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落ち着いた雰囲気のカフェ

作者: 小山田飴香

 タウン誌の記者である私のもとへ、そのカフェの噂だけは集まっていた。とにかく落ち着いた雰囲気の喫茶店なのだそうだ。だが、その喫茶店の所在地はおろか、規模も、営業時間も、繁盛しているのかどうかすら、具体的な情報はなにひとつ得られない。

「あまりに落ち着いた雰囲気なので、アツアツのカップルは一度は訪れるべきだそうですよ。恋愛に浮かれた頭がすっと落ち着いて、お互いの良いところだけでなく悪いところもちゃんと認識してしまうので、後悔しない結婚ができるそうです。ま、後悔しそうな場合は自然と結婚を避けちゃうというだけですけど」

「あそこの喫茶店で取引相手との交渉を成立させられれば、それはセールスの達人の称号を得られるんですよ。なんたって、『これが最後のチャンスですよ』とか、『あなただけが特別に選ばれました』なんて調子のいい言葉には、心の落ち着いた人間は騙されませんからね」

 そんな、埒もない話ばかりを聞かされるのだ。

 だが、私もベテランの記者である。そのカフェが実在するならば、どんな細い手掛かりであろうと絶対に辿り着いてみせる。なんなら、多少ならば社会的に問題がある手段をとってでも……


「……なんてことまで考えていたんですよ、いやお恥ずかしい」

「まあ、失礼を承知で言うと、正直、あの時のあなたは正気を失っていましたからね。私も身の危険を感じて、ここにお連れするという最終手段を取らざるを得なかったわけですが」

 まったくだ。記事にして余計な客を増やすなど、正気の沙汰ではない。この落ち着いた雰囲気のカフェで、ゆっくりとコーヒーを楽しむほど大事なことはないと、冷静になってみれば誰でもわかる。



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