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たまには安らぎを 中編

 ――さて。

 端的に結論を述べよう。


 自信満々に、楽しませるなどと言ったのは果たして誰であったか。

 そんなことを言った馬鹿は、地面に穴でも掘って中で丸一日ぐらい反省すべきである。

 頭を抱えた今のリーズの心境は、まさにそんな感じであった。


 リーズがそれに気付いたのは、街に入って早々……それこそ、数分も経っていない時のことだ。

 ではまずは何処に向かおうかと、街の地図を頭に思い浮かべ……そこではたと、思い至ったのである。


 この街、楽しむのに根本的に向いていない、と。


 そもそも迷宮都市とは、冒険者の街と言っても過言ではない場所だ。

 武器屋に防具屋、鍛冶屋に雑貨店。

 冒険者に必要なものは何でも揃うし、冒険に疲れた身体を癒すための宿や酒場、食事処なども多い。


 だが逆に、それ以外のもの、特に娯楽という観点から見れば、そういった類の店は驚くほどに少ないのだ。

 先にあげたものの一部がそれに該当するというのもあるし、数少ないそれら専門の店は、一応歓楽街に存在しているものの……まあ、所謂夜にこそ賑わう店である。

 何にせよ、今訪れるのに相応しい店ではないのだ。


 というか、である。

 根本的に疑問なのだが――


(「デー……いえ、楽しませるって、何をしたらいいのよ?」)


