裸の使者達 The Return ~半裸の使者達
BL要素を含みます、ご了承の上お読み下さい。
はぁ~。
何か悟り開いたわ。
だってさ、私って自分の人生においては主人公だけど、この四人といると脇役になるんだよね。
冷静になって考えたら、まず全裸の四人に目が行くじゃない?
私なんて「アラ、いたの?」ってな扱いよ。
そう考えれば別にどうって事ないわよ。
***
「あ、隊長って右寄りですね? 僕もですよ」
「ん? ああ。右の方が収まりが良いよな」
「あら、私は左よ」
国交の交渉が上手く行きハシャいでいる彼等は、鞍の上に鎮座するブツを覗き込みながらどっち寄りかで盛り上がっている。
「私は両利きですよ。その都度、都合の良い方へ」
馬もさぞかしイヤだろうな……
ユイは乗馬の経験はないが、乗れなければ彼等に同乗しなければならない事は明らかだった。
モチロン死ぬ気で頑張った。
だが、彼等が服を着てたら「乗れな~い」とかブリッコかまして同乗させて貰っていたであろう。
「ねぇ、ユイちゃんってば!」
「え? はい?」
「ユイちゃんはどっち寄りがタイプ?」
どちらが正解なのかはよく分からないが、ユイの答えは決まっていた。
「し、強いて言うならパンツは履いてる人、かな……」
「ふぅん……」
***
「イヤーン! プリケツにフンドシよー! 皆、早くぅ!!」
「きゃーーっ! ステキー! 眼福よ!!」
ここの男性用のパンツはフンドシのようだ。
彼等ご自慢のプリケツ美を存分に引き立てるアイテムである……
最早、彼等を囲んでいるのは感極まったゴッツイオネエのみ。
そして、彼(女)達はフンドシの紐にお捻りを挟んでいる。
しかし、金があっても野宿には変わりない。
*
「使者団がまた来たぞー! 子供達と年頃の娘は家に入れー!」
「ヤッター! ハダカだー!」
「ハダカ馬が来るぞー!」
待ってました、と喜び勇んでワラワラと家から飛び出る子供達。
「コラ! 家に入りなさい!」
慌てて子供達の回収に走り回るお母さん達。
「うわっ! 何か履いてる! つまんねー!」
「フンドシだ! あれ、フンドシだよ!」
「うわっ! マジで!? カッコイイ!」
そしてやっぱり子供達には大ウケ。
相変わらずキャッキャキャッキャと転げまわって喜んでる。
そして、子供達の歓声から、要所を隠すという機能は同じでも、フンドシとパンツは別物であることが判明した。
***
さて、肌寒くなってきた頃、随分と大きな街に到着した。
そろそろ王都が近いのだろう。洗練された街並みに立派な構えの宿もある。
*
「ユイちゃんもっと火の傍においで。そろそろ冷える時期だし、風邪ひいちゃうよ?」
「あ……はい。そうですね」
火の傍に居心地悪そうに座るユイを、四人はいつになく真顔でコッチを見ている。
「ユイ」
「うひゃっ……な、何ですか?」
「あと十日ほどで王都に着く」
「あ、そうなんですか」
「ああ、そうだ。それで、身の振り方は決めたか?」
「あ、それなんですけど……幸い言葉も通じるし、元の世界に戻る方法を探そうと思ってます!」
「帰るのか!? 魔国を出るときに言っただろう?」
「え、ええと……え!? アレって本気だったの!?」
「いやぁねぇ、ユイってば。一体今まで私達の何を見ていたの?」
「ええ? 何をって……」
「帰路ではユイにありのままの俺達を見て貰ったつもりだ。俺達はこれ以上でもこれ以下でもない」
「それとも私達では不満ですか?」
「でも、ユイちゃん実は満更じゃないよね? いつも顔を赤くして恥ずかしそうに僕達から顔逸らすもんね?」
「そ、それは……」直視できねぇよ。
「ほら、またそうやって顔を逸らして。ふふふ、可愛いなぁ」
