地球から
とある宇宙船その船内。船長と乗組員はモニターを見つめながら感嘆の息を吐いた。
「地球を飛び立ち早二年……ようやくだな」
「ええ船長。華々しく見送られただけに何も成果を得られなかったらと思うと、悪夢で寝汗がもう酷かったですよ」
「ああ、だが見つけた。知的生命体が存在する惑星」
「それも、わぁ、原始的ですね」
「そのようだ。実に都合が、と、もう少し近くに、よしいいぞ。あの辺りだ。あの辺りに大勢集まっているぞ」
「ええ。でも何をしているんでしょうか? 事前に我々に気づいて出迎えを?」
「いや、レーダーなどありはしないだろう。もう少し地上を拡大して見てみろ。
ほら、あの木でできた建造物。恐らく何かの祭りの最中だ。
ふふっ、好都合だな。神の如く降り立ってやろうじゃないか。
遠慮はいらない。相手が高度な文明ならこちらが謙るところだが
そうでないなら派手にこちらの技術を見せつけてやればいい」
「いいですねそれ。ライトや火を見せ携帯食料なんかも食わせてやるともう驚くでしょうね」
「崇め奉られ、物資の補給にそれに上手いこと誘って何人か星に連れて帰ろう。
いずれは植民地。その前に奴らを詳しく調べなければならないからな。さあ、行くぞ」
「はい!」
コンピューターは船長の指示通り、宇宙船をガヤガヤ集まっている原住民たちのその中心に着陸させた。
だが……。
「やーやーどうも! みなさーん!」
「おいおい、まったく船長を差し置いて……。それに言葉が通じるわけもないだろう」
「ジェスチャーは身に着けてるので任せてくださいよ。それにほら、勝手に驚いて興味津々……い、痛い!」
「うわ、なんだこいつら!」
「痛い! 何か怒ってるような、うわ」
「きょ、恐怖で攻撃的に、いや、元々そういう気質の種族なのかもしれん!
あるいは祭りか儀式の邪魔をしたことに怒って、に、逃げるぞ!」
「ひい、待ってくださいよ船長!」
慌てて飛び立った宇宙船。それを見上げ、彼らは大きく息を吐いた。
「あーあ、まったく全部台無しだ! なんなんだあいつら!」
「あれが降りて来た衝撃でセットがいくつか壊れてます!」
「ああクソッ! そこの君、地下に戻ってこのリストにある物を急いで持ってきてくれ。
それからエキストラには二十分の休憩を。ふー……それにしても奴らはどこの誰だったのだ」
「はぁ。あの乗り物からして貧乏な田舎者ですよ。
それも変なコスプレして、あんな風にふざけるのが面白いと思っている馬鹿な若者に決まってます。
今日ここで映画撮影をしているのを知ってて邪魔しに来たんですよきっと」