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第79話



***



 城を出発した騎士団は全員が山に入った訳ではなかった。五分の一ぐらいの数が途中で別れ、街中での捜索にあたっていた。

 街の中でばらけていく部隊を目にしたマリッカは、これ以上尾けるのを諦めて他の二人を振り返った。


「どうやら、これはレイチェルと公爵様を探しているようね」

「どうして、お姉様が蛇にさらわれるのぉ?」


 リネットは涙目でパーシバルに訴えた。

 彼ら三人は、王城の前で「巨大な蛇が公爵とその婚約者らしき女を連れ去った」という話を耳にして、ここまで騎士団を追いかけてきたのだ。もしかしたら、騎士団の行き先にレイチェルがいるのではないかと期待したのだが、どうやら彼らも居場所を知らずに探すようだ。山に多くの人員を割いたことから、山中に潜伏している可能性が高いと思われているらしい。


「私も探すわ! お姉様—っ!」

「あっ、ちょっと!」


 姉が心配なリネットが飛び出して行ってしまい、マリッカとパーシバルは仕方がなく追いかけた。


「ちょっと待ちなさい、リネット。レイチェルと公爵様が街中を歩いていたら騒ぎになるでしょう。探しても見つからないと思うわ」


 マリッカがリネットを捕まえて指摘する。ヴェンディグの外見で街を歩けば阿鼻叫喚の騒ぎになるだろう。


「隠れるなら、人目につかないところ。そして、日中は移動を避けていると思うわ」

「ああ。私もそう思う。騎士団もそう考えて山狩りを行うのかもしれない」


 パーシバルもマリッカの意見に同意した。


「人目に付かないところって?」


 二人に宥められたリネットは頬を膨らませて尋ねた。

 マリッカとパーシバルは西に広がる山を眺めた。


「レイチェルなら、逃げたままで終わらせるわけないわ」


 マリッカがぽつりとそう呟くと、パーシバルがふっと微笑んだ。彼もまったく同意見だった。

 どんな事情があるのかは知らない。けれど、自分の知っている彼女であれば、必ず戻ってきて立ち向かうはずだ。相手がどんな敵であっても。

 今は山中に身を潜めていても、レイチェルは戻ってくる。彼女が騎士団ごときに捕まるはずがない。


「日が暮れてから移動するはずよ。目撃した人の言うことが本当なら大きな蛇と共にいるらしいし、暗くなってから飛んで移動するんじゃないかしら」


 マリッカの言葉に、三人は同時に空を見上げた。


「……山と王城の間にある、人気が無くて巨大な蛇が降りられる場所だ」


 いくつかの候補が頭を過ぎる。三人だけで見張ることは不可能だ。


「よし」


 パーシバルが一つ頷いた。


「一旦、私の家に行こう」




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