魔王を討伐した勇者様の余生
「うぉっらぁああああああああっ!!」
重戦士がその盾で魔王の攻撃を防いだ。
俺達も魔王も満身創痍。それが魔王にとっても最後の、渾身の攻撃だったのだろう。それを重戦士は防ぎ切った。
防ぎ切ったのを確認すると、重戦士は満足そうな笑顔で俺にサムズアップし、倒れた。
「気休め程度ですけど」
僧侶が俺の傷を少し癒した。僧侶の魔力量も限界突破済みで、俺の擦り傷がちょっと治った程度にしかならない治癒魔法だったが。
それでも俺には勇気百倍だった。
「これが最後だからね」
魔法使いも俺にバフ魔法を付与した。彼女の魔力も限界突破済みなので、こちらもまた気休め程度のものだったが、勇気百倍✕勇気百倍で勇気一万倍を得た気持ちで俺は立ち上がった。
もう、限界なんか遥か昔に超えてしまってるよ。倒れて休んでしまおうぜ。俺の体はずっと悲鳴を上げているが、全て無視。
俺は、勇者だっ!!!!
「この一撃に、全てを籠めてお前を討つ!!!!」
この一撃に懸かっているのは俺達勇者パーティー4人の命運だけじゃない。この世界に生きとし生けるもの全ての命運が懸かっていた。
俺はどうなったって構わない。魔王、お前を討てるのであれば!!!!
「うぉっ、るぁあああああああああっ!!!!」
俺は全身全霊+仲間のパワーやその他諸々全てを込めて、最後の一振りを魔王へ叩き込んだ。その一振りは魔王の体を見事真っ二つにし、魔王を粉微塵に爆散させた。
世界を闇に包んだ諸悪の根源たる魔王が爆散し、消滅したことで、世界から瘴気が消えていった。力を使い果たし、膝をついた俺の目にも世界が浄化され、美しくなっていくのが見えた。
ああ、俺達は世界を救ったのだ。救えたのだ。これ程の喜びはない。
「勇者パーティーよ、素晴らしい働きであった!! 皆の者、彼等を讃えよ!!!!」
国に戻った俺達を待っていたのは、国王を初めとした皆の称賛だった。老若男女、身分も何も関係なく、全ての人が俺達のことを大絶賛した。それ相応のことを成し遂げたからというのは聞いた。
王室主催で俺達の顔見せパレードまで行われた。
「勇者様だ。僕達を、人類を、世界を救ってくれてありがとう!!」
「これでもう、皆の命が失われていくことがなくなるのね。こんな素晴らしい日はないわ。ありがとう!! ありがとう!!」
「勇者様、ありがとう!! これで俺達も平和で新しい人生を歩んでいけます。本当にありがとう!!」
絶賛、絶賛、絶賛の嵐だった。俺達の働きのおかげで、彼等の人生が輝きを取り戻したからだというのは分かる。それに感謝したい気持ちも、そうなって良かったんだというのも分かる。最高だってのも分かる。
ただ、俺の脳味噌の片隅の何かが冷たく言っていた。
この歳で大業を成し遂げてしまった。
そんな俺の人生の残りは全部、ただの余生だと。
◆◆◆◆◆
「お兄ちゃん、ありがとーーーー」
「気を付けて家に帰るんだよ」
魔王討伐から数年後、俺は超が十個くらいつきそうなくらいのド田舎の村で暮らしていた。此処で俺はただの猟師として生計を立てていた。今も1人の幼女が家のお使いで俺から肉を買っていった。
此処はあまりにも超絶ハイパー田舎過ぎたので、魔王についての話も届かず、それ故に俺が勇者だというのも知られない。それが良かった。
魔王討伐記念パレードやパーティーが一段落して、勇者パーティー解散してこれから俺達はどうするんだってなった時、勇者だった俺にはいくつも話が持ちかけられた。近衛騎士団の団長から、どこぞの辺境伯の当主、某侯爵家の入り婿、何処か小国の王女の婿で国王まで、正しくよりどりみどりだったが……