「ふむ……しかし、私に靡かない女性は初めてですよ。もしかして、無関心を装って私の気を引こうとか?」
「そこまで頑なだと、こちらを向かせたくなるな」
「いえ、あの、えっと……」
「皆、急かしたらダメよ。ね? 王都に着くまでに決めれば良いわよ」
「う……まぁ、はい。分かりました」
***
その後、下らない話をしつつ一人、また一人と眠りに落ちていった。
王都に近づき気の緩んだ彼等は不寝番を決めていなかったため火は夜更けに消えた。
そして惨劇は早朝に起こった。
*
「うーん……重い……え? 何この棒?」
「……んー……ん? ……? んん? 何故、俺の顔の下にコカンがあるのだ?」
「え、隊長!? この棒…… うげぇっ! 隊長が何で僕の顔の上にコカン乗せてるんですか!? つかケツ撫で回さないで下さい!」
「違うわボケ! さっさと俺の下からコカンをどけろ!」
「いや! 隊長が僕の上からどけば良い……ちょっ、ポロッてる! ポロッ……うぐぇっ! 口に入っ!!」
「あぁっ……! 貴様! しゃ、喋るな、口を動かすな!」
今朝は寒かった。
男達は暖を求めているうちに互いに擦り寄ってしまったのだろう。
この後、朝が故、男性故の現象が惨劇を齎した。
この件に関して五人は頑なに口を閉ざし、そして彼等は決して野宿をしなくなった。
「寒いから」
と言って。
そして、ユイも固く心に誓った。
こいつらの世話にだけはならない。と。
***
「ああ、やっと着きましたね。我が愛する祖国」
「ホーント。寒くなる前に帰って来られて良かったわぁ」
「早速、王に報告しましょう。ユイも来て下さいね」
「はい」
*
王への報告を終え褒美を取らそうと労われた後、五人は王子の部屋へ向った。
「さて、ユイ。決めましたか?」
「ええ。皆さんの気持ちはありがたいのですが、私は帰る方法を探します」
「やはりそうですか。私も、祖国へ帰ってきて自分の国が一番だと改めて認識しました。ですからユイの気持ちは分かります」
「はぁ。やっぱりそうなのね……何となくそうかなって思ってたわ」
「ありがとうございます。ところで……そろそろ服着たらどうです?」
自分の行く末よりも、今はそっちが気になる。
「でもさぁ、そうは言っても身を寄せるところがないと探す物も探せないんじゃない?」
「そうかもしれないですが、皆さんに頼るのは……嫌なんです!」
「ユイちゃん……? 遠慮しなくて良いんだよ?」
「いえ……遠慮じゃなくて」
「俺は構わん。三人で暮らそう。そこで帰る方法を探せば良い」
「それは、助かりますけ、ど……え? 三人?」
「あ、僕、隊長と暮らすことにしたから。そしてユイちゃんも一緒だから。三人だよ」
「ユイが誰かを選ぶのならそれに従おうと思っていたが、そうでないのなら俺達二人で面倒をみようと決めていた」
王子と美人は三人の顔を交互に見た。
「ああ、そういう事でしたか」
「残念だけど負けたわ。アナタ達二人に譲るわね」
「え!? あ、私、やっぱり王子好き。あ、美人も好き」
「優しい子ね。良いのよ……私達に気を遣わなくて」
「さあ、二人の許へ行って下さい。これ以上ここへいると名残惜しくなります」
二人はユイの背中を優しく押した。
「ユイちゃん。やっと、捕まえた」
「よし。では、行こう。俺達の家へ」
「イ、イヤーー!! はーなーせー!」
両側をガッシリ押さえ込まれ連れ去られたユイがこの後どうなるかは三人しか知らない。
お付き合い誠にありがとうございました。
江戸時代、相撲を奉納するとき全裸だった、という話を思い出して出来上がった話です。
神様に、武器は所持していませんとアピールするためだったそうです。
現代ではポロリンするとモチロン、負けですね。