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孤独の棋士  作者: ばんえつP
王棋編-孤独VSメンヘラ男-
15/81

王棋戦 開幕

タイトル戦というのは準備が必要です。

王棋戦の前に河津は和服を買いに行く。タイトル戦ではスーツではなく和服を着用して臨むのが基本である。

銀座にある呉服屋に立ち寄る。和服というのは高いもので、100万円は普通に掛かる。タイトルホルダーでなければ大体はレンタルが多いそうだ。そしてスーツのようにオーダーメイドで作る。その為に採寸を行なったりする。採寸は店員との会話が必須であり、河津にとってはハードルが高い。


「タイトル戦で和服がいる。金ならある。作ってくれ」

相変わらず口調の荒い河津は店員に依頼する。

「…わかりました」

店員は少し困った顔で依頼を引き受ける。


数時間後、和服が仕立て上げられた。黒系のシンプルな色合いである。大体のプロ棋士は無難な黒系や緑系が多めである。レインボーの和服なんて新庄ぐらいしか着ないだろう。


タイトル戦は関東、中部地方が多く、東北地方は極端に少ない。稀に海外対局もあるが、数年に一度あるかないかレベルである。昔はいつもの対局場で行われることも多かったが、小野寺ブームもあってか最近はホテルなどで行われることも増えている。第一局は愛知県名古屋市で行われる。愛知県はタイトル戦がよく行われる地である。


タイトル戦になると食事は主催持ちとなる。タイトル戦で出てくる食事はホテルとかの場合、高いものもある為、ここぞとばかりに高い料理を頼んでいく。いつもの所で行われていた頃は、いつも通りの食事の人もいたが、ここ最近は見られない。

河津もそんなにお金があるわけではない。ましてや和服を買ったので本当にお金がなかった。食費を切り詰めるような生活を送っていたので、タイトル戦では沢山食べようと考えていた。


人が嫌がることをするなという話は時々聞くが、この世界では人が嫌がることを進んで行う者が強くなれる。河津なんかは人が嫌がっているとわかればわざとそれをやるタイプなので、強くなる理由となるそうだ。


銀座からの帰り道一組のカップルと遭遇する。そしてカップルの女の方と肩がぶつかる。河津は怒鳴ろうか悩んだが時間の無駄と判断し、無視して先を進む。しかしカップルの方はそういう考えではないので河津を呼び止める。その問いかけも無視したが、女の方が自分の体を掴んできた。この後ずっと付き纏われても困るのでここで倒すしかないと判断し、河津はその女の手を強い力で退かし、プロ棋士の妨害をするなと睨みつけた。カップル側の怒りは収まらず女の方が殴りにくる。河津は1発わざと受け入れ先に向こうが手を出したという事実を作り、女に何発も殴りを入れる。女が痛みに耐えられず降参した所で今度は男の方である。同様に1発だけ受け入れすぐに攻撃。2分もしないうちに地面にはカップルが倒れ込んでいた。このように文面にすると厨二病と言われそうであるが、彼は本当に強い。将棋の時間を潰されないように、将棋の体力をつける為に筋トレもしていたのだった。その為初期の頃は睡眠を削ってもなんとかなっていたということである。

河津に幸いしたのは、ファンがいないので顔を知られていなかったことである。もしも小野寺が同じことをすればすぐに拡散されて将棋界は大変なことになっていただろう。孤独は意外と役に立つ。


北村との王棋戦が行われる。前日に検分という対局場がしっかりしているか確認する用事があり、河津、北村は前日のうちに名古屋へ入る。新幹線では会長の谷本、立会人の味谷、記録係の三段などと一緒に同じ便で向かうのが常識だが、河津はお金を節約したかったので、みんなが乗るのぞみではなく、豊橋停車のひかりにした。ハイスピード料金が取られず、停車駅ものぞみと比べて豊橋のみ。追い抜きも大体ないので節約できるのだった。最も自由席ならその心配もないのだが、座る為に並ぶ必要があるので、指定席にした。


河津は新幹線の中でもパソコンで研究をする。そして窓の景色も見ずに詰将棋を解く。


名古屋に着くと対局場のスタッフが待っていた。ひかり号はみんなが乗るのぞみ号より少しだけ早く着くので、河津は詰将棋を解きながらスタッフの前で待っていた。ここから会場まではバスで行くようだ。

一言も交わさず他のメンバーが来るのを待った。5分後には全員が揃ったので、早速バスに乗り込む。バスの中でも詰将棋である。北村は谷本と談笑し、味谷は窓の外を眺めていた。


対局場は名古屋城。金のシャチホコは有名だ。お城での対局もそれなりにある。なお近くのホテルの料理が食べられ、宿泊もそのホテルとなる。


検分が行われる。北村の方が検分は詳しいので、立会人の味谷と共に駒や照明、空調の確認を行う。最適な状況でタイトル戦を行うのだ。河津は少し空調を強めろと立会人に伝えた。言い方が良くないのは人と接してこなかった結果である。

それ以外は基本的にどうでも良いという考えであった。

今日はこれで終了。ホテルへ戻る。ホテルに着くと早速パソコンで研究。北村の弱点を突く研究だ。夜ご飯はルームサービス。最近は電話ではなくネットでも注文できる所もあるらしい。北村達は店で食べ談笑したので、やっぱり孤独である。


翌日、朝日が顔を出し鳥の囀りが聞こえる…という家の環境と異なり、カーテンが閉められて鳥の声も聞こえないホテルでの目覚め。アラームの音だけが鳴る。

睡眠時間だけはしっかり摂る。河津が変わったポイントである。

朝食はバイキング。会場へ詰将棋本を持ちながら向かう。バイキングは自分で皿に装う。河津は詰将棋局面を暗記してバイキングで取りながら解いていく。一回で済むように多めに装っていく。


タイトル戦は午前9時から始まる。その前には名古屋城へ向かう必要がある。部屋に戻ると和服に着替えて、タイトル戦へ臨む。


8時30分には名古屋城へ着く。河津が入室し、北村が入室。その後振り駒が行われる。


「とが4枚で、河津五段の先手となりました。」


午前9時、河津五段の先手番でタイトル戦は幕を開けた。

さていよいよ始まりました。王棋戦!タイトルホルダーのメンヘラ北村と挑戦者の孤独の棋士河津。一体どんな将棋となるのか!?

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