不眠の加護持ち令嬢の話
「私は睡眠がいらない不眠の加護を授かったのよ!」
「はい、お客様、その通りでございます」
「ササキ、頭のマッサージをしなさい」
「はい、お嬢様、横になって下さい」
グガー!
お嬢様はすぐに寝落ちされたわ。私は転移した日本の高校生だ。
うろ覚えの知識でマッサージ屋を開業したらお客様がついた。女性限定だ。
「はい、お嬢様、終わりです」
「まあ・・・、もう、こんな時間」
「はい、4時間マッサージをしました」
「そう、なら銀貨4枚ね」
「毎度!」
お嬢様は寝ない加護があると自慢をするようになった。
理由は婚約破棄をされてショックを受けたそうだ。
『マリアは寝ないで働いているぞ!君は10時間寝ているそうではないか?』
『はい、体質でして・・』
『怠け者め。婚約を破棄しマリアを迎えることにする』
フウ、この状態が上手く行くとは思わないが、私はただのマッサージ屋だ。
貴族の家の事情に・・・
と思ったら。お嬢様のお父様が来た。
「君か?マリアーネが懇意にしているマッサージ師というのは?」
「はい、女なので安心ですよ」
「どうにかしてくれ、一日4時間睡眠でも体調不良のようだ。元々睡眠時間が長い子だったのだ」
「まあ、そうですか・・・なら、相談に乗りますよ」
金貨10枚で相談に乗った。
ようは、皆で眠らせれば良いのだ。
転移した時の学校の制服を着てメイドを連れお嬢様の部屋に乱入した。
「あら、ササキ、どうしたの?キャア!何をなさいますの?」
「メイドさんたち、やっちゃって下さい」
「「「はい!」」」
「お嬢様、お覚悟を!」
「ササキ、貴方は味方ではなかったの?」
「ヒーヒヒヒヒ、私は眠りの国から来た妖精だったのです!不眠の加護持ちは敵だ!」
「そ、そんな!」
自分で妖精と名乗って馬鹿みたいだ。これも日常から非日常へ転換する儀式みたいなものだ。
無理矢理フカフカのベッドに寝かせて、暗くしてお香を焚いた。
「い、嫌ですわ。わ、私は寝ない・・・」
「お嬢様、御頭をマッサージさせて頂きます」
「あ・・・グーグー」
やはり疲れているのだろう。すぐに寝落ちをされた。
それ以来・・・
「グスン、眠りの妖精に無理矢理眠らされましたわ・・・グスン」
「お嬢様、眠りの妖精にあらがえる者はおりませんわ。災難でしたね。さあ、ベッドメイク終わりました。どうぞ就寝して下さい」
「はい・・・」
寝るようになった。
この外からのせいが大事だ。理由付けがあれば寝るものだと踏んだ。
その後、私のマッサージ屋さんはほどほど繁盛するようになった。
孤児のロザリーちゃんを雇うまでになった。
「女性のマッサージ師だから安心ですよ!」
「女性限定なのです。いらっしゃいませなのです!」
「フウ、肩が凝りますわ」
「縦ロールが重すぎでは?」
「これは、標準装備よ!」
ドリルのような縦ロールの令嬢も来られるようになった。
美容も始めようか・・・
そんな中、男が飛び込んで来た。
「おい、マッサージ師、噂を聞いた。マリアを眠らせてくれ」
「はい?」
事情を聞いたら、マリアーネさんの元婚約者で、従姉妹が不眠症で凶暴化しているそうだ。
「あの、お客様が連れて来たらマッサージをします・・・」
「だから、それを言ったら怒るのだ。君の方から営業をしてくれ」
これ以上いると他の女性のお客様が困惑する。
「とにかく、男性の立ち入りは禁止です。紳士倶楽部に婦人が入れないのと同じです」
「だから依頼を受けてくれたら出ていく!」
「嫌です」
追い返そうとしたが中々帰らない。
困ったな。
「まあ、何ですのこの騒ぎは?何故殿方がおりますの?ササキ、早く施術しなさい」
「ヒィ、グレース様?!」
「まあ、貴方は・・・確かマリアーネ様の元婚約者の~」
「ヒィ、帰ります!」
相当な高位貴族令嬢のようだ。
「お嬢様、有難うございます」
「あら、私はグレース・ホイマンよ」
「グレース様、有難うございます」
「あら、貴女は公爵家の名を出しても萎縮しないからいいわね」
その後・・・・
マリアーネ様も来られるようになった。
「グスン、眠りの妖精様・・・もしかして私の守護妖精だったのですか?寝てから調子が良いですわ」
『そうです』『いや、違うし』どっちを答えようか判断に困る。
「フフフフ、施術を受けて感じて下さい。眷属のロザリーちゃんもお薦めですよ。腕を確かめて下さい」
「は、はい」
とりあえず商売につなげてみた。
最後までお読み頂き有難うございました。




