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ほたるらいと  作者: にやー
12/13

ほたる

私は気付いたらいつもの場所に向かっていた。


私の秘密の場所。

私たちの秘密の場所だった場所。


「今」のゆずるがここに訪れたのを私は見たことがない。


だから今は私だけの秘密の場所。


「はぁはぁ………ふふっ……あはは……」


理由は分からないけどゆずるが私のことを覚えていてくれた。

それだけで私の気持ちは高揚していく。

許されざる罪が許された気になる。



「あははは!!はは!!

あははははははははははははは!!!」


滑稽。惨め。


結局私はまだ許されたいと…幸せになりたいと思っている。


「あはははは………」


償いきれない罪を犯して、償い方も分からなくて…せめてもの償いと称してゆずるの成長を見守って…………

……誰にも頼れなくて………


「……はは…ははは…」


どうすればよかったの。

どうすればもっと上手にできたの。

ゆずるのお母さんをもっとちゃんと説得してみればよかったの。

死ぬ気でゆずるを連れ出せばよかったの。

もっと弱さを見せて…ゆずるに助けてって言えばよかったの…?


「…は…はは……ううっ………ぐっ……」


私はずるい。

こうやって泣いて自分を正当化するんだ。

助けを請うんだ。

大嫌い。


「………きれい。」


私は秘密の場所の景色が好きだ。


崖から見える海に夕焼けが反射してとてもきれい。


「………ごめんね、ゆずる。」


飛び降りよう。

ゆずるが私のことを覚えてくれてただけでもう十分だ。

十分幸せな人生だった。


「……ばいばい…」



ありがとう。









「ああああぁあぁあああ!!!!!」


崖から飛び降りた私の手を誰かが掴んだ。


「あ……」


「うぎゃぁぁぁぁあ!!肩がいたぁぁ!!」


ゆずる…。


「なんでここに……」


「にしし!!私たちの秘密の場所じゃんよ!」


あ……私の知ってる……私の大好きなゆずるがそこにいる…。


「………はなして……」


「…っ…いやだ!!」


「私はあなたの母親を殺したわ!!

あなたが助けるべき命じゃない!!」


「にしし、そこらへんも踏まえてとりあえずさ…あたしと向き合おうよ……勝手に逃げんなばかぁぁぁぁどっせいー!!」


そのまま片手で私を持ち上げるゆずる。

相変わらずな子だなぁ。

あ…泣いちゃいそう。


「…………話すことなんてないわよ。」


何回夢見てきたかな。


「……あたしは言いたいことがあるよ。」


こうやってゆずるとお話しをするのを。


「……わかってる…。」


それが罵声だろうと私は夢見てきた。


「ごめん!!!!」


「…………は…?」


なんでゆずるが謝るの…?

本当は私が…私が謝らないといけないのに…。


「今までほたるに迷惑かけた!!

ほたるの人生めちゃくちゃにした!!

だからごめん!!」


「な…なに言って……」


「それからありがとう!!!

あたしなんかのためにここまでしてくれて!!

ほんとにありがとう!!!」


そう言いながらゆずるは大きくお辞儀をした。


「………なんで…」


謝られる筋合いもお礼を言われる筋合いもない。


「私はゆずるのお母さんを殺したのよ!?

ゆずるの…ゆずるの人生をめちゃくちゃにしたんだよ!?

ありがとうなんてやめてよ!!

私は償わなきゃいけないの!!

私はあなたに許されちゃいけないの!!」


心の片隅に、ほんとにちょっとだけ、こんな光景を思い描いたことがある。

ゆずるが私のことを許してくれて今までみたいにゆずると笑いあう光景。

あり得ない…あってはいけない私の中だけの妄想。


「ゆうすけさんにでも話を聞いたんでしょ?!

ならわかるわよね?!!

私は償わなきゃいけないの!!幸せになっちゃいけないの!!それくらいのことをしたの!!

もっと他にやりようがあったはずなのに!!

殺さなくたってよかったはずなのに!!

ゆずるの人生を壊さなくてもよかったはずなのに!!!」



私はあの日からずっと自問自答してきたことを言葉にした。


ためらいがないわけがなかった。

後悔がないわけがなかった。

それでもゆずるのためだって言い聞かせてきた。


「だから謝んないでよ!!

お礼なんて……言わないでよ!!

だって私はー


「もういいよ。」


ゆずるは私の手を包み込むように握ってきた。


「………ゆずる…」


「もう…いいんだよ、ほたる。

あたしが許すから。

世界中の人がほたるのこと許さなくてもあたしが許すから。

だからもういいでしょ、ほたる?」


にしし、と笑いながら私のことを抱きしめてくれた。


私は泣いた。

許されるはずのない罪が許されたような気がしたから。




私が泣き止むのを待ってからゆずるが口を開けた。


「気持ちはありがたいけど私は償わなきゃいけないから幸せになれないわー、なんて考えてるでしょー!?」


「……そうね、ゆずるには悪いけど私は……」


「もーこの際だからほたるの気持ちを汲み取ってあげようじゃないか。

ほたる、あたしといよう。」


「……え?」


「償いたいんでしょ?

ならあたしに償うべきじゃん?

あたしはほたるといたい。

これからもずっとずっと一緒にいたい。

償う気持ちがあるなら叶えてよ。」


償いたい…でも…


「でも、それじゃ償いには…」


「にしし、あたしがいいって言ってんだからいいじゃんか。

一緒にいてよ、ほたる。」


また…


また私はゆずるに救われた。

ゆずるはいつも私を助けてくれる。


「…………ありがとう………」


もう涙で視界が見えない。

それでも私はゆずるを放さなかった。

強く、強く抱きしめた。



「だいすき……っ……」






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