「どれもガラじゃねぇんだよなぁ」
俺は勇者になるまではただの子爵家の三男坊で、ただの新米雑兵だった。何もなければ出世など夢のまた夢で、結婚して家族ができたら万々歳な人生と思えてしまう、ザ・庶民だった。
そんな俺に色々な肩書きを背負わせたい人はたくさんいたが、俺はその全てを断って姿を消した。一人旅立ちます、探さないでくださいと手紙を残して。
「偉い立場なんて、俺には無理無理」
「やってみなけりゃ分かんないじゃない」
「え!?」
俺の独り言に返事があった。驚いた俺がその声の方を向くと、そこには魔法使いがいた。勇者パーティーにいた頃の服装で。
どういうこと? 俺は勇者パーティーだったメンバーも含め、誰にも何処へ行くとは伝えていなかった筈なのにだ。
魔法使いはまるで、かくれんぼをしていた子供を見事見付けたかのような愉快そうな笑みを浮かべた。愉快そうな? いや、愉快なんだろうな。100%愉快なんだろうな。コイツはそういう女だ。
「アンタ、こんな所にいたのね。探したわ」
「どうやって此処へ来た? 俺を見付けだした?」
少し汗をかきながらそう訊くと、魔法使いはさらに愉快そうに口元を歪め、三日月のような形にした。
それを見て、俺は思い出した。俺達がまだ勇者パーティーとして無名だった頃、コイツのこの笑みを見た冒険者で『悪役令嬢スマイル』と陰口を叩いた輩がいたなと。その輩は当然、コイツの火炎魔法の餌食にされた訳だが……
冒険の最後の方では、そんな『悪役令嬢スマイル』も見れなくなっていた。そんな余裕がなくなっていたことを思い出した。
そんな悪役令嬢魔法使いはその大きな胸を張って言った。
「アンタがいなくなってからずっとね、世界中にアタシの使い魔を飛ばしていたのよ。アンタの魔力の残滓を探すようにね。アンタずっと魔力出さずに隠れてたじゃない。でも、ソレ倒す為に魔力使ったでしょ? そうしたらアタシにはお見通し♪」
魔法使いは家の端に置いてある肉塊を指差した。そこには俺が数日前に狩って、先程村の幼女がお使いで買っていったダースドラゴンの肉塊があった。
通常の動物や下級魔獣程度ならば魔力無しの剣技だけで十分倒せたのだが、ダースドラゴンはダメだった。魔力使わないと剣そのものがダメになりそうだった。だから、剣に魔力を纏わせた。ほんの少し纏わせた。それだけだったのだが……
それをコイツは見逃さなかったと言うのか。俺を見付けだす。それだけの為にどれだけリソース割いていたと言うんだ?
その魔法使いは凶悪な魔女のような笑みのまま俺に一歩一歩歩み寄り、右手の人差し指で俺の胸をつついて言った。
「アタシからは逃げられない。逃がしゃしないよ」
「ってか、お前は魔法ギルドのトップになって忙しくしていたんじゃないか? こんな所に来ちまっていいのか?」
俺は強引に話を変えた。コイツに帰ってもらわないと、俺の平穏では怠惰な生活が脅かされそうだったからだ。
何故、魔法使いは此処に来たのか。それは俺を国の中枢に呼び戻し、面倒臭そうな仕事をやらせる他考えられない。うん、今になって考えてもそれは嫌だ。
しかしながら魔法使いよ、その面倒臭そうな何かがお前の今の仕事だ。大切な仕事だ。故に帰り給え。そう思いながら俺は彼女にそう言ったのだが、魔法使いはあっさり言った。言いやがった。
「あ、それなら辞めた」
「はぁああああああああっ!?」
辞めた? 辞めただと? 魔法ギルドのトップと言うのは、文字通り魔法使いという職業の中のトップであり、全魔法使いの憧れの地位だろう? それを辞めた? あっさり辞めただと?
