↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

婚約破棄されたので、王宮の落とし物台帳から王子の嘘を拾いました

作者: 入河 珈一
掲載日:2026/05/27

拾い物係の令嬢が、嘘まで拾います。

「落とし物係など、君にふさわしい末路だ」


 婚約破棄を告げた王子殿下は、わたしを見下ろして笑った。


 たしかに王宮落とし物係は、舞踏会の花形ではない。片方だけの手袋、名のない鍵、泣き濡れたハンカチ。毎日届くのは、誰かが忘れた小さなものばかりだ。


 けれど、忘れ物は嘘をつかない。


 わたしは台帳を開いた。王子殿下の新しい恋人がなくした耳飾り。その耳飾りが見つかったのは、立ち入り禁止の財務庫前。王子殿下の署名入りの鍵束が届いたのは、監査前夜。さらに、王家の印章がついた白紙委任状まで、庭園の噴水から拾われていた。


「王妃陛下。こちらが、この三週間の落とし物台帳です」


 王妃様は一頁ずつめくり、やがて扇を閉じた。


「落とし物係を地味だと言ったのは誰かしら」


 王子殿下の顔が青ざめる。


「違います。これは偶然で」


「偶然が、同じ署名と同じ時間に重なりすぎています」


 わたしは拾った鍵束を差し出した。


「持ち主へお返しします。ただし、返却先は王室監査院です」


 その日、王子殿下は恋も嘘も落とした。


 そしてわたしは翌朝、王妃様から新しい辞令を受け取った。


『王宮遺失物監査官』


 落とし物係の仕事は変わらない。ただ、拾うものが少し大きくなっただけだ。

読んでくださってありがとうございます。評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。