇ―――――――!!」
そんな源三を注意したのは源三の孫娘の宮永来牙だった、絵梨よりも一つ年上の兄であり、妹の絵梨から大いに好かれている来牙は孫息子でありながら恋敵のように扱われており、来牙も源三の普段の振る舞いにうんざりしている。
源三「貴様来牙!何を絵梨を守ってます気取りじゃ!?いいかよく聞け!ワシはこの家の主じゃ!この家で一番偉いんじゃ!この家ではワシの言葉は神の言葉じゃ!神の言葉を聞けんのか貴様はぁ―――――――!!」
大声で響き渡る声で来牙を怒鳴り散らす源三、来牙も絵梨も両耳を塞いでその怒声を聞き逃していた。
源三「我が身を弁えるのじゃ小童が!ワシはこの家の主じゃ!一番偉いんじゃ!ワシは――――――」
ユーにゃん「うにゃ~」
源三「ほぎゃ――――――!!」
黒い仔猫が源三の足元で小さな鳴き声で鳴くと源三は恐怖の絶叫をあげていた。
絵梨「ユーにゃん、アタシの部屋からまた出てきちゃったんだね~」
ユーにゃん「うにゃにゃ」
絵梨がしゃがんで両手を向けると駆け寄って絵梨に抱かれるユーにゃん。この黒い仔猫は少し前に絵梨が拾って飼っている宮永家のペットだった。元々猫が大好きだった絵梨はユーにゃんを気に入り、ユーにゃんも飼い主である絵梨に懐いているのだが、源三は分け合って猫が大の苦手としている。
源三「おのれ黒猫め~!このワシの天下を脅かすつもりか~!」
来牙「アンタの天下なんて最初から無いだろうが」
こんな宮永家の面々による物語が始まります……
☆
源三「あ~、暇じゃな~」
源三は家に一人でだらけていた。平日なので絵梨も来牙も学校に行っており、楓も老人仲間との付き合いで出かけている。
源三「なんか面白い事はないのか~?」
源三は暇を持て余しながらパソコンでユーチューブの動画を検索していた。
源三「あ~、それにしてもコイツら羨ましいの~、こうやってバカな事やってそれを動画サイトにアップロードしてるだけで金貰えるんじゃからな~」
源三は浅はかな考えを抱いていた、自分もこれなら一発で人気者になって一儲けできるのではないかと。
源三「よし!やってみるか~」
そして源三はとある動画をアップロードしてみるのだった。それがこちら!
源三「う~む、外国人留学生が多いとは本当だったんじゃな~」
源三は外国人留学生の多い大学に入り込んでいた。源三が今回の動画作成の為に探しているのはイスラム教徒であった。
源三「お~い、そこの白人娘達よ~」
源三はさっそく学内のイスラム教徒の学生を探すために金髪白人の女子留学生に声をかけていた。
女学生「なんですか、お爺さん?」
源三「おお~、日本語ペラペラじゃな~」
女学生「日本に2年近く住んでますから~」
いきなり声をかけてきた老人に対しても女子学生は訝しむ事なく応対してくれていた。が、そこで調子に乗るのがこの男である。
源三「今度ワシとヌーディストビーチでデートしてみたいと思わんか~?」
女学生「え!?」
一瞬にして女学生の表情が引きつっていた。源三にとって欧米女性はヌーディストビーチで全裸であっさりと男の前で裸体を晒すのが流行りであると勝手な認識があり、源三の夢は自分もそこで金髪外人女性と裸の付き合いをすることであった。そもそも、源三は既にこの動画の本来の目的であるイスラム教徒の事を忘れていたのである!
源三「ほほほ、照れるでないわ~!なになに、お主らの欧米女子の文化なら分かっておるわい!日本の若い娘ときたらとにかくその当たりが頑なで中々ガードが固くって困るんじゃよ~。その点お主ら欧米女子は自分の裸体を積極的に晒すのが流行りじゃろ?その文化をワシはとても気に入っておる、じゃからここでお主と巡り合えたのもきっと今からヌーディストビーチに直行して――――」
言うまでも無いが欧米に多数あるヌーディストビーチも欧米女性全員に親しまれているわけではない、そこに来るのはあくまでそう言う事に寛容な女性が来るところであり、必ずしも欧米女性全員が好んでくるわけではない!