俺は顎が外れそうになりながら魔法使いに訊ねた。何故、辞めたのかと。
「だって、つまんないし。好き勝手魔法の研究をしたり、何かを探しに行ったり出来ないからさぁ、新しい発見とか面白いことがなーーーーんもないのよね! やらされるのは二流三流の愚物の相手ばっか。そんなん、アタシじゃなきゃ出来ないことじゃないし、やってらんないのよ!!」
え、でも困っている人がいるんじゃないか? そう言葉にしようとして、やめた。困っている人はいるだろう。だが、そこまで尽力しなければいけない義務は彼女にはないとも気付かされた。
伯爵家次女として生まれた彼女は俺よりも貴族社会に慣れてはいるが、それでも若干攻撃的で高飛車な性格故に馴染めてはいない。その為に貴族令嬢としてではなく、魔法使いとして生きようとしていた。それをまた貴族のように生きるのは、彼女としては本末転倒だったのかもしれない。
魔法使いは俺に問い掛けた。
「だからさ、アタシも此処に住んでいいだろう? アタシとアンタ、2人でさ」
「……えっと、あ」
何と答えるのが良いのか俺は考え、考えたが故に言葉が上手く出て来なかった。
魔法使いのことだ。どうせ行き場所は誰にも告げなかったのだろう。それを前提にするなら、俺のこの超弩級スペシャル田舎での平穏で怠惰な暮らしが邪魔されることはなさそうだ。
いいんじゃないか? そう思った瞬間に。
「許可しません」
「「!?」」
丁寧ではあるが、冷たくハッキリした声がした。その声は俺と魔法使い2人のワンダフル怠惰ライフを許可しないと言う。嗚呼、そう言うのは誰なのか振り向かなくても分かっている。
そう、勇者パーティーの良心であり、誰が言ったか『委員長』の異名を持つ僧侶だ。
「私達は力を持っております。悪を滅ぼして平和を手にできたならば、今度はそれを維持する為に働く。当然すべきことですよ、お2人さん」
僧侶は穏やかで優しそうな雰囲気と容姿をした女性ではあるが、超が∞につく程にクソ真面目な人物でもある。魔王討伐の旅の最中でも、俺達は何度正座をさせられたことか。
その正座を思い出したのか、魔法使いは不機嫌そうな顔をして僧侶に問い掛けた。
「どうして此処だって分かった? アタシは行き先を誰にも告げなかった筈だぞ」
「ええ、そうですよね。貴女がそういう方だというのは分かっておりましたわ。そして、時間をかければ勇者様を魔法で見付ける手法があることも。ですから、魔法ギルドへはずっと間者を送っていたのです。24時間365日、片時も時間を空けることなく」
「怖っ!!」
魔法使いは引いていた。俺も引いていた。てか、魔法使いさん。常にスパイがいたことに気付けなかったのかい?
……気付けなかったんだろうなぁ。悪役令嬢的でありながらも性根は曲がっていない魔法使いは、そういう搦め手は非常に苦手としている。そこら辺も貴族令嬢っぽくない。
その一方で、僧侶は穏やかで優しそうな雰囲気でありながらも、ガッツリと貴族令嬢だ。侯爵家の長女だ。腹黒だ。その腹黒僧侶は不思議そうな顔をして言った。
「怖いなんてことはないでしょうに。スパイの皆様には交代制のシフト勤務で任務にあたって頂きましたし、きちんと有給休暇も差し上げてましたわ」
「「…………」」
スパイなのに、ビックリする程にホワイト。ブラック・ストマックなのにホワイト。でもね、そういうことじゃねーのよ。控えめな胸を張って言った僧侶に対し、俺達は思ったことを言葉にしなかった。
思ったことはそう、そこまでリソース割いてやることなのか? ということだった。まあ、訊いたところで「やることですわよ?」と不思議そうな顔を浮かべるだけだろう、この僧侶は。
で、その侯爵家の長女様は俺に目を向けて口を開いた。
「勇者様にまたお会いしましたら、訊かないといけないと思ってることがあったんですよ」
「な、何かな?」
何も訊かれたくはない。だが、そんな訳にはいかない。
そんな強迫観念を持ちながら、俺は僧侶に訊ねた。何を訊きに此処まで来たのかと。
彼女の質問は予想通りのもので。
「どうして、数多くありました要職への誘いを全て断って、このような場所で隠者のような暮らしをしているんですの?」
「ガラじゃないから」
「それはやってみなければ分からないとはそこの魔法使いが言いましたけれど、それだけではないでしょう? それだけならば誘いを断れば良いだけの話で、このようないな…もとい、王都から離れた場所に身を隠す必要性はございませんもの」
「う……」
コイツ、見抜いていやがる。まあ、それだからこそ連絡もせずに一方的な置き手紙で姿を消した訳だ。
この俺が、勇者になる前に通っていた学院でも学術面では振るわなかったこの俺が、この腹黒僧侶に口で叶う訳がないのだから。
「さぁ、お答え下さいまし。何故、挨拶をしなかったのかということへの回答は勘弁して差し上げますから」
「…………」
嗚呼本当にコイツ、見抜いていやがる。俺のことは見抜いていやがる。じゃあ……いや、それなのに?
……詮無きことか。俺は答える。
「俺が誘われた要職云々をやったり、王都に残ったりしたら、どうしても勇者様扱いされるじゃないか? まず、それが嫌だった。俺は神殿の神様の像みたいに崇められたくはない。人として生きていたい」
王都でのパレードの際、俺に向かって跪いて有難う御座います有難う御座いますとお礼を言い続けるお婆さんがいた。
それを見て、俺は戦慄した。そして、心の底から思った。此処にはいられない。パレードなんか許可するんじゃなかったと。
「で?」
魔法使いは俺の顔を覗き込んで、そう訊いてきた。で? も何も、それが答なんだが……と言うよりも前に。
っこいしょと言いながら、魔法使いは俺を椅子に座らせて、さらに自分は俺の右膝に腰掛けた。うん、どういうこと?
