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そんな、毎日

作者: 半月

ガラリとした教室の中は窓が開いてて、人がいなくて、寒かった。

冬の空気にさらされた私は、一つ、小さくブルッと震えると、本を片手に読み始めた。

冷たい空気は、新鮮だったけど、喉や鼻を通っていくにはあまりにも冷たかった。

パタン!と派手な音をたて、本を閉じると、窓を閉めようと手を伸ばしたとき、外の景色が見えた。

外の景色は、はじめから、ずっと前からあったけれど、私は特に気にしたこともなかった。

いちいち意識して見るほどの物でもないと、空や雲ばかり、ぼんやりと見ていたせいかもしれない。

外は、放課後とあって、騒がしかった。

みんな、笑っている。

部活をして、一生懸命。

私が今、立っているこの教室だって、数分前は向こうと同じように騒がしかったのに、今はこの教室に、私以外の足音一つ、しやしない。

まるで、さっきまでの教室の時間を切り取って、こっから向こうへ移したみたいね。

ふっと笑ったら、息が白くなった。

人間って、勝手だな・・・。

さっきまではうるさいなんて思ってたのに、物音がこの教室から消えると、寂しい・・・なんて。

ナポレオンのように「私の辞書に不可能という文字はない。」とか言い切っちゃうような人なら、今この時間もこんなこと思ったりはしないのだろうけど。

そういえばお昼にナポリタンを食べた。

ナポレオンと全然関係ないけど・・・ナポレオン、ナポリタン、ナポレオン、ナポリタン。

どうでも良いことをムダに繰り返し、復唱する。

いきなり隣の隣の教室からギターの音がした。

どうやら今日は軽音部、別名バンド部の練習日らしい。

ベース、ドラム・・・キーボード・・・それから・・・あれ?ボーカルは?

今日は、ボーカルはいないらしい。

みんなで苦手な部分を演奏しているのだろう。

ちぐはぐ、ちぐはぐ・・・これがみんなで合わさって一つの曲になるのだから不思議。

もう一つずっと向こうにはブラスバンド部も存在している。

あと、コーラス部も。

この学校、なんでこんなに音楽に力入れてるんだろう・・・別にスポーツも力入れてるけど・・・日陰クラブと言えば、読書部、シナリオライター兼小説を書く部、イラスト部、マンガ部・・・は、去年からイラスト部と合併したんだった・・・。

美術部もなかなか日陰だと思う。賞はここ十数年、誰一人取っていないから。

読書部に至っては、ひたすらに読書をするだけで、最近は部活としても認めてもらってはいない。

だって、部員は、私一人だから。

最初は何人かいた。

でもみんな大体将来行きたい大学とかの事を考えて読書部からいなくなってしまう。

残ったのは私一人。

たった、一人。

ガラガラッと窓を閉めた。

本を机の上に置いたまま、私は自分の鞄を引っ掴むと、帰路をたどる。

空はもう薄暗かった。

サヨウナラ、教室。

サヨウナラ、みなさん。

サヨウナラ、先生。

サヨウナラ、学校。

そんな、毎日。

そんな、毎日。

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