 まずそこからして分からなかった。


 確かに今回のことは、リーズが言い出したことだ。

 しかし元を辿れば、これは三人で決めたことである。

 一月もの間、一度も休息を取っている様子のないアランを、どうにか休ませようと考えた末のものなのだ。


 具体的な方法に関しては勝者が決めるとし、結果的にリーズが勝ったからこそ今日のこの時となったわけではあるが……さすがに勢いだけでは押し切れなかったようである。

 まあ、というよりは、最初から単純に思いつかなかったが故の苦肉の策なのではあるが。


 そもそもの話、娯楽の経験という意味では、リーズもアランに負けず劣らずない。

 魔導士に覚醒してからは、基本魔法の練習ばかりであったし、昔の記憶にあるのは、ひたすらに本を読んでいたというものだけである。

 それにしたところで、ただ他にやることがないから、というだけであったし……だから、何をしたらいいのか分からないというのは、ある意味で当たり前のことなのだ。


 が、それは言い訳に使っていいものではないだろう。

 ならば最初から言い出すなという話である。

 まあかといって結局どうすればいいのかは分からないし、思いつきもしないのではあるが――


「あー……リーズ、ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

「……何よ?」


 自分の口から出た声は、思っていた以上にとげとげしいものであった。

 まるでアランにあたっているかのようなそれに、我ながら何してるんだと自己嫌悪に陥るリーズであるが、アランに気にした様子はない。

 ただ、仕方なさそうに苦笑を浮かべ――


「多分リーズは色々と考えてくれてるんだと思うんだけど、ちょっと僕からの要望も伝えときたいんだよね。いいかな?」

「……まあ、内容次第かしらね。要望によっては、取り入れることも出来るかもしれないわ」


 それは完全な強がりであったが、今更どうしようもない。

 苦笑を深めるアランに口元を引き締めながら、視線だけで先を促す。


「ま、確かにそれもそうだね。じゃあとりあえずってことで希望を述べてみるけど――」









「ふーむ……何と言うか、結構意外な感じがするなぁ」

「そうかしら? 特に変わったところはない気がするのだけれど……?」

「むしろだからこそ、かな? 冒険者を主体とした街だから、もっと違うところとかがあるかと思ったんだけど」

「ああ、なるほど。そういうことならば、そうかもしれないわね」


 街を眺めながらのアランの言葉に、リーズは同調して頷いた。

 実際のところ、確かに最初はリーズも同じ感想を抱いたものだ。

 もっと荒々しいというか、ギルドのような雰囲気が街全体に広がっているのかと思っていたのである。


 だが街に足を向けてみれば、全然そんなことはなかった。

 並んでいる店こそ、冒険者主体のものではあるが、それ以外は何ら他の街と変わらなかったのである。


「というか、そういう話を聞くと、改めてアランがずっと屋敷にこもっていたのだということが分かるわね」

「いやいや、実際には別にずっとこもってたわけじゃないよ? ほら、儀式魔法の研究でちょくちょく外に出ては試してたし」

「変わらないわよ」


 呆れたように溜息を吐き出すが、アランに悪びれる様子はない。

 まったくと呟くものの、自然と口元が緩んでいく。

 だからそれを隠すように、続けて口を開いた。


「それにしても、街を見てみたいだなんて、アランがそんなことを言い出したことの方が、私としては意外だったわね」

「え、そうかな? まあ、真面目な話、僕がこの街で知ってるとこって、ほぼギルドだけだしね。大抵のものはあそこで言えば揃えてくれちゃうし。となれば、折角の機会だから街全体を見たいと思うのは自然なことじゃないかな?」

「それは自然かもしれないけれど、私としてはアランが魔法以外のことに興味を持つということそのものが意外だったもの」

「それは言いすぎじゃないかな? 研究所時代……は、確かにそうだったかもしれないけど、学院時代は、色々本を読んだりもしてたでしょ?」

「自覚がないようだから言っておくけれど、色々な本を読んでいたと言われたところで、魔法の研究をしている時にも基本本を読んでいるのだから、傍から見ているとその区別は付かないわよ?」

「なん……だと……?」


 愕然としているあたり、本当に気付いていなかったようである。

 というか、その本にしたところで、聞いてみたところ冒険者になるための勉強だったようなので、結局は魔法のためであることに違いはない。

 なので本当に、アランがそんなことを言い出したのは意外だったのだ。


 そう、アランが述べた要望というのは、街を見たいという、そんなものであった。

 それは文字通りの意味であり、まったくと言っていいほどに街の様子を見た事がなかったので、この機会に見てみたいというものであったのだ。


 そしてそれならば、リーズにも案内が可能なものであった。

 さすがに歓楽街であったり、路地裏を含む隅々まで案内することは出来ないが、大雑把にならば出来る。

 リーズはアランとは違って、休息日にも屋敷に閉じこもることはなく、時折街に繰り出していたからだ。


 まあそれは主に、食材の調達をするためではあったが。


「んー、まあ、冗談は置いといて」

「冗談……? 少なくとも今のは本気だったけれど?」

「置いといて。結構活気もあるんだね」


 アランの強引気味な話題の転換に、リーズは肩をすくめながらも、同じように周囲へと視線を向ける。

 リーズは他の街というものは、王都や自身の家のあった場所ぐらいしか知らなかったが、それらと比べれば、確かにこの街は随分と活気がある方だと言えるだろう。


 人の流れもまずまずあり、雰囲気としては賑やかだ。

 今歩いている場所が、最も人の集まる目抜き通りということもあるのだろうが――


「まあ、冒険者が主体の街だからといって冒険者だけしかいないわけではないし、その冒険者だって冒険者として活動している時間の方が短いもの」

「なるほど。当たり前と言えば当たり前、か」


 実際のところ、目にする範囲の中で、冒険者らしい冒険者の姿はない。

 今が昼時とはいえ、依頼を受けたにしろ迷宮に潜ったにしろ、休息を取るのは出向いた先だ。

 わざわざここに戻ってくることはない以上、当然のことである。


 そのため、今ここに居るのは、冒険者としてではない、一般市民としての人々だ。

 まあ、明日以降のために準備をしている人もいるだろうし、仕入れのためにやってきた商人なども多いだろうが、単純に人が集まればその場の雰囲気は賑やかになる。

 そういった意味でも、街に活気があるのは当たり前のことだと言えた。


「ふーむ……ま、活気がある分にはいいことだし、それだけ余裕があるってことかな? 余裕がなければ、こんな雰囲気にはなっていないだろうし。……さて、それはともかくとして、次は何処に行こうかな」

