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孤独の棋士  作者: ばんえつP
孤独の努力編-天才との格差-
14/81

龍棋戦 決着

現実世界でもタイトル戦ですね。

龍棋戦第六局、予想にしなかった対局が行われた。谷本も会長としてやってきた。花子の言動を見ている小野寺と中立としていなければならなかった木村。どちらも谷本の件でモヤモヤした気持ちがあった。

「今日は谷本会長の件は忘れてタイトル戦臨みましょう。」

木村は小野寺に言った。お互い今日は敵同士。谷本のことを忘れて対局するしかない。

「はい、今日は全力でタイトルを奪います。」


検討室に河津がやってきた。タイトル挑戦を決めたのでここらでタイトル戦の雰囲気を感じ取るのが狙いだ。面白いのは、普通プロ棋士相手には挨拶する現地の人も河津には無視し続けたことである。嫌われすぎである。


検討室には、村山と味谷もいた。どうやらいつメンのようなものである。味谷は河津に敗れて以降性格が多少穏やかになったようで、前のような荒れた雰囲気は鳴りを潜めていた。

河津は静かに壁に寄り添い座り込む。

今日の先手は小野寺、飛車先を歩をついた。戦型は相がかりである。

「相がかりか。俺はやらんな。」

河津はボソッと呟いた。


午前11時、谷本が検討室に入る。今日は花子夫人がいない。

「私がここにいるのは変かな」

谷本が村山に問いかける

「対局室で妨害されるよりはマシだ」

村山が返す。

「少し、2人きりにならないか?」

谷本の言葉は予想外だった。


「うむ、この部屋に盗聴器の類はないな。」

谷本が真剣な顔をしている。

「どしたんだ?刑事ごっこでもやりたいのか?」

「いや、違う。この話を内密にしてもらいたくてな。河津は正直わからんし、味谷は信用ならんからな。」

「で、この俺か。それで話とは?」

「あぁ、花子についてだ。お前たちがこの前棋士総会で議題に挙げたあの件だ。俺は色々花子に弱みを握られていてな。」

「ほう、そんな話を簡単には信用しないが」

「まぁ話を最後まで聞け。」

谷本の話は、花子の件であった。自分が花子に操られていると語る。

「無言電話も記録係の買収も花子の指示だ。あの場面で俺が記録係を睨んだのも全て花子がいる場所で、味方しなければならなかったからだ。」

「お前の奥さんならば、共謀の可能性もある。」

「まぁそう思われるわけだが。」

「つまり操られました、だから俺悪くないなんて信用できねぇよ。会長」

「仕方ない…俺はそれぐらいのことをしている…」

結局信用されることはなかった。


昼過ぎになってあるニュースが入ってくる。北村が結婚し、子供ができたというものである。将棋とは関係ないように思えるが、結婚という幸せの塊を経験している時、アドレナリン同様人は実力以上の力が出るのだ。さて、北村の次の相手は河津、王棋戦のタイトル戦である。そうなればいつも以上に不利になるのだ。

「メンヘラの癖してしれっと女作ってんのかアイツは」

村山は好きな人がいる者は弱いと言う考えの持ち主、北村は弱くなると考察するが

「いやぁ、これは河津が負けるね、結婚は素晴らしいんだぞ。俺も小春と結婚してから薔薇色だしな」

と味谷は異論を述べる。

その会話に嫌気が差した河津は

「てめぇら将棋興味ねぇなら出てけ」

と苛立ちを隠さず伝える。少し前の村山のような台詞である。


メンヘラは何故か恋人がいたりする。謎である。彼女を作るのは非常に難しい行為であるが、何故メンヘラにはそんな彼女という存在が沢山できるのか。


終盤になった。ここまでは互角。勝った方がタイトルホルダーという一戦は体をきつく縛っていく。決断を遅く、そして鈍らせていく。


この頃検討室には新庄がやってくる。相変わらず薔薇を加え貴族のような立ち振る舞いをしていたが、村山がいるのが見えるとすぐその薔薇を手に持ち、盤面を眺めて呟いた。

「先手が苦しい。後手ペースだな。」

例の件があったので谷本も言わせようとはしない。

村山が一言、「先手の玉は逃げ道が少ないからだろ?」

「それもあるけど、後手が受け師なのも大きいよ。その少ない逃げ道、難しいものばかりで受けやすいものばかり。受け師なら確実に仕留めてくる。」

評価は互角でもここまで苦しそうに見えるというのはAIでは読めない部分である。

検討室が木村持ちになった所で河津が一言

「木村の負けだ。」

と呟いた。

村山は盤面を再度見直し、新庄はえっ?という目で河津を見る。味谷、谷本は無言だった。


「…96手進んで2七銀打で木村は投了する。小野寺が終盤できる奴ならそれを見逃さない。」

「ここから97手!?おいおい勘弁してくれよ、そんなことあるわけ」

「なら見てろ、お前らにとっちゃ時間の無駄だが。俺は帰る」


96手というのはかなり進む。既に85手目で終盤なのに、そこからまだ97手も指すのは考えにくい。かなりの長手数だからだ。


96手進み181手目、小野寺は2七銀打。この時検討室は呆然としていた。評価値も気がつけば小野寺勝勢となっていた。


「参りました。」

木村の虚しい声が対局室にこだました。この瞬間小野寺渚は龍棋のタイトルホルダーとなった。

カメラが押し寄せる。小野寺がついにタイトルホルダーとあってはトップニュースである。

カメラが一つの場所を見つめる。お互い憔悴しきっていた。笑顔なんてもの、そこにはない。


記者会見は小野寺ブームを加熱させたいので、かなりの時間を取ることにした。小野寺も疲れているだろうに可哀想である。


「タイトルホルダーが生まれた!」

「神童ついにタイトルホルダーへ!」

「小野寺時代到来!」


将棋界の盛り上がりは凄まじいものである。


これから北村河津のタイトル戦なのだが、果たして盛り上がるのだろうか…


「俺は全力で勝つだけだ」

ついに小野寺タイトルホルダーです。

やっと河津の話が書けます。


あ、最近別作品作ってます。見てね。

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