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ヤタガラス

 新惑星開拓者達は朝早くから生きるために労働している。

 ある者は生産業、ある者は開拓、ある者は建築、ある者は…。


 一二三と廬山が所属している組織は特殊武装組織コードネーム「259の大烏」とされている。

 259とはベヘモス軍極阿制圧軍が用いた数字で読みはそのまま「地獄」、廬山が右翼と右足柄の印、一二三が左翼と左足柄の印、俺が胴体と中足柄の印を持ち、組織のトップが頭の印を持つ。それらを合わせると三本足の大鴉である八咫烏になる。八咫は大きいという意味もある、コードネームの通りに訳せば「地獄の八咫烏」と解する事になる。極東かぶれの一二三と廬山が「地獄」と「導きの烏」をネタに組織名をつけたのだろうか、俺が言えた事ではないが…なんとも微妙なネーミングセンスだ。


 俺からすれば「地獄に堕ちた大烏」の意味に聞こえるが、俺の状況に似合い過ぎていて笑えん。


 俺は廬山と一二三のノリに呆れ、深く考えることをやめてこの組織を「ヤタガラス」と認識する事にした。漢字ではなくカタカナにしたのは廬山と一二三らが関与しているからである。


 ヤタガラスの活動は主に巡察と清掃と上納金の徴収である。新惑星開拓地である為、治安が悪いところも多く巡察…という名目の不当搾取現場の横取りとシマの管理をこなしてはいるが、どうも他に警察や軍と癒着している同業者がいる様子で効率が悪い。

 

 ヤタガラスの構成員は十文字派ベヘモス軍残党をベースに善路流神威家当主を最高幹部に、極阿九条家傍流を裏方に配し、表面はベヘモス軍残党がほとんどである。元ベヘモス軍の兵達も今ではヤタガラスの幹部や中間管理の頭になっており、それぞれが部下達に指示を送って運用しているが、若い部下達は気力が漲っているせいか少々やり過ぎることもあり、近所迷惑甚だしいとか…。

 そのせいか、ヤタガラスの評判は悪く、表向きだけは丁寧な同業者につけ上がられる有様だが、流石に激戦を潜り抜けてきた元ベヘモス軍兵士達の雰囲気(ふんいき)は違うのか、同業者達も矢場(ヤバ)さを感じている様子で程々に舐めている。


 昔の廬山と一二三なら、こういった手合いは国だろうが軍だろうが関係なくここにいる幹部達と共にZWまたは生身で事務所に直接殴り込みに行っては大暴れしていたものだ、ベヘモス戦争時も戦場で散々手を焼かされた上に極阿シティでも暴れ回っては俺達が何度も鎮圧に駆り出され、ZW戦になって刃と弾丸を交えたものだが…。

 彼らも落ち着いたのか、力技を選択しない様に努めてはいる様子。それを踏まえて幹部達は逸り気を抑えて穏便に解決しようとしているが、若い部下達は納得しきれずに暴れている…と。


 光牙は自分に対して敬礼しては意味深な笑みを残していく幹部達と疑惑と嫉妬と羨望の入り混じった視線と共に一礼しては挑戦したそうに睨んでいく若い部下達を眺めながら思考し、次にシマを探索しようとしていると、後ろから見知った人物が多くの取り巻きと共に接近してきているのに気づく。


 「浅野…光牙さんですね?」

 「人違いだ」


 かけられた声に対し、光牙は反射的に答えて振り向かずに立ち去ろうとするが、歴戦の屈強な戦士達が光牙の前に立ち塞がり、光牙は戦士達の顔ぶれを見てかつて自分と戦った事のある猛者ばかりである事に気づいて気合いを入れ直すが、戦士達からは戦意が感じられなかったので警戒を解き、戦士達の妙に穏やかな表情から「とりあえず振り向いては?」と言っている様に感じ取ったので溜息の後に振り返る。

 振り返った先には左右対の螺旋竜紋と焔と烏の頭の印が描かれたロゴと「この地獄より尊きに導く」と書き連ねられた謳い文句、最高幹部・烏の頭の印、そして神威花梨(かむい・かりん)と書かれたネームプレートが目に映り、次に銀髪長身の凛とした女性の怒気を含んだ視線が光牙の眼に突き刺さった。


 

 



 

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