「次って、一通り回るんじゃないの?」

「そのつもりだけど、本当の意味で全部は見きれないでしょ?」

「ああ、なるほど。そういうことね」


 迷宮都市はそもそもそれなりの大きさの街だ。

 しかも単純に大きいだけではなく、その道は碁盤の目のような形になっており、路地裏などがまた多い。

 目抜き通り沿いを歩くだけならばまだしも、隅々まで見るとなればさすがに一日では足りないだろう。


 となれば、幾つか検討を付けて見て回るしかなくなるわけだが――


「んー……ここって、青空市場とかはあるんだっけ?」

「青空市場? まあ、あるけれど……」


 物を売りたいと望むのは、何も商人だけではない。

 むしろ物を直接仕入れている冒険者の方が、その願望は強いと言っても過言ではないだろう。


 勿論ギルドで換金が可能なため、売れないわけではないが、どうせならばより高く売りたいと思うのは道理である。

 そして買う側も、なるべくならば安く買いたいと思うわけであり、そのための場所が青空売り場なのであった。


「何か買いたい物が……ああいえ、そういえば、触媒が必要と言っていたわね。でもそれならば、ギルドに行くべきじゃないかしら?」

「そっちは急ぎってわけじゃないから、また後でも問題ないかな。それよりも、単純に見た事がないから、ってのが理由だよ。まあ、何か掘り出し物がないか、とか思ってるのも否定しないけど」


 言い方は悪いものの、冒険者というものは、基本的に物の価値というものを知らない。

 自分達が売っている物が最終的にどんな値段になるのかということを、分かっていないのである。


 だからこそ、そういった場所では、時に貴重な物を捨て値同然で提示してしまうこともあるのだ。

 まあ大半の場合は、逆に見積もりすぎて高すぎる、となる場合がほとんどなのだが。


「ま、別に問題はないし、行きましょうか」


 ここから向かうのであれば、まずはギルドの方に向かった方が早いだろうか。

 頭の中で道順を思い浮かべ、問題ないと頷くと、リーズは先導するように歩き出した。







 昼を過ぎた青空市場の活気は、大体並と言ったところであった。

 人が多すぎず、少なすぎず。

 まあ、見て回るにはちょうどいい雰囲気と言ったところだろう。


「ふーむ……時折中途半端に空いてる場所があるのは、もう撤退済みってことなのかな?」

「でしょうね。基本的にこの街は、朝が最も活発だもの。それから昼にかけて商品が売れたか、或いは売れなかったからこれ以上は無駄と判断したか。そういった人は、少なくないと思うわ」

「みたいだねえ……」


 そして掘り出し物があったとしても、基本そういう時間帯に売れてしまう。

 この時間に残っている場合は、余程それが珍しく、誰にも価値が分からなかったようなものだ。

 勿論そんなものが早々見つかるわけもなく、アランは何処か残念そうに溜息を吐き出していた。


「さすがにそこまで都合よくはいかないか」

「残っているのは、値段を高く設定しすぎているものか、ここで買う必要がないようなものばかりね」

「んー……まあ、じっくりここの様子を見る事が出来ると、前向きに考えようか」


 と、そんなことを言った矢先に、アランはその足を止めていた。

 何か見つけたのかと視線を向けてみれば――


「これは……装飾品?」


 そこに並べられていたのは、指輪や腕輪といった装飾品の類であった。


 こんな場所にそういった物を売っている場所があることに軽く驚くが、一通り眺めてみることで納得する。

 それらは、造形や値段からしても、貴族達が求めるようなものではなかったからだ。


 過度に飾られているわけではないそれらは、人によっては安っぽいとすら思うかもしれない。

 だがリーズとしては、割と嫌いではなかった。

 まあ、昔実家に居た頃、過度な装飾品の類は嫌というほど送りつけられていたというのも関係あるが。


「へー、ここにはこんなのもあるんだねえ」

「お、なんだい兄さん達、デートかい? こんな場所にデートに来るなんてちと思うところがないわけじゃあないが……まあ、折角だし思い出に一つどうだい? ちょうどそろそろ店仕舞いしようかと思ってたところだし、安くしとくぜ?」

「ほぅ……」


 その言葉に感化されたのか、真剣に商品を見だしたアランに、リーズはちょっとそわそわしだした。

 別に今のを本当に真に受けたわけではないだろうが……アランはこういったものに興味はないはずだし、送るような相手もいないはずだ。

 ……いや、或いは、あの二人のどちらかに、という可能性も……?