女学生「ダーリン助けてぇ―――――!!この爺が私をヌーディストビーチに連れて行こうとするの―――!!」
それゆえに、気軽に欧米女性をそう言った場所に誘おうとするとこうなる事もあったりするのだった。
ダーリン「何だと!この爺人の彼女に何なんだ一体!?」
源三「ぎえー―――!!なんで金髪白人美女の彼氏がマッチョな黒人なんじゃ――――!!」
黒人男性が金髪の白人女性と付き合えるわけがないなんてのはまさに源三の偏見である。それゆえに源三にとっては予想外の彼氏の登場に動画撮影は一時中断になりかけ状態で、源三は必死になって黒人彼氏から逃げ回るのであった。
ダーリン「捕まえたぞこの野郎!」
源三「ひょえー話して―――!」
が、黒人彼氏の足は思った以上に早く、源三はあっさりと捕まってしまった。
ダーリン「覚悟しやがれこの爺!」
源三「お助けぇ――――――!!」
???「止めて下さい!お年寄りに暴力はいけません!」
が、そんな絶体絶命で救いようのない源三に対して救いの手を指し差し伸べる黒人の青年が現れていた。
ダーリン「サウド!こいつは俺の彼女をヌーディストビーチに誘おうとしやがったんだ!引っ込んでろ!」
サウドと呼ばれた青年は黒人の彼氏から大声で威嚇されるがそれでも全く引こうとしない。
サウド「ダメです!お年寄りは労わらないといけません!」
ダーリン「ちっ!爺さん次は無いと思えよ!」
黒人の彼氏は諦めて、源三を解放して去っていった。
源三「バーカ!一昨日来やがれこのクソボケ!」
ダーリン「なんだと爺!」
サウドに感謝する前に黒人彼氏に対して捨て台詞をお見舞いする源三だったが、丸聞こえなのでまたしても黒人彼氏の怒りを買うのだった。
源三「待て待て待て待て待て!争いを繰り返すでない!」
サウド「落ち着いてください!」
なんとかその場を宥めてようやく源三と黒人彼氏の抗争は収まったのだった。
サウド「お爺さん、大丈夫ですか~?」
源三「おお、よくやったぞ。ワシの身を守った功績はデカいのじゃ」
サウド「無事でよかったです」
源三の偉そうな態度に怒る事なく、サウドは源三の事を労わるのだった。
サウド「お爺さん、この大学の人じゃないですよね?どんな用なんですか?」
源三「実はな、ワシはこの外国人留学生が多く在籍しているこの大学にイスラム教徒がおらんか探しに来たんじゃ」
サウド「そうなんですか!それなら良かったです、私はイスラム教徒なんですよ!」
源三「お、お主がイスラム教徒じゃと!?」
偶然助けてくれた相手がなんと源三が探し求めていたイスラム教徒であった、これは源三にとって嬉しい偶然の出会いであった。
サウド「そうなんですよ、私はナイジェリア出身で建築士の資格を取るためにこの大学に通ってるんです」
源三「ナイジェリアってあのボビーの出身国じゃよな?」
サウド「はい、ボビーの出身国です」
源三「ボビーと言い、お主と言いナイジェリア人は日本語が上手いんじゃな~」
サウド「それは、態々日本に来てるんですから日本語も少しは話せるようにはなってますよ~」
自然と源三はサウドと会話が弾む。
源三「あ、あれか?お主の家も親父が一夫多妻制で兄弟姉妹が大勢おるのか?」
サウド「それはごく一部のお金持ちの家庭だけですよ、僕の家は普通の家族です~」
なにはともあれ、無事にイスラム教徒を見つける事が出来たので源三にとってはいよいよ動画撮影の本番が始められそうであった。
源三「サウドよ、ワシを助けてくれた礼をしたい」
サウド「そんな、お礼だなんていいですよ~」
謙虚なサウドはお礼をしたいと言う源三に対してやんわりと遠慮をする。
源三「そう遠慮などせんでいいわ、ワシがしたいだけじゃからな、何か飯でも奢ってやろうではないか、購買で売っているおにぎりなどどうじゃ?」
サウド「本当に良いんですか~?それはとっても嬉しいです!」
宮永源三が作ろうとしている動画のタイトルそれは……『イスラム教徒に豚肉を食べさせてみた』であった。