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第1話 門脇柳は楽しみたい!

 小鳥のさえずりで目が覚める。よく晴れたいい朝だ。欠伸をしながら、今日は待ちに待った高校の入学式か、と期待を膨らませる。

 なぜなら中学時代に図書室で見かけて以来ずっと気になっている水無瀬飛彩さんと同じ高校に入学したからだ。

 「楽しみだなぁ〜!」

 そう僕が言った刹那、ドアが勢いよく開いて僕は情けない声を出す。

 「いつまで寝てるの!もう家出なきゃでしょ!凪沙ちゃん待ってるわよ!」

お母さんはものすごい剣幕で僕に言った。

 「え?あっ。本当だ!?」

 僕は急いで着替えて身だしなみを整えて玄関に向かい、慌てて靴を履いてドアを開ける。

 外では隣の家に住む幼馴染、甘縄凪沙が腕を組んで明らかに怒った表情で待っていた。

 「バカ柳!入学式の日に何やってるのよ!初日から遅刻なんてどんだけダメダメなのよ!」

 そう彼女は言う。幼稚園から小学校中学校と一緒で今日から都立清花高校に一緒に通う、僕の数少ない友達でもある。

 近くを流れる小さい川沿いの桜の花びらが散るのを横目に僕らは慌てて学校へと急ぐ。

 都立清花高校は都内有数の進学校で最近校舎が建て替えられて新しくなったばかりの学校だ。登校時間には間に合ったようで、まだ他にも多くの生徒が校門をくぐっている。

 「ここが清花高校!前にも何回か来てるけど本当にここに通うんだぁ〜!」

 僕が感心していると凪沙は「早く行くわよ!」と急かす。

 入学式と書かれた看板の立てかけてある校門を2人でくぐり校舎の前に向かうと体育館に案内されて大量に用意されたパイプ椅子に座る。

 司会の先生が体育館のステージの上に立ってマイクを握った。

 「これから都立清花高校入学式を始めます。」

 それからすぐに校長先生のお話や生徒会長の挨拶があった。生徒会長はどこかでみたことがあるような顔をしていたが誰かはうまく思い出せなかった。

 続いてステージの上に登ったのは入学試験の成績が一位で新入生代表として紹介された、松殿玲香さんだ。

 「本日は私たち新入生のために、このような盛大な入学式を挙行いただき、心より感謝申し上げます。...」

と丁寧な挨拶を聞きながら

 「すごいなぁ〜、あの試験を一位で」

そう心の中で呟くと隣に座っている凪沙が小声で

「あんた声出てるわよ!」

と少し怒った表情をして叱る。

「え、今の声出てた!?」

と驚きつつそんなに怒ることかと一瞬疑問が浮かんだが

 「以上で入学式を終わります。新入生の皆さんは退場してください。」

と司会の先生からアナウンスが入り慌てて立ち上がる。

 体育館を出て校舎に向かうと既に校舎の入り口では新しいクラスを確認する生徒でいっぱいだった。

 人に押し潰されながら前に進み自分の名前を探した。1-Bという文字が書かれた張り紙が目に入る。

 そこには僕の名前・門脇柳と甘縄凪沙、そしてもう1人の数少ない友達の山鹿昴の名前があった。

 「やった〜!凪沙と一緒だ。昴とも!」そう喜んでいると凪沙は少し照れながら「うるさいわね!早く行くわよ。」

と相変わらずの調子で、手を引いて教室に向かった。

 教室の前では既に多くの女子に囲まれている山鹿昴の姿が見えた。「おーい昴!おんなじクラスだね、よろしく!」と昴に声をかける。「おう、柳」と短く返事をする昴はスポーツ万能、高身長でイケメンそれでいて優しくて勉強もできると全く隙のないもう1人の幼馴染だ。昔からいろんなところでモテまくっていて中学時代にはファンクラブもあったらしい。

 勉強そこそこ、スポーツダメダメの僕とは正反対だと思いつつ教室に入り黒板に張り出された席順を見ると席は廊下側から二列目、前から2番目の席で右隣の席は凪沙だった。そして今更気づく。


「水無瀬さんとクラスがーーー同じ!?」


「水無瀬?ああ、中学にもいたわね、水無瀬飛彩。どうかしたの?まぁ私よりは...」      

 そうやって凪沙が何か話しかけてくるが全然頭に入ってこない。

 まさか憧れの水無瀬さんとクラスが同じだとは思わなかったのだ。

 実感がなく立ちすくんでいると「おーい教室に入れ〜。ホームルームやるぞ。」と若い女性の先生が入ってきて現実に引き戻される。

 みんなが席に座ると先生が話し始める。「私は帯刀小雪(おびなたこゆき)。呼び方はなんでもいいけど先生はつけるように。」

 そういって出席をとり始める。

「1番、秋月祢音。」「はい。」「2番、甘縄凪沙。」「はい。」

 その間、水無瀬さんとクラスも一緒なんて一体高校生活どうなっちゃうんだ!?と、その事で僕の頭の中はいっぱいだった。

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