ほたる1
騒がしい教室。
お昼休みに入って誰もが楽しそうに友達とお弁当やパンを食べている。
そんな教室の一番後ろの一番窓側の席で私は
一人黙々と早起きして作ったお弁当を食べながら空を眺める。
私には友達と呼べるような間柄の人が皆無だった。
幸いなことにある理由があっていじめられるようなことはなかったからまだましなのかな。
そんな私も二年生になって七月を迎える。
「うおおおおぉい!!ほたるー!!」
そんな私にも友達ができた。
「待っててって言って行ってきたじゃんか!
先たべないでよー!」
このててててうるさい購買からパンを4つも買って帰ってきたこいつが私の友達の高野宮ゆずるだ。
二年生になって同じクラスになってからよく話しかけてくる。
「……相変わらずうるさいよ、ゆずる。」
「にしし、うん!そうだね!
あたしは相変わらずうるさいよ、ほたる!」
ゆずるはいつでも笑顔で明るくて友達が多い。
しかもお化粧なんてしてるように見えないのにめちゃくちゃかわいい。
いや、性格の明るさからそう見えるのかもしれないけど少なくとも顔は整っているし背も160はある。
そんなやつだから例に漏れず男女問わず人気がある。
いい証拠に購買まで二分とかからないこの教室からパンを買いにいくのにたっぷり二十分かかった。
そんなゆずるが私に話しかけるのは気まぐれだろうな。
「……遅いゆずるがいけないんだよ。
待ってらんないって」
反対に私は口数が少なくて暗くてお世辞にも顔はいいとは思えなくて
これも例に漏れずに友達が少ない。
いや、訂正。
例に漏れて友達がいなかった。
ゆずるが友達第一号だ。
「にしし、それを待っててくれてたらゆずるちゃんときめいちゃってたのになぁ。」
「待たなくてよかったよ。」
「ひどっ!!ほたるは相変わらず冷たい!!
早くこころとやらを開きなさい!!」
ゆずるはそう言うけどこれでも大分こころとやらを開いている。
当初なんて会話にすらならなかったんだから。
美味しそうに買ってきたメロンパンを頬張りながらゆずるが言う。
なぜ太らない?
「でさでさ!今日放課後空いてる?!
美味しそうなクレープ屋見つけたんだ!!
いこーよ!」
なぜ太らない?
ゆずるはほぼ毎日といっていいくらい私を遊びに誘ってくる。
迷惑かどうかきかれたら迷惑じゃない。
「ゆずるはなんで私をさそうの?」
こんなことを聞く私だから友達ができないんだろうな。
素直に喜べばいいのに。
「あたしはそんなん聞いてないんだな!
イエスかノーかで答えなさい!!」
私は小さく頷いた。
嫌じゃないから。
そして私は俯いた。
「なんだなんだー!
嬉しいときは笑うもんだよ。
ほら、笑顔を見せてみ!ほらほらほら!」
「……うっぜー、ばーか」
「にしし」
何故かゆずるは満足そうに笑う。
私はこの顔が嫌いじゃない。
放課後、さっきの約束もあるからゆずると教室をでる。
「にしし、さっきはクレープ食べにいくって言ったけど実は今日は違うのだー!!」
「…は?」
ほんとにこいつはよくわかんないやつだ。
「ほたるをさ、連れて行きたい場所があるんだ。
わかってると思うけど拒否権はないよー!」
うぜー。
ほんと自分勝手で私の気持ちなんて無視して話をどんどん進める…ほんとわけわかんない。
でもどこに連れて行ってくれるか楽しみにしてる私が一番うざい。
「今日はねー、天気がいいから絶対気にいると思うんだ。
あたしの秘密の場所なんだけどほたるには教えてあげる!
お母さんにだって教えてないんだぞー!?」
「ゆずるはお母さんと仲がいいね。」
両親と仲がうまくいってなくて、高校に入ってから一人暮らしをしてる私とは大違いだ。
この日ゆずるが私を連れて行ってくれた場所を私は忘れない。
ゆずると一緒にいたこと。
ゆずるの独特な笑顔。
ゆずると私の秘密の場所。
ゆずるのことさえ忘れなければ私は生きていけるよ。
だからあの日、あんなことになっちゃったことを私は後悔なんてしてない。
例えそれがどんなに許されないことであろうとも…ゆずるが私のことわかんなくなっちゃっても…
この先ゆずるに会えなくなっても…私は…後悔なんてあるわけない。