婚約破棄されたので、王宮の落とし物台帳から王子の嘘を拾いました
拾い物係の令嬢が、嘘まで拾います。
「落とし物係など、君にふさわしい末路だ」
婚約破棄を告げた王子殿下は、わたしを見下ろして笑った。
たしかに王宮落とし物係は、舞踏会の花形ではない。片方だけの手袋、名のない鍵、泣き濡れたハンカチ。毎日届くのは、誰かが忘れた小さなものばかりだ。
けれど、忘れ物は嘘をつかない。
わたしは台帳を開いた。王子殿下の新しい恋人がなくした耳飾り。その耳飾りが見つかったのは、立ち入り禁止の財務庫前。王子殿下の署名入りの鍵束が届いたのは、監査前夜。さらに、王家の印章がついた白紙委任状まで、庭園の噴水から拾われていた。
「王妃陛下。こちらが、この三週間の落とし物台帳です」
王妃様は一頁ずつめくり、やがて扇を閉じた。
「落とし物係を地味だと言ったのは誰かしら」
王子殿下の顔が青ざめる。
「違います。これは偶然で」
「偶然が、同じ署名と同じ時間に重なりすぎています」
わたしは拾った鍵束を差し出した。
「持ち主へお返しします。ただし、返却先は王室監査院です」
その日、王子殿下は恋も嘘も落とした。
そしてわたしは翌朝、王妃様から新しい辞令を受け取った。
『王宮遺失物監査官』
落とし物係の仕事は変わらない。ただ、拾うものが少し大きくなっただけだ。
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