魔法使いは再度俺の顔を覗き込んで訊いてきた。
「それだけじゃないでしょ? それどころか、それが本質じゃないでしょ? だってアンタ、基本的にそういうこと気にするタイプじゃないし。そういう細かいの気にするメンタルで勇者様なんかになれる筈ないし」
ん? ディスってる? ディスってる? それ、ディスってるよなぁ?
俺の右太腿に腰掛けながら俺の両頬をぷにぷにと摘む魔法使いにそう思いながらも、俺は声には出さずにいた。てか、俺の頬はスライムじゃねーぞ?
「何をやっているんですの?」
僧侶は俺の頬から魔法使いの手を引き剥がすと、自分は空いた左太腿に腰掛けた。ホワイ・プリースト・ピープル?
そう戸惑う俺の顔を見ながら、僧侶は少し頬を膨らませた。
「この女が腰掛けるのはよろしくて、私が腰掛けるのはよろしくないと仰るんですの?」
「…………」
あの、そういうことじゃないっす。まあ、言っても通じないだろうけど。
僧侶は俺の戸惑いを放置して少しの間俺の両頬をぷにぷにつまむと、ちょっと満足そうな顔をした。それから再度訊いてきた。
「さぁ、私と共に王都へ帰りましょう? 根は真面目な貴方のことですもの。どんな職務だって乗り越えられますわ。苦しかったら私が支えますし」
「え? やだ。戻りたくない」
「ぷあっはっは!! 草!! メッチャ草!! ソッコーフラれてやんのっ!!!!」
魔法使いが僧侶を指差して爆笑した。ざまぁみろとでも言わんばかりに。え? そういう話? そういうんじゃなくない? まあ、どんな話であっても王都には戻らないけどね。
ただ、俺のそんな思考を無視して、魔法使いは俺の右肩を叩きながら笑って言ってきた。
「そんな面倒なことやってらんないよねぇ? アタシと一緒に怠惰な生活送ろうぜぇ。ビバ、レイジー・ライフ♪」
「何を言っているんですの? 何かそうせざるをえない理由があるんですよね? ねぇ!?」
僧侶は俺の左肩を掴んでガクガクと揺すってきた。バシバシ、ガクガク、バシバシ、ガクガク、俺の肩は打楽器じゃないんですけどねぇ。
落ち着け。落ち着け。俺はバシバシガクガクする彼女達の手に自分の手を載せ、少し落ち着かせた。そうしながら、どう言うのが良いかと考え、それから言葉にした。
「何と言うか、どっちも間違いではないんだよなぁ。まず理由だが、それは一言にすると俺が『魔王を倒した勇者様』だからだ」
「「?」」
魔法使いも僧侶も怪訝そうな顔をした。ああ、そうだろうね。
俺は言葉を続ける。
「俺がそんな勇者様だから、何らかの仕事をしたならば俺の意見はかなり優遇されるだろう。それはこれからの平和な時代で足を引っ張ることになりかねない。そして、例え俺がとってもとっても頑張って、どう客観的に見ても素晴らしい結果を残したとしても、そんな俺に出される評価は『魔王を倒した勇者様はその後の治世でも素晴らしい功績を残しました』だ」
「素晴らしい功績を残せたなら良いんじゃないか?」
「そうかもな。でもそれは付加価値、あくまでオマケでしかない。そう、俺はどう頑張ったところで、魔王を倒した以上の功績を残すことは出来ない。アレが俺の人生の最頂点だ」
だからこそ世界に平和を取り戻した瞬間、頭の中の冷たい何かは言ったのだ。俺の残りの人生は全て、余生でしかないと。じゃあ、頑張る甲斐はないわな。
僧侶は分かったような、でもちょっと分からないような顔をして訊いてきた。
「アレ以上の功績はないというのは分かりますけど、周囲の皆様の為に身を粉にして働こうという気はございませんの?」
「ない! 周囲への恩義も何もかも全て、死力尽くして魔王討伐したことでメッチャ余る程に返した。これ以上ああだこうだ強制される謂れもない。俺は奴隷じゃないんだから」
「そうよ。アタシ達は奴隷じゃない。だからもう、ダラダラしたって文句は言わせない。ビバ、ダラダラ・ライフ♪」
「…………分からなくはないですわね、私達がこれからの世で大きな力を振るうのはリスクが大きいのも含めて。ただ、ただ……ダラダラ・ライフというのは不健全でいけませんわ!!」
「じゃあ、また旅をすればいいじゃないか!!」
その時、乱暴にドアが開かれた。そこにいたのはかつて勇者パーティーで重戦士だった奴だ。甲冑を含めて魔王討伐時の装備は一切ないけれど。……まあ、必要はないか。