「ねえリーズ、リーズってこういうの嫌いだっけ?」

「は、はい? い、いえ……別に、嫌い、では……ない、けれど?」

「なんでエステルみたいな喋り方になってるの? じゃあ、指輪と腕輪なら、どっちが好き?」

「え、それは、その……指輪?」

「何故に疑問系……?」


 不審そうな視線が向けられたのは分かったが、リーズはそれどころではなかった。

 頭の中に浮かぶのは、沢山の疑問符だ。

 一体何が起こっているのかが分からず、だが視線だけはアランのことを追っている。

 アランが指輪を手にとっては戻し、こちらと見比べては戻し、ということを繰り返しているのを、ただ眺め――


「うーん……これ、かな? よし、すみません、これください」

「お、兄さんいい目してるじゃねえか。それは結構自信作なんだぜ? まあそのせいでそれなりの値段にもなっちまうんだが……そうだな、本来は金貨一枚、と言いたいところだが――」

「はい、金貨一枚」

「……っ!?」


 それに驚いたのは、二重の意味でであった。


 金貨一枚と言えば、一般家庭が数ヶ月は暮らしていくことの出来る金額だ。

 確かに装飾品であれば珍しい値段ではないものの、アランが手に取ったのは、白銀色の簡素な指輪である。

 一般的な金銭感覚に乏しい自覚のあるリーズでも、高すぎると思うものであった。


 そして何よりも、アランがそれを何の躊躇もなく支払ったことだ。

 アランは、というか、リーズ達はそれを問題ないと言える程度には稼いでいるものの……アランはあくまでも、研究の為に稼いでいたはずである。

 そんなものに使うよりも、触媒の一つでも増やした方が、アランには有意義なはずであり――


「おいおい兄さん、即決なんてこっちとしたら嬉しいけどよ……さっき言ったじゃねえか。安くしとくってよ」

「ええまあ、僕も最初はそれに乗ろうかと思ったんですけど……やっぱり思い直したんです。だって、こういうことで値引きさせるのって、格好悪いじゃないですか」

「――くっ、ははははっ! なるほど、確かにその通りだな! いや、それは確かにこっちが悪かった!」


 何やら通じ合った風な二人であったが、リーズはまだ納得したわけではなかった。

 いや、もし本当にそれが自分のために買われたものであるならば嬉しいのだが……それでも、やはり金貨一枚は高すぎる。


「ちょ、ちょっとアランっ」

「ん? なに……あ、もしかして、気に入らなかった、とか? それなら別のにするけど……」

「そうじゃなくてっ……その、幾らなんでも、それに金貨一枚は高すぎるわよ?」

「え、そんなことはないっていうか、むしろ安すぎるぐらいだよ? だってこれ、ミスリルだし」

「……え?」


 ミスリル、というのは、希少金属の一つだ。

 鉱山は存在せず、迷宮などで極稀に発見されるだけだが、魔力を増幅させる効果があることが分かっているため、魔導士の間では人気がある。

 確かにその色は白銀ではあるので、条件的に合致してはいるものの……アランが言う通り、ミスリルであるならばそれは逆に安すぎた。


 希少性と、扱いの難しさ、それと魔導士の間で需要があるため、この指輪の大きさであっても、通常は金貨十枚は必要なはずなのだ。

 場所が場所ならば、そのさらに十倍でもおかしくはない。


「おいおい、本当に兄さんいい目してんな。まさかそれも分かってるとは……ああ、勿論、別に怪しい手段で手に入れたもんじゃないぞ?」

「……しかるべきところに持っていけば、その百倍でも売れるだろうに、どうしてこんなところで、そんな値段で売ってるのよ?」

「まあ確かに、商人ならそう考えるのかもしれないがな。俺は職人だ。それを求めてる人のとこにいきゃあそれで満足だよ」


 そう言って肩をすくめる男は、嘘を言ってはいないようであった。

 だがさすがに怪しすぎるため、そう簡単に信用することは出来ないが――


「まあ、信用して大丈夫だと思うよ? これも変なとこなかったし。ちゃんと調べたからね」


 調べた、というのは、おそらく魔法で、ということだろう。

 相変わらずの抜け目なさと……あと色々な意味で、思わず溜息が漏れる。

 分かったと、頷いた。


「ごめんなさいね、変に疑ってしまって」

「いや、それが当然だろ。気にしてねえよ。っと、それよりも、それ買ってくれたはいいが、ちゃんとはまるのか? 無理なようなら打ち直すぜ?」

「いえ、大丈夫です」