それはそれとして。
「旅ってどういうこと?」
魔法使いが俺の右太腿から立ち上がり、重戦士の方へ近付いていって訊ねた。何故、いきなり旅なのかと。どういう旅なのかと。
それは俺も思った。倒すべき魔王はいない。生は平和。出る目的もないだろうと。
重戦士はそんな俺達にニッカリと笑って言った。
「我々はずっと魔王を倒すという目的の下で旅をしていた。そして、それは終わった。じゃあ、目的のない旅をしてもいいじゃないか」
「……いいかもしんないな」
俺はボソッと言った。目的のない旅、それもいいだろうと。
旅に出れば魔法使いの言う新しい発見というのも何処かであるだろう。そして、特別な目的はないので程良くダラダラ出来つつも、程良く健全な感じ。
さらに言ってしまえば、旅に出てあちこち行ってしまえば鬱陶しい権力関係と距離を保てる。うん、考えれば考える程に良いことだらけだ。
「「「……………………」」」
俺と僧侶は立ち上がって、魔法使いを含めた3人で視線を交わした。思っていたことは同じ。目的のない旅、良いかもなと。
ぶっちゃけ疲れたり、つまんなくなったり、何らかの事情が出たりしたら辞めてもいいんだ。気楽にいこう。
「じゃ、旅行こう!!」
「「「おおおおおっ!!」」」
俺達は手を掲げ、声にした。まるで勇者パーティーの時に戻ったかのように。
メンバーは同じ。誰も変わってない。ただ、魔王討伐に向けた勇者パーティーだった頃とは対照的に、今は皆が笑顔だった。
政治も何も知ったことではない。俺達は自由だ!!
俺達のこの世界の為の働きはもう、一生分どころか余りが山程あるくらいにし終えてある。残りの余生はもう、好き勝手生きたところで誰も文句など言えないのだから。
俺達の旅はそうして、再び始まるのだ。そう、俺達の旅はこれからだ!!
◆◆◆◆◆
「ところで、お前はどうしてそんなカッコウしてんだ?」
「あ、コレか? 動きにくくて仕方ねーんだけどさ、父上が言ったんだよ。お前は妾腹とは言え、曲がりなりにも王女だ。それ相応の服装と言動をしろってさ。魔王討伐までずーーーーっと放ったらかしだったくせにさ」
俺の質問に、重戦士はそう答えた。そう、重戦士は王女である。とは言え、国王がメイドに手を出して作った子供という、社交界で忘れ去られそうになるくらい下の立場だった。ただ、それでも王女であり、その上に魔王討伐という箔までついた。
そんな彼女は綺麗なドレスを着ていた。もう、王女として大人気だろう。その彼女は俺をチラチラと見ながら言った。
「お前が望むなら、お前の前でなら、こんな服着ても構わないんだがな」
「「!?」」
重戦士の話を耳にし、魔法使いと僧侶は今まで見たことのないような顔をした。彼女達は二人でこそこそと話をし出した。
「アンタ、聞いた?」
「ええ、あの子もまた伏兵だったとは思いませんでしたわ」
「とは言え、こんな服じゃ旅もしづらいな! 戦えないしな! いつもの服装になっか!」
重戦士はそう言って、太陽のようにニッカリと笑った。その笑顔も前に見た時のままだった。
俺はそんな彼女に訊く。
「いいのか?」
「ああ。今更王女の務めなんか果たさなければいけない理由もないしな! 第一ボクはみんなと一緒に旅をしたい。一緒に行こう!」
「おう、行こう!」
俺は何となしに差し出された重戦士の手を取って掴み、そして魔法使いと僧侶の方に目を向けた。彼女達は何も言わなくても俺達の方に近付いてきて、俺達の手の上に手を重ねた。
ああ、これは出陣の時の合図だ。それも前と変わらない。
ただ、昔のような悲壮な決意もなければ、命の危険もない。心底お気楽で楽しいものだ。俺の口元は自然と緩む。そのまま宣言する。
「じゃあ、元勇者パーティ。旅行こうか!」
「「「おおっ!」」」
俺達全員右手を掲げ、旅立ちの決意をする。今度は楽しい気持ち100%で。そう思っていたのだが。
魔法使いと僧侶が二人でぼそぼそと話していたのが聞こえた。
「アタシ達の戦いはこれからだしな」
「そうですわね」
え? モンスターの残党くらいはいるだろうけど、強敵はいない筈なんだけどなぁ?
敢えて名前つけずにやってみたけど
ちょっと無理があったかも