 言うと、アランはこちらへと向き直った。

 その手に指輪を持ったまま――


「さて、と……リーズはどの指にはめたい?」


 瞬間、リーズの視線は反射的に左手の薬指に向かっていた。


 しかしすぐに、その思考を打ち消す。

 ない。

 それはない。

 それを口に出す勇気と、覚悟がない。


 だから。


「え、っと……左の人差し指」

「了解」


 素直な自分になれるように。

 そんな願いを込めて口にした場所へと、アランが指輪を通す。

 見た目の時点で分かっていた通り、それは完全にぶかぶかではあったが――


「――練成」


 アランがその言葉を紡いだ瞬間、指輪の大きさが変わり、ピッタリと指にはまる。

 それを見て、男は大袈裟なほどに驚いていた。


「おいおい、どうすんのかと思ったら……なるほど、魔導士だったのか」

「よし、これで大丈夫そう、かな?」

「……そうね、問題ないと思うわ」


 言った直後に口を硬く閉じたのは、ちょっとでも気を緩めるととても無様なことになりそうだったからである。

 そんな自分を見て何やら男がにやにやしていたような気がしたが、気のせいだと思うことにした。


「ったく、羨ましいねえ……俺にもとっととこんな縁が欲しいもんだが……っと、これはただの愚痴か。んじゃま、ありがとな」

「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」

「……ありがとう」


 そうしてその場から離れ……リーズは正直落ち着かなかったが、これ、について聞かないわけにもいかなかったので、口を開く。


「……それで、これ、どういうことなのよ?」

「どういうことって言われても……まあ、特に深い意味なんてないんだけどね? 単純に目に付いて、ふと思い付いただけっていうか……敢えて言うなら、日頃の感謝の気持ちとか、そういうのかな?」

「……そ」


 その言葉を聞いて、一転落ち込むのだから、本当に我ながら面倒くさいと思う。


 だがそういうことならばと、すぐに意識を切り替える。

 まあ、ある意味ではよかったのかもしれないし……これから、だ。


 何にせよ、今は散策の途中である。

 その再開が優先されるべきことであり――


「それで、これからどうするつもりなのかしら? そろそろここは一通り見て回ったと思うのだけれど」

「そうだね、じゃあ次って言いたいところだけど……んー、やっぱどうせだから路地裏とかも見ておきたいかなぁ」

「路地裏……? ……まあ、アランが行きたいと言うのならば、構わないけれど」

「あれ、反対? 別に治安が悪いとかって話はなかったよね?」

「それはないはずだけど……」


 路地裏とは言っても、そこもちゃんとした都市の一部だ。

 怪しい店などがあったり、柄の悪い人物がうろついていたりすることは滅多にない。

 まあ柄云々に関しては、冒険者主体という時点で今更とも言えるが。


 ともあれ、だからリーズが渋ったのは、そういう理由によるものではない。

 単純に、印象の問題であるのと――


「……ま、別に問題はないわ。行きたいのなら、行きましょう?」

「いいの? 僕も無理にとは言わないけど?」

「いいのよ。大した理由ではないのだし、アランが気にする必要はないわ」


 ――リーズも行ったことがないため、案内することが出来ないのが嫌だった、などと言えるわけがないだろう。


「むぅ……まあ、リーズがいいって言ってくれるなら、いいか」

「ええ。……もっとも、私も路地裏には言ったことがないから、ここから先は案内出来ないけれど」

「ふむ、つまり未知の探検か。ちょっとわくわくするね?」

「……アランって、結構子供っぽいところあるわよね?」

「そうかな?」


 そうよ、と頷きながら、自分の口元が綻ぶのは、こちらもやはり子供っぽいからなのだろうか?

 ある意味でそうなのかもしれないと、口元を苦笑に変えながら、アランと共にすぐ近くの道へと視線を向ける。

 そして右手で左手にそっと触れながら、やはりアランと共に、そちらに向けて歩き出した。

 おかしい、前後編の予定だったのに何故か一話増えた。

 まあイチャイチャさせてたら文字数が増えすぎちゃったからね、仕方ないね。

 さすがにアレなので明日も更新予定